1996 OCTOBER
NO.252
KYOTO MEDIA STATION


京都・人・産業
巻頭インタビュー Vol.7/第3回








京都大学大型計算機センター
金澤 正憲 教授

設問3−情報処理の分野では京都は他都市と比較して先進的といわれています。産学協同でできることがあればそれは何でしょうか。

米国では、ネットスケープのようにインターネットのWWWブラウザを開発したり、皆が喜ぶようなモノをつくれば学位が与えられる。パソコンソフトや製品開発も立派な研究成果である、という感覚だ。ところが日本では、新しい原理原則を見つけたとか、未解決の分野の問題を数式化して解析したとか、そういう基礎研究をやらないと学問的に認められないという風潮がまだまだ根強い。したがって今日、情報処理関係のソフトは残念ながらほとんどが“米国製”になっている。
かといって、日本人にその能力がないのかといえばそうではない。たとえばゲーム用ソフトは日本が独占している。能力的に劣っているのではなく、学問的に評価されていないだけで、評価してもらうにはゲームメーカーに勤めるのが早道ということになる。
約40もの大学、短大を抱える全国有数の大学都市・京都は元来、企業との交流では実績がある。ただ、産学協同というと大学が産業界から委託を受けて研究するといったイメージが強いが、私が考えているスタンスはちょっと違う。ソフトをつくることに関しては大学人も能力は結構ある。しかし、それを製品化するのは研究者にとって学問的業績にはつながらずプラスにならないので、結局、研究室の片隅で眠ったままになってしまう。そこで大学での研究を生かし、製品化して世間に広めることを産業界でバックアップしていただけないか、つまり「うちの研究成果いりまへんか」という方向だ。特に情報処理の分野については、そうした形の産学協同が進んでいけば、学際研究にも弾みがつくのではないか。
もっとも、大学の世界で育った研究者の発想がビジネスの世界で即通用するかどうか、産業界のほうで話に乗っていただけるかどうかはわからないが……。

シリーズ4回で掲載する予定です。

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