1996 JULY
NO.249
KYOTO MEDIA STATION


京都府内企業の情報化に関する
実施調査報告書
(要約版)

財団法人 京都産業情報センター

1.調査の概要


1.調査目的
 本調査は「京都府内企業の情報化」の実態を把握し、企業が今後、情報化に取り組むにあたって参考資料となるために実施したものである。

2.調査地域
 京都府内を京都府北部、京都府南部、京都市北南部、京都市南東部の4地域に分け、調査を行った。

3.調査対象企業
 (財)京都産業情報センターが構築しているデータベース「SMIRS 」などの中から、中小企業を中心とした京都府内に拠点を有する京都市地域1030社、その他地域474 社、合計1504社を抽出し、調査対象とした。

4.調査方法
 アンケート用紙を郵便により配布して、同封封筒により返送を依頼し、回収する方法により調査を行った。

5.調査の構成
 情報機器の導入状況、必要とする情報、データベースの利用状況、ネットワークについてなどを設問し、選択方式による回答方法で行った。

6.調査期間
 平成7年9月20日〜平成7年12月20日

7.回収状況
 1504社の配布に対し、京都市地域から307 社、その他地域から141 社、合計448 社の回答があった。京都市地域の回収率は29.8%、その他地域の回収率は29.7%、全体の回収率は29.8%であった。

8.集計および分析の対象
 集計は回答企業の全体、従業員数別、年間売上高別、業種別、京都市地域及びその他地域別の観点から行い、分析は全体と業種別について行った。なお、一部の設問項目については全国の企業(平成7年度中小企業白書記載)との比較を行った。

9.回答企業の概要

  1. 従業員数の傾向
     従業員数を7つのグループに分け、分析を行った。最も多いグループは51名〜100 名の131 社(29.2%)、次いで31名〜50名の112 社(25.0%)で、この2つのグループで54.2%と過半数を占めている。
  2. 年間売上高の傾向
    回答企業を年間売上高別に8グループに分け、分析を行った。最も売上高の多いグループは10億円〜30億円未満の114 社(25.4%)で、次いで5億円〜10億円未満の107 社(23.9%)である。年間売上高が5億円〜30億円未満の企業が121 社あり、この2グループでほぼ半数の49.3%を占めている。
  3. 業種別の傾向
     回答企業を製造業(15業種)、卸売業(3業種)、その他の業種(3業種)の合計21業種に分け、分析を行った。
     その結果、製造業と非製造業の比率を見ると、63.8%(286 社)対36.2%(162 社)である。
     業種別に見ると、回答数の最も多い業種はサービス業の65社(14.5%)で、次いで電気機械器具の43社(9.6 %)、さらに小売業の34社(7.6 %)と続いている。
  4. 地域別の傾向
     回答企業を亀岡市以北の京都府北西部、向日市以南の南東部、京都市内の北西部(右京区、上京区、北区、左京区、中京区、西京区)、京都市内の南東部(下京区、東山区、南区、伏見区、山科区)の4地域に分け、分析を行った。なお、京都市については参考までに13区に分けて集計した。
    回答企業448 社を地域別に見ると、京都市地域は307 社(68.5%)で、そのうち北西部は170 社(37.9%)、南東部は137 社(30.6%)であった。一方、その他地域は141 社(31.5%)で、そのうち北西部は52社(11.6%)、南東部は89社(19.9%)であった。
10.調査内容
調査は次の4つの観点から行った。
○企業の情報化
○必要とする情報
○データベースの利用
○ネットワークの活用

2.調査結果


 調査結果は次の通りである。

○企業の情報化

  1. 情報機器の導入は「パーソナルコンピュータの導入」が最多(76.6%)〔第1図参照〕パーソナルコンピュータの最も高い普及率の業種はサービス業(81.5%)〔第1表参照〕
  2. 情報機器導入の年間予算は「100 万円〜500 万円未満」が最多(33.7%)
  3. 情報機器導入の目的は「経営管理の合理化」が最多(93.7%)全国平均企業は91.8%〔第2図参照〕
  4. 情報機器導入の効果は「効果が上がっている」が最多(83.1%)全国平均企業は71.4%
  5. 情報機器導入の具体的な効果は「事務処理能力の向上」が最多(94.9%)全国平均企業は90.8%〔第3図参照〕
  6. 効果が上がらなかった理由は「組織体制・人員が整っていない」が最多(61.5%)全国平均企業は23.1%〔第4図参照〕
○必要とする情報
  1. 情報化の推進に必要な援助は「コンピュータ業者の協力」が最多(72.1%)全国平均企業は45.4%〔第5図参照〕
  2. 企業活動に必要とする情報は「販売戦略に必要な情報」が最多(73.0%)〔第6図参照〕
  3. 必要情報の入手方法は「新聞・雑誌から入手している」が最多(86.2%)〔第7図参照〕
  4. 情報収集に費やす情報機器を除く年間総経費は「10万円〜30万円未満」が最多(22.3%)
○データベースの利用
  1. データベースの有無は「ない」が大多数(70.6%)
  2. データベースを利用しない理由は「必要性を感じない」が最多(43.2%)
  3. 利用したデータベースの種類は「COSMOS」が最多(61.1%)〔第8図参照〕
  4. (財)京都産業情報センターの代行検索サービス利用は「ある」が約4分の1(24.3%)
○ネットワークの活用
  1. 企業内ネットワークの導入は「知っているが導入していない」が最多(37.5%)〔第9図参照〕
  2. 企業間ネットワークの導入状況は「知っているが導入していない」が最多(48.2%)〔第10図参照〕
  3. インターネットの認識度は「知っている」が大多数(84.4%)
  4. (財)京都産業情報センターのパソコン通信の利用度は「DL京都、KYONETを知らない」が最多(30.8%)〔第11図参照〕
  5. 「京都インターネット利用研究会」の認識度は「知らない」が半数以上(64.3%)〔第12図参照〕
  6. 「京都インターネット利用研究会」の関心度は「ある」が過半数(56.0%)〔第13図参照〕
3.情報化を進める上での課題および今後の対応

○情報化を進める上での課題
1.京都府内企業の課題

  1. 京都府内の企業は情報化が全国平均の企業より進んでいるが必要な情報を得るために協力を求める機関として中小企業団体や公的機関などに対する要求度は低い。今後、積極的に活用していく必要がある。
  2. 情報を入手する上で、「必要な情報がとれない」(44.9%)が半数近くあり、入手方法で比率の高かった「新聞・雑誌から入手している」(86.2%)、「取引先から入手している」(69.4%)での入手に限界があることを示している。情報源を幅広く求めていく必要がある。
  3. データベースを利用しない企業(70.3%)が多く、その中で利用の仕方が分からない企業が41.0%も存在しており、情報化社会の中で企業は受け身でなく能動的に情報収集をする必要がある。
  4. 企業内情報の共有化、企業内情報のネットワーク化がうまく機能していない。情報化の利用効率を高める上でもこれらの機能の向上が必要である。
2.(財)京都産業情報センターの課題
  1. (財)京都産業情報センターでの代行検索(特に企業検索)は依頼するコストが高いというイメージを持っている企業が比較的多い。また、利用の仕方が分からないという企業もかなりあると推察される。
  2. (財)京都産業情報センターのパソコン通信の利用度(4.9 %)が低い。利用のメリットがどこにあるか分からないのではないかと推察される。
  3. インターネットの関心度はかなり高いが、(財)京都産業情報センターの「京都インターネット利用研究会」を知っている企業(33.9%)は少ない。しかし、当該研究会に対する関心度(56.0%)はかなり高い。
  4. (財)京都産業情報センターに対する認識度は低いが、今後の活動に何らかの期待をしていることがうかがわれる。
○今後の対応
1.京都府内企業の対応
  1. 全国平均の企業より情報化が進んでいる京都府内企業であるが、さらに情報化を高めるために、従来、利用率の低い中小企業団体や公的機関などを積極的に活用していく必要がある。
  2. 必要な情報をとるために従来から活用している新聞・雑誌、取引先以外の各機関から入手する手段を開拓し、総合的に正確な情報をとる努力が必要である。
2.(財)京都産業情報センターの対応
  1. 京都府内の企業の情報化は全国平均の企業に比べて進んでいるが、企業内情報の共有化、企業内情報のネットワーク化などではうまく機能していない企業もかなりあり、これらの情報化が進めば、企業にとってさらに経営効率が上昇するものと考えられる。しかし、どのように情報化を進めれば良いか分からない企業がかなりあるものと思われ、公的機関で指導していく必要があると考える。また、企業側では従来、「コンピュータ業者」や「取引先」に指導を求めており、公的機関でこのような指導は行ってもらえないと考えている傾向がみられる。従って、今後はこのような面での支援体制をとる必要もあると考えられる。
  2. (財)京都産業情報センターの代行検索で、企業検索に対するニーズはかなり高い。しかし、検索費用が高いというイメージがあり、利用率は高くない。利用している会員で高いとは思わないという企業もあり、今後、経費などを明示してPRする必要もあると考えられる。
  3. 京都府内企業でのインターネットの関心度は「京都インターネット利用研究会」の関心を含めてかなり高い。しかし、漠然としたイメージでとらえている企業が多く、インターネットの利用方法、利用するにあたり要する経費、企業活動を行う上で、どのようなメリットを得ることができるかなどの概要については知らない。また、受け身で考えている企業も多く、これらの企業に対して積極的に概要をPRしていく必要があると考えられる。

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