1997 JANUARY
NO.255
KYOTO MEDIA STATION


京都・人・産業
巻頭インタビュー Vol.10/第2回

近畿大学理工学部
佐佐木 綱 特任教授

設問2−京都の環境整備において、先生が配慮されていることや産業側へのご提案があればお聞かせ下さい。

環境整備においては、街の持つイメージを表現する方法を考えなければならない。京都では、イメージに配慮して高速道路を地下に整備するとなると計画の大幅な変更が必要になり、地下のデザイン、地上の街路樹の種類などで大きな影響を受ける。
場所ごとのイメージによって各駅のステーションカラーを考えることも大切だ。これまでのようにどこも同じ色では個性がない。ただし京都では直接的すぎるものよりも間接的なもののほうが好まれることを理解しておかねばならない。大阪の地下鉄には動物園前駅に動物の絵が描かれているが、あれは実に大阪らしい直接的な表現だ。だが、京都ではわかりやすければよいという訳ではない。具体的なものでは馬鹿にされているようで京都の知的レベルががた落ちだと市民から怒られるだろう。むしろ無意識層に訴えるような、意識と無意識の境目辺りで表現するのが京都的で、文化の高さを感じさせる。
また、ストリートカラー、統一した街路の色を考えることも大切だ。例えば三条通りは私にとっては朱色のイメージが強いので、街路樹は赤い色の花の咲くものにして下さいと言っている。これまで土木はそのようなことを考えてこなかった。建築家は自分の造る建物のことだけを考え、それぞれが建てたいものを建ててきたといってよい。イメージに関する研究が抜けていたのだ。
ただし、なかには評価できるものもあって、東山五条周辺に白と黒の街路灯が設置されているのは街のイメージに合っていて好ましいと思っている。五条大橋の牛若丸と弁慶、その弁慶の装束の色である黒と白が、私がふさわしいと考える五条通りのストリートカラーだからである。
こうしたことに考えが及ばず、整備されたものが街の持つイメージとかけ離れたものであっては困る。私は関西空港をつくる時に街路にこだわって植物の専門家を入れ、秋には山手から順に紅葉していくよう、ゾーンを分けて樹木の種類を変えていった。京都でも、施主が京都らしいものを建てたいと考え、意見の一致した建築家に設計を依頼するのが理想的だ。このように環境に配慮し、企業イメージにつながり、なおかつ市民にも受け入れられるものをつくっていくことが産業側に望まれる。

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