1996 DECEMBER
NO.254
KYOTO MEDIA STATION


京都・人・産業
巻頭インタビュー Vol.9/第1回

近畿大学理工学部
佐佐木 綱 特任教授

設問1−情報通信技術の発達によって地域の特性にはどのような変化が起きているのでしょうか。また、京都の産業に及ぼす影響は?

情報化が進み、交通手段が高速化すると地域間の競争が激しくなり、特色のない町には人が集まらない。そこで町のイメージアップが図られるが、下手をすると画一性の中に堕落する。例えば緑のまちづくりが言われると各地でそれが謳い文句になるという具合だ。現地に行かなくともインターネット等で情報が得られるようになり、観光客を集めるには個性的都市の表現が必須となった。
従って京都の個性「京都らしさ」を持たすための研究がこれからの地域の発展につながる。しかし、それは一体どんなものか? 京都で高層ビルの反対運動が起こるのは、心の中に無意識に持っている京都のイメージに合わないからだが、科学的に説明することはできない。
そこでこうしたイメージの指針の一つとして、私は中国の陰陽学による「町の男らしさ、女らしさ」を提案している。例えば小京都は必ず女性的であり、京都より女性的な町は日本にない。鉄鋼の生産よりも西陣織など小型でソフトな産業が伸びる町であり、物的生産よりも教育、研究などの知的生産が多い。また、女性的といっても神戸がハイヒールの似合う町であるのに対し京都は着物が似合う町。つまり足を隠す文化だ。だから、高速道路や鉄道といった交通手段は、高架にする倍の費用を要しても見えぬよう地下にということになる。
ただし伝統を大切にするといっても、最新の情報技術はやはり必要だ。実はこの情報技術というのは非常に女性的なもので、小さくて軽く部屋の中では床下などに隠すことができる。これは女性が美しく化粧するのと同じ発想で、京都に非常にマッチしている。とはいえ、通信はどこからでも行えるのだから、問題なのはむしろその利用の仕方だ。京都は中小産業が多く、多品種でそれぞれは大きな生産額ではないため、良いアイデアを取り入る手段がより重要とされる。言い換えれば京都には情報通信技術を利用しやすい産業が多いということであり、常に時代の最先端を行く産業を伸ばすために情報交換が不可欠なのだ。また研究中心の町でもあるからパテントにも関係する情報が多く、守秘手法の導入も必要である。

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