1997 JANUARY
NO.255
KYOTO MEDIA STATION

(財)京都産業情報センター
立石 義雄 理事長
新春インタビュー

今年の干支は「丑」。うし年にふさわしく、粘り強く、着実に前へ前へと進取の企業家精神を発揮したいものです。
年頭にあたって、当センターの立石義雄理事長に抱負を語ってもらいました。






――新年おめでとうございます。産業構造も21世紀に向けてダイナミックに変わりつつありますが、まず今年の経済見通しについてどうみておられますか。

立石 昨年は公共投資部門や規制緩和等による一部業種のリードで、マクロでは景気は底を打った形ですが、実感としては回復感のない年でした。今年も同様で急な景気回復は見込めないと思います。しかし個別には、同業種の中でも産業構造や環境の変化にうまく適応できている企業と、そうでない企業との格差がますます開いていくのではないかとみています。

――不透明感が漂っている中でも確実にやってきているのが情報化の波。いまや産業の米は「情報」といわれています。いってみれば、情報の生かし方ひとつで企業の盛衰が左右されるといっても過言ではありませんが、昨春、理事長に就任されて以来、何かお感じになったことは?

立石 産業構造の変革の時代を迎え、中小企業を取り巻く経営環境は大きく変わろうとしています。今日、産業活動のグローバル化と産業のソフト化・サービス化が進展するに伴い、経営要素としての情報の価値がより一層高まっていることを感じます。京都産業情報センターとしても、最新、最先端の技術と経営情報の提供を通じて、京都の中小企業に対する支援機能の重要性を認識しているところです。

――実際に情報センターの事業に取り組まれて、手ごたえといいますか、成果はいかがですか。

立石 振り返ってみると、平成8年度は世界的にインターネットがブームの域から実用的なビジネスの手段として定着し始めた年でした。京都産業情報センターでは平成7年度から、「G7プロジェクト」として中小企業国際情報ネットワークの構築に先進的な24府県の一つとしていち早く参加し、世界への情報発信に取り組んできました。平成8年度はさらに一歩進め、ダイヤルアップ接続サービスを行うプロバイダーとして、センター会員企業をはじめ京都府域の中小企業のために情報発信の基盤整備をしてまいりました。
おかげで現在では、ダイヤルアップ接続会員189社、情報発信会員297社となっています。また、「京都インターネット利用研究会」を組織し、会員各社に対して情報発信技術に関するセミナーや相互啓発活動を行っています。

――小売商業支援やエネルギー・環境対策にも力を入れておられますね。

立石 小売商業支援センター事業では、店舗活性化のための相談業務が中小の小売商業者に浸透し、店舗改装などの相談が増えています。小売商業者への情報提供についても府内全域でセミナーを開催していますが、回を重ねるたびに参加者が増え、インターネットを利用した商店街情報の発信件数も順調に伸びています。
エネルギー・環境対応事業としては、エネルギー使用合理化設備導入促進に取り組んでおり、相談員6名が府域257社を訪問して相談に応じ、そのうち13社が専門員による指導を受けています。このほか情報提供としてセミナー開催や、インターネットによる情報発信も行っています。

――新年度の重点事業計画についてお聞かせ下さい。

立石 平成9年度は中小企業庁の診断、指導、情報化対策事業費の再編成がありました。その中で京都産業情報センターも、京都府の診断指導機関である府中小企業総合センターなどの関連機関と連携をより密にし、効率的な運営を行っていきます。

具体的には、情報化の推進については総合的コンサルティング広域連携事業の中で広域連携情報ネットワーク整備事業として、従来からのインターネット利用推進事業や新しく改変される中小企業スーパーネットシステムの構築が重点課題になるでしょう。その意味で京都産業情報センターが京都府のネットワーク・オペレーションセンター的な機能を果たしていく第一歩の年になります。

小売商業支援センター事業は、大店法による規制の緩和が一層進む中で、小売商業者の経営強化のための情報提供や経営相談事業に力を入れます。
エネルギー・環境対応事業としては、「気候変動枠組み条約・第3回締約国会議(COP3)」に向けて、中小企業に対する情報提供支援を強化します。
また会員交流、異業種交流についても、京都産業情報センターがこれまで以上に会員各社や中小企業の皆様に身近なものとなり、活発に利用していただけるように努力したいと考えています。

――来年はいよいよセンター設立20周年を迎えます。今年はそのためのステップアップの年にあたるわけですが、明日のセンターについてどのようなビジョンを。

立石 平成7年度に「21世紀に向けた京都産業情報センター事業計画」(略称:ACT21)を策定しました。このACT21計画によると、事業展開の将来像は4つの事業に集約されています。
1.情報ネットワークに関する事業――京都府内の情報交流を促進し、府内どこからでも世界に情報発信できるよう京都縦貫情報幹線の建設、府民ネットへの接続、関西文化学術研究都市との連携による高度情報通信システムの広域実験など、京都産業情報センターと地域特性にマッチした機能を有するサービスおよび情報拠点とのネットワークの形成
2.相談に関する事業――京都府北部・南部に立地する製造業、商業等の企業ニーズに応えるとともに、北部は舞鶴港整備<輸入促進地域(FAZ)>に伴う環日本海地域の物流の発展に対応した新たな情報ニーズ、南部は学研都市との交流強化などをねらいとした、北部・南部支所の開設
3.ヒューマンネットワークに関する事業―― 「京都府異業種京都会」などを核として、成功した企業の専門家などの知識や経験を系統だてて後継者を対象にした新たな異業種交流事業の実施
4.グローバル化に関する事業――企業の海外進出や輸出入にとどまらず、産業技術の開発分野などグローバルな視点から産業情報をとらえ、インターネットなどを駆使した国際産業情報の収集・提供およびシンポジウムの開催
以上のような事業を軸に、当センターの将来像を描いています。

――これらの事業を展開していくための課題は何ですか。

立石 まず、会員の充実強化があげられます。そしてマルチメディア事業の拡充に伴う施設の整備や、府内の主要地域におけるサービスおよび情報拠点づくりが必要です。また事務局体制も強化しなければなりませんが、京都府、京都市、会員各社のご協力を得ながら着実に進めていきたいと考えています。

――21世紀に向けて一層の飛躍を願っております。最後に、経営者として関心をお持ちの事柄についてお聞かせ下さい。

立石 今の世の中の環境の変化を見ていると、「ハード」から「ソフト」の重視へ、「アナログ」から「デジタル」の技術へ、「ドメスティック」から「グローバル」な市場へ、「マスプロダクション」から「マスカスタマイゼーション」の時代へと、95年頃を境に「時代の分水嶺」を越えたと考えています。時代の分水嶺を越えた新しい状況の下で、経営システム、経営構造、技術、商品、物のつくり方、売り方などが、環境変化に対応できることが必要です。つまり、過去の成功要因が今では失敗要因になっていないか、過去の成功要因という美学から脱却することがむしろ必要なのでは、と思います。


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