1996 AUGUST
NO.250
KYOTO MEDIA STATION


京都・人・産業
巻頭インタビュー Vol.5








京都大学大型計算機センター
金澤 正憲 教授

設問1ーパソコンやインターネットの普及が、ビジネスの現場にどのような影響を与えていくのか。情報社会における企業のあり方について、どうお考えですか。

情報というのは人間が言葉を使い始めたときからあり、その伝達手段の最初の大きな発明は紙だった。それが印刷技術の発明で多量に伝達することが可能になり、さらに電波によって瞬時に距離空間を超え、今日ではインターネットが国境のない巨大なインフラになりつつある。これは使い方によっては“非常に便利な道具が現れた”と前向きにとらえるべきだろう。
大学の世界も例外ではなく、研究のエッセンスを情報という形で発表するのが論文。実際、たとえば情報処理学会では、論文の出版はもうやめにしてWWW(ワールド・ワイド・ウェブ)でやろうという動きが出てきている。
企業にとって従来の宣伝は、不特定多数を対象にマスメディアを使ったり、分厚いカタログをつくって一方的に情報を流すことしかできなかったが、インターネットは双方向で情報を伝達することができる。この双方向性を利用すれば、ホームページにアクセスした人のプロフィルを記録することが可能だし、電話などより確かだ。
情報には伝達と処理と蓄積の3つの過程がある。処理に関する技術は日進月歩で進んでいるが、問題は情報をどう蓄積するかだ。蓄積というのは情報をたんにためるだけでなく、必要なものをどう取り出すか。インターネットに流れている情報は玉石混淆(こんこう)といえるかもしれない。結局、インターネットの弱点は受け手側がアクティブにホームページを見ない限り伝達されないことと、しかも次から次に裾野が広がっているので、必要とする最小限の情報を見つけるという検索に案外手間がかかること。そこで業界では、欲しい情報だけを定期的に入手し、ブラウザ(インターネット上のファイルを参照するための閲覧ソフト)にためておいて、欲しい情報だけを定期的に入手できるシステムの開発が急がれている。
ただ、留意すべきは情報先進国・米国での成功例はよく耳にするが、反対に失敗例はあまり入ってこないことだ。インターネットについてもそのへんを見極めて対応していく必要があるように思う。

シリーズ4回で掲載する予定です。

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