1997 FEBRUARY
NO.256
KYOTO MEDIA STATION

インタビュー
時代を読み、
独自のシステムで技術を売る


竹菱電機株式会社社長
早瀬道明氏に聞く


上場へ社員が一丸
―設立70周年の昨年、大証2部・京証に上場された背景からお聞かせください。

早瀬 その前の65周年の折に上場を決意しました。私ども商社は、将来的には財務体質の強化が重要になるのではと思ったからです。だから資本金を増やして自己資本比率を高める必要がある。それにオーナー経営ではないので、社員には“自分たちの会社”という意識が強い。上場にあたっては皆が同じベクトルに向かって業績を伸ばし、目標を達成していかなければなりません。昨年9月に上場しましたが、知名度が高まったり、営業面での効果はこれから出てくると思っていますが、上場に至るこれまでの社員の頑張りが貴重な体験になりました。

―もともと三菱電機の京都地区代理店としてスタートされたそうですが、エレクトロニクスを中心とした技術革新とともに業容も拡大の一途をたどっていますね。

早瀬 汎用電気・制御機器から半導体・電子デバイス、重電・産業機、空調・ビル設備、さらにOA、FA、情報通信まで幅広い事業分野を扱っています。中でも三菱電機の強みである汎用電気機器と、技術革新の中核といえる半導体・電子デバイスで売上高の55%を占め、また発電機や変電設備などの重電機器を電力会社や地方自治体向けに供給しているのは、三菱電機の代理店でも当社だけです。  情報通信については一例をあげると、昨年末に京大病院へ、手術のモニター画面を他の国立大の病院とも衛星を使って双方向通信で結ぶシステム設備を納入しました。そのほか公共事業関連では、地震の震度情報システムや生ゴミ処理など、新規分野も積極的に開拓しています。

―三菱電機以外の商品、また主力地盤の京都・滋賀以外での営業展開はいかがですか。

早瀬 他メーカーの各種センサーやリレー、タイマー、それにOA関連、またNTTドコモの携帯電話もショップを開設しており、それらの売上構成は約20%になります。地域別では京滋が65%を占めていますが、東京、名古屋、大阪、九州にも営業拠点を設けています。既存ユーザーが京滋以外へ進出する場合など積極的にサポートしているからです。海外へはシンガポールに駐在員事務所、昨年10月には香港に現地法人を設立しました。

技術者集団の営業体制
―「電機とエレクトロニクスの技術商社」としても知られていますが、それは商社でもありメーカーでもあるということですか。

早瀬 私どもはユーザーとメーカーの間に立っています。しかし、扱い品目が多様化するにつれユーザーのニーズも多様化していますから、こうしたニーズを的確にとらえ、当社独自でシステムをつくったり、それを使いこなすためのソフト開発もする。一方、メーカーに対してもモデルチェンジなど技術面で積極的に提案をしていく。このように、たんに製品を販売するのではなく、OA・FA分野のシステム開発、半導体分野のデザインやソフト開発から空調設備の設計施工まで行なっています。

―商社でありながら技術力にこだわるというのが京都の企業らしいところですね。

早瀬 例えば、パソコンと制御用のシーケンサをつなぐソフトは隠れたヒット商品になっていますし、次世代の制御アーキテクチャーについても現在、立命館大学と共同研究を進めています。今年の売り上げは昨年の努力の成果であり、いまやっている仕事は来年の売り上げにつながるわけです。

―その技術の原動力は何ですか。

早瀬 男子社員280名の70%が技術系出身者、うち約80名が技術専任者で、当社の営業マンは高度な技術者集団でもあると自負しています。社内のパソコンは420台、社員は総勢340名ですから1人1台を超え、サーバーも20台入れています。 社内の体制についても65周年を機にインテリジェントビルの新社屋を建設した際、LANを導入しました。電子メールはもちろん、営業情報から月次報告、年度計画や中期計画まで入力し、社内はペーパーレス化されています。私もちょっとサボるといろんな情報が山ほどたまるのでなかなか大変です。要は、社員が仕事の仕組みを変えることによって生産性を高め、新しい何かを生み出していくことを期待しています。

夢は1,000億円企業
―竹菱電機をこれからどういう会社にしていかれるのか、5年後、10年後の姿をどのように描いておられますか。

早瀬 今3月期の売上高は約400億円の見通しですが、21世紀の早い時期には1,000億円企業にしたいと考えています。そのためには、成長分野への取り組みをいかに拡大させていくか、商社機能と技術機能をいかに高めていくか、エンジニアリング部門の強化や、社内起業家など人材の育成も課題になってきます。場合によっては別会社にして取り組んでもいい。常に新しさを求め、ユーザーのニーズに応えて柔軟で発展的な動きをしていきたいというのが私の考えです。

―その成長分野とはどのような分野ですか。

早瀬 取り扱い分野のほとんどが今後も右肩上がりの需要を見込んでいますが、特にOAのオープンネットワークシステムやイントラネット、FAシステム、マルチメディアを含めた映像・通信関連の市場の拡がりに注目しています。また、それらを複合した技術への対応こそ、「技術を売る」当社の強みであり、めざす方向と考えています。

―そうした技術力を支える人材の育成といえば、海外研修制度もユニークですね。

早瀬 狙いは“海外に行ってカルチャーショックを受けよう”。部次長クラスは2週間、課長クラスで1週間の休暇と費用を出し、頭のリフレッシュを勧めています。異文化に浸り、外から日本を眺め、いろんな角度から物を見ないといい発想も浮かんできません。出張扱いにしていますが、報告書の提出は一切なし、現地の“証拠写真”だけ義務づけています(笑)。

DATA
竹菱電機株式会社
住 所京都市右京区西京極豆田町29
TEL 075-325-2111
FAX 075-325-2250
代表者早瀬道明

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