1997 MARCH
NO.257
KYOTO MEDIA STATION

インタビュー
マルチメディア時代にマルチ対応への展開にらむ

昭和企業組合 昭和堂印刷所 代表
田村 徹氏に聞く


“ワンソース・マルチユース”
―印刷分野ではデジタル化が急速に進み、マルチメディアにどう対応していくかがビジネスの成否を分けるともいわれていますね。

田村 DTP(デスクトップ パブリッシング)は8年前から、LANは導入して5年になり、早い段階からデジタル化に取り組んできました。現在はホームページ作成の受注をはじめ、新しい事業としてインターネットを活用したオンデマンド印刷も手がけています。

―目下展開しているビジネスのコンセプトは何ですか。

田村 画像処理」と「データ処理」です。画像処理では、DTPの根幹をなすテクノロジーといわれるポストスクリプトのシステムの充実によって、紙だけでなく、素焼きタイルやキャンバスなど多様な素材への、1つのデータ(ソース)からの印刷を模索しております。 データ処理の分野では、基本となるSGML(国際規格ISO8879に規定されている電子文書を標準化するための文書形成マークアップ言語)への対応に取り組み始めています。SGMLはまた、CALS(生産・調達・運用支援のための総合情報システム)の標準ツールとして注目を集めているものです。そして、画像処理とデータ処理(SGML)が融合したものをホームページを作成するためのプログラミング言語・HTMLと位置づけてまず第一に取りかかり、ビジネス化に成功しています。

―こうしたネットワークシステムをしっかりと確立してこそ応用も効く、というわけですね。

田村 企画デザインから印刷、製本まで一貫体制をとっていますし、クライアントも一般企業はもちろん、官公庁、大学や学会など幅広いのが当社の特徴です。例えば、ある業種ではごくあたり前のシステムが、別の業種では全く新しいといったケースがよくあります。そうすると、スタンダードなものをきちんと押さえておけば、クライアントのニーズに応じてカスタマイズしていくことができるわけです。つまり、“ワンソース・マルチユース”――デジタルデータ化した1つのソースをマルチユースしていくことが、マルチメディア対応ということではないでしょうか。   官公庁がSGMLによる電子文書で情報をやりとりすることになると、その言語体系で組版出力できなければこれから先、印刷物を受注できるという保証はありません。逆にいえば、SGMLデータの生かし方次第で新しい市場が生まれる要素にもなります。このように我々中小印刷会社は、1つの標準化されたインフラを活用し、小回り性を生かしてビジネス展開をしていかなければと考えています。

“ワンクライアント・マルチアイテム”
―新事業へ積極的に取り組まれていますが、軸足は「印刷」になりますか。

田村 事業のキーワードはやはり印刷ですし、今後も社名を変更することは考えていません。商品の幅や販売チャンネルが広がると、とかく企業コンセプトが不明確になってしまうことがあります。しかし、名刺に印刷所と刷り込んであれば業務内容は大体わかります。ただ、お客様にはハードからソフトまで、いろんな形で利用をしていただこうと。

―商品アイテムを増やすことによって付加価値を高めるということですね。

田村 従来、印刷物は広報や販促活動の手段でしかありませんでした。しかし先にいったように、システムを構築しておけばそれを販売管理に使うこともできます。市場が成熟してくるとお客様のニーズも多様化してきます。ですから、品揃えの幅を広げることが必要です。“ワンクライアント・マルチアイテム”――1人のお客様にいろんなものを買っていただこうということです。   もう一つは、値ごろ感を大切にしていきたいと考えています。“モノ市場”だけでは価格競争に巻き込まれてしまいがちです。サービスを含めた“コト市場”、例えば大学教授退官記念などイベントのプロデュースや、研究会、シンポジウムなどの事務局を引き受けているのもその一環です。その結果が刊行物の編集・印刷につながってくるわけですから。

――品揃えとか値ごろ感というのはリテイラーの発想と同じですね。

田村 これまでなら商圏を拡大しないと企業は成長できませんでしたが、インターネットのようにグローバルなネットワークが出てきたり、情報化が成熟してくると、商圏を広げるより深掘りすることのほうが重要に思います。それにはリテイラーの発想が欠かせません。

“ワンパーソン・マルチユース”
―社内の体制についてはどのようにお考えですか。

田村 最近、製造業では人材の多能化がいわれていますが、単一分野のみならず、複数分野をこなす人材の育成をめざしています。いってみれば“ワンパーソン・マルチユース”――これは私の造語ですけど……。そうすれば配転しなくても、時々に応じて需要の多い分野に従業員をシフトして対応していくことが可能になりますし、従業員にとってはキャリアアップにもつながると思います。

―半面、それなりに設備投資も必要になってきますね。

田村 設備の導入にあたっては、複数の各機材・資材メーカーのジョイントでやっていただいています。これまでのように個別対応では重複して余計に購入したり、特定の用途に限定されてしまうことがあるので、ジョイントによるアプローチをお願いしているわけです。

―今年4月で設立40周年。インターネット上に「フラッグショップ」を開設されるとか。

田村 企画商品のカタログをホームページに載せ、併せて電子決済もと考えています。たんなるアンテナショップではなく、旗振り役を果たすという意味合いからフラッグショップとしました。今後は営業の外販と、サイバー上の市場という2つのチャンネルを使い分けて事業を進めていくつもりです。

DATA
昭和企業組合 昭和堂印刷所
住 所京都市左京区百万遍交差点上ル東側
TEL 075-721-4541
FAX 075-711-0331
URL http://www.joho-kyoto.or.jp/〜showado/
代表者田村 徹

MONTHLY JOHO KYOTO