1997 MARCH
NO.257
KYOTO MEDIA STATION

京都・人・産業
巻頭インタビュー Vol.12/第4回
近畿大学理工学部
佐佐木 綱 特任教授
次回からは京都府商業アドバイザーの古長 勝人氏にお話しいただく予定です。

設問4−都市機能とイメージを両立させて京都の街づくりを進めていくには、どのような配慮が必要でしょうか。

20世紀、特に敗戦後はずっと男性的な機能を日本全体が追求してきた。採算性や効率、生産性など男性原理と言われるものを強調してきたのだ。だからこそこれだけ高度成長してきたと言える。ところが、こうした男性的なものとは対照的な安らぎや美しさ、ゆとりなどを要求する女性原理の時代に全体が変わりつつある。
日本だけでなく、21世紀は世界的にみて男性原理と女性原理のバランスの時代だと思う。例えば中国はまだまだ男性的な方向にいくが、環境問題も悪化しているので、日本のような極端な男性化はしないだろう。バランスをとってやろうというのが21世紀の考え方だ。
陰と陽のバランスをとる時代が来る。そこで京都は見かけ上は従来のイメージに合った女らしい街をつくる。しかし機能的にはあくまでも男性的な街でなければならない。見かけは女性的だが、芯は男性原理を忘れないことだ。だから高速道路もつくるけれども見えないようにする。高速道路に反対する者も京都の景観に適さないので困ると言っているだけで、地下なら別にかまわない。
従って京都らしさを守りながら、21世紀についていけるだけの近代的な技術を導入しなければならない。しかも着物がたくましい足をかくすように、見かけ上の京都らしさの維持と表面下での男性的で機能的な街づくり、そのいずれもが今後は不可欠である。見かけと内部の使い分けができた時に本当に強い女性ができることになる。そのバランスを壊すと誰も京都に来なくなるだろう。
産業的にみても京都は美的追求を行う産業が多く、品種が多いので情報交換はなおさら大事になる。京都の産業は多様性と小型化が大事で、大阪とは産業構造が違う。ただし大阪もあまりに港などが男性的なので、海遊館などのように女性的な要素も増やしていこうとするのである。大阪と京都では本来の姿とこれから加味すべき要素が全く違うことになる。
自然を含め人工の施設の表情をうまくデザインし、地域独自の個性を演出して全体を統一することである。都市の環境整備には統一した設計原理を持った上で、個々の個性化につないでいくことが重要である。多くの都市が部分的に個性化がなされていても、全体の統一性を欠くのは、統一する地域イメージがないためだ。
(完)

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