1997 FEBRUARY
NO.256
KYOTO MEDIA STATION

京都・人・産業
巻頭インタビュー Vol.11/第3回
近畿大学理工学部
佐佐木 綱 特任教授

設問3−京都における交通機関の発達と産業の関係、また情報の受発信のあり方についてお聞かせください。

地下鉄東西線が開通することによって産業が大きく発展するとは考えられない。なぜなら東西線は通勤を主目的としたものであって、産業振興のための地下鉄ではないからだ。道路の渋滞が少なくなることによって産業の流通コストが下がるという利点はある。だが、京都は流通コストよりも情報の受発信を重視して先に進めるほうがふさわしく、産業への影響も大きいだろう。
そもそも京都の商売は座売りが主で、京都に荷物を運んでくるのはほとんど他府県の車である。そのため京都の人間ほど交通問題に対して冷淡だ。こういうところが京都人の自覚の足りないところだ。自分達のための整備であり産業の流通コストを下げることも考えねばならないのに、マイカー通勤を自粛しなければ東西線が出来ても赤字ばかり増えて、何のためにつくったのかと市民からお叱りを受けることになる。また、京都駅も高層化だけでは直接産業に大きく貢献するとは思えない。情報中心とすべきである。
実際に人やモノを動かす鉄道・道路の整備よりも、むしろ受注を受けたり、情報を流すほうに重点を置いて発達してきたのが京都である。座売りであるから、それを生かしてよそからの情報を座って受けておればよい。
現在の受発信のバランスは受信がほとんど。発信は東京、大阪中心だが、受信しないと成長しないだろう。京都は受信も発信も両方きちんとやらないといけない。発信ばかりしても情報を盗まれるだけだ。
京都の場合は、消費者の需要が多様化している品物をつくっているので発信は大いにメリットがある。逆にどんな需要があるか受信し、それを実際につくる場所に回すことが重要だ。しかもニーズは長続きせずすたれるのが早いため、次は何か常に考えておかねばならない。変わり身の早い情報が必要で、この点からも情報の受発信の質に関して重要な街といえる。
ただし情報発信の仕方に関しては一考を要する。中小企業が相手であるため、情報が漏れると相手にとられ京都の産業は伸びない。おおっぴらでなく隠れた情報発信、機密を守るため相手にしか教えないキーワードを入れるような情報の受発信の方法が必要だと強調したい。黙って聴きながら必要な情報を押さえる。それは女性的なイメージにも適っている。

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