1996 MAY
NO.247
MEDIA STATION



「魅力」をテーマに
スクリーン印刷を極める

中沼アートスクリーン(株)
社長/中沼 壽氏に聞く




異業種京都会でホームページ発信へ


―京都府内の100グループ、12、500社を擁する京都府異業種交流会連絡会議(異業種京都会)の新会長に就任されましたが、ご自身の異業種交流の経験は?

昭和57年に京都中小企業家同友会の中で異業種技術交流会(現・コムテック京都)を数人で創設しました。異質の中小のメーカーが技術を持ち寄れば何か新しい技術製品ができるのではないかとスタートしたのですが、仮に何かを開発できても販売することが難しいのではないか。製造業だけではなく、いろいろな業種、特に流通関連の方々にも最初からご参加いただく事が望ましいと考え、スタート時の異業種技術交流から異業種交流へと変化してきました。異業種交流は、ギブ・アンド・テイクではなく、ギブ・アンド・ギブ精神でなければ続かないと思います。つまり、「持ち帰る」事よりも「持ち寄る」事を優先しないと継続はおろか、到底、もの創りはできません。

―「持ち寄る」事によって成果はありましたか。

脱フロンガス、エタン全廃がいわれていることから、別の交流グループ・アドバンス京都で研究を重ね、プリント実装基盤の洗浄システムを2年がかりで開発しました。事業化に向けて9社で共同出資して株式会社を設立、ようやく販売開始という段階を迎えています。

―異業種京都会の安定的な持続、さらに組織の拡充強化には今後ご苦労がおありかと思いますが、当面、どんな事業に取り組まれるのですか。

異業種交流にはマニュアルや決まったレールがあるわけではありません。異業種交流は集まることも大切ですが、これからは、忙しくて参加できないときはインターネットで交流できます。これは大きな変化で革命的ですよ。できるだけ多くのグループがインターネットに参加しようということで勉強会を行い、7月には異業種京都会としてホームページを開設する予定です。


エレクトロニクス分野に注力


―社業のほうはスクリーン印刷用製版では関西トップ。手がけておられる範囲も幅広いですね。

スクリーン印刷とは、昔使った謄写版の“兄弟”みたいなものです。今日では、商品開発に欠かせない技術として日常生活で使用するパッケージ、プラスチック製品から、駅構内の表示や路線図、自動販売機のデザイン、建築資材、各種カード、食品、家電製品の操作パネルや電子回路に至るまで、その対象はあらゆる分野に及んでいます。なかでも近年、需要が増えているのがエレクトロニクス分野で、プリント基板の小型化・高密度化に伴い、数十ミクロン単位の超細密のメタルスクリーンも開発しました。

―どんな素材、サイズも選ばない“究極の印刷”というわけですね。このビジネスとの出合いは?

大学では電気工学が専攻だったのでしたが、絵や写真を趣味にしていました。この趣味とシルクスクリーンの出合いがあり、3回生(昭和29年)の時、事業家しました。当時は繊維製品向けが主力でしたが、やがて「木に印刷できないか」「プラスチックやガラスに…」と要望があり、時代のニーズとともに印刷も多様化の一途をたどりました。30年ほど前には、チョコレートやクッキーなどにマンガの印刷する方法も菓子メーカーと共同開発いたしました。

―現在の売上高を部門別にみるとどうなっていますか。

製版部門が65%、印刷受託20%、印刷機・資材販売が15%といったところです。本社工場と大阪工場では製版、久御山工場(久世郡久御山町)が印刷、マイクロスクリーン工場(京都市右京区西京極)は完全クリーンルーム化したエレクトロニクス分野の専門工場で、隣接して技術開発研究所を設けています。

―この業界も競合の激化で価格競争が起きているとか。

グラフィカルな印刷分野は10年前ぐらいからほぼ成熟化し、いわゆる多品種少量の時代になりました。業界全般の技術レベルも上がっていますから、営業はおのずと「値段はいくら」という話が多い。その点、メタルスクリーンはどエレクトロニクス分野は技術開発力をフルに生かすことができます。受注を待つだけの営業から提案型へ、昨年、東京営業所を開設したのもその一環です。


魅力こそ前進のエネルギー


―社内的には「GET100運動」に取り組んでおられますが、どのような狙いから?

何事も「100」という数字を意識しようという運動で、社員からの提案です。例えば、目標は100%を目指す、従来より100円付加価値を増やす、100円でも伸ばそう、100円始末できないか、100円廉価で売るには…。経費面では節約運動と取り組んだ結果、半年間で約3000万円節減することができました。

―QCサークル活動も活発ですね。

社員のやる気と責任感は、魅力ある人材、魅力ある製品、魅力ある会社づくりに欠かせません。平成2年から週休2日制を導入していますが、これもQC活動の成果です。

―社是が「魅力」。その言葉にはいろんな意味合いが込められていますね。

人の心を引きつけるものが魅力です。取引先にとって魅力があると同時に、社員にとってもやりがいがあり、魅力ある会社でなければなりません。4年前に福利厚生施設として本社の隣にコミュニケーションホール「PLAZA NASA」を建設、バーやカラオケなどを備えたサロンがあり、正月には社員の家族も含めてホームパーティーを開いています。経費節減によるお金でハワイ社員旅行に出かけました。NASAを地元にも開放しています。取引先だけでなく社員や地域の信頼があってこそ、企業として存続し得るのですから。


DATA

中沼アートスクリーン(株)
住所
TEL
FAX
代表者
京都市右京区太秦安井奥畑町23
075-841-9301
075-822-1017
中沼 壽

MONTHLY JOHO KYOTO