1997 AUGUST
NO.262
KYOTO MEDIA STATION

京都・人・産業
巻頭インタビュー Vol.17/第1回
京都府グリーンベンチャー研究交流会 代表幹事
(財)京都産業情報センター 理事
(株)サムコ インターナショナル研究所 代表取締役
辻 理 氏
シリーズ4回で掲載する予定です

設問1−1992年の地球サミットで採択された気候変動枠組み(地球温暖化防止)条約から5年。今年12月には同条約第3回締約国会議が京都で開かれますが、企業にとっても地球環境を視野に入れた「環境経営」が欠かせなくなりましたね。

個人的な経験をいえば、約30年前に空気中の微量成分の計測をしていた折、二酸化炭素(CO2)の熱伝導係数が酸素や窒素に比べてさらに低いことから、このCO2が地球上を覆うようになれば大変なことになるかもしれないと感じてはいた。その後、80年代になってCO2が気候変動に大きな影響をもたらすと結論づけられたが、正直こんなに早く地球規模で問題視されるとは思ってもみなかった。
地球規模の温暖化は、環境問題の中でも最も影響が広範囲かつ深刻な問題だ。それを抑止するにはCO2の排出量を削減しなければならず、CO2の排出量を減らすには化石燃料の消費を減らさなければならない。しかし、単にエネルギー消費を抑えるのではなく、代替エネルギーを創出していかなければ本質的な問題解決にはならない。
また、その根本にはエネルギー問題だけにとどまらず、発展途上国を中心とした人口爆発による食糧問題など、いわゆる“南北問題”も深くリンクしている。その意味で文字どおり「宇宙船地球号」の発想が必要になってくる。政府や国際機関の果たすべき役割はもちろん重要だが、取りざたされている炭素税などの環境税は一義的に結論を導くのは容易ではなく、企業あるいは個人生活レベルでも環境問題に対するコンセンサスづくりが大切だろう。
一方、日本経済はキャッチアップの段階をすでに終え、単に大量生産して海外に輸出するという戦略はもはや世界の受け入れるところではなくなった。これから重要なのは、世界のトップランナーとしてパイオニア型の体制に脱皮することだ。確かに環境対策にはコストがかかる。環境保全イコール経済成長の鈍化と思い込まれがちだが、企業の長期的成長のための不可欠な投資という積極的な視点に立つべきだし、マーケティングの観点からも地球温暖化問題に対応する技術、商品、サービスに大きなビジネスチャンスが生まれてくる。
新しい経営環境やニーズに応えうる企業は発展する。これはいつの時代にあってもいえることだ。

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