1996 JULY
NO.249
KYOTO MEDIA STATION


京都・人・産業
巻頭インタビュー Vol.4










京都学園大学
波多野 進 教授


設問3-
京都ブランドといわれる企業に、今後望まれること。また、新規起業を支援される助言があればお願いします。

 

伝統産業については経営の近代化が必要。各企業ともどんどん世代交代を進めて、若手経営者が経営刷新、マネージメントイノベーションをおこなさければいけないと思う。そういった若手経営者は、伝統産業分野はもちろんのこと、山ほどある情報のシーズをうまく利用してもっともっと新しい産業分野にチャレンジしてほしい。
また、京都はベンチャービジネスの都というが、なかなか育っていないのが実情。そこで、起業家集団を育成するためエンジェルファンドを行ってはどうか。つまり、各企業の経営者が自らのポケットマネーを出しあってそれを若手の起業家に注ぎ込む。それもリスクマネーで。京都で最初にできたベンチャーキャピタルがうまくいかなかった例を見てもわかるように、起業家育成に投資する資金は、金融機関や行政機関に頼ったリスクを伴わない資金を集めれば失敗する。今、都市のなかで会社を起こそうとすると億単位のお金がいる。しかし、それだけのファンドを注ぎ込んでも起業家を育成しようとするパワーが必要なのだ。 日本ではよく企業内ベンチャーといわれるが、これは私の考えではありえないこと。こうした例をみると、一回挑戦してみて失敗したらまた戻ればいいという企業の考え方がほとんどだが、ベンチャービジネスは本来、駄目だったら野垂れ死に。掛けごとのようなもの。人生を掛けるのでなくてはいけない。また、各地域でベンチャー育成学校があるが、これも企業から派遣して行っている例が多い。しかし、起業家を育てるのであれば、むしろ脱企業でなければいけない。突出し異端で個性ある起業家でなければ成功に導けない。京都では米国のスタンフォード型の学生ベンチャーを見習うといいだろう。スタンフォード大学の卒業生は、企業のプロジェクトを考えてプレゼンテーションし、それに賛同する会社から投資してもらうという。学生の町、京都でもそういった環境づくりに取り組むべきだ。『学生ベンチャーは京都へ』といったキャッチフレーズでフォーラムなどを行い、京都へ行けば出資してくれるエンジェルがいる、という事になればどんどん有能な人物は集まってくるものだ。投資する経営者自身のベンチャースピリットが問われる時代がやってきたように思う。(完)

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