1996 MAY
NO.247
MEDIA STATION


京都・人・産業
巻頭インタビュー Vol.2


京都学園大学
波多野 進 教授


設問2-
京都において、産業構造の変革はどのような形で表れているのでしょう。今後、どのような展開が予測されますか。

 

京都は物づくりのまちとして今日まできたため、製造業はよいが、サービス業、とくに対事業所のサービス業が弱い。なかでも情報サービス業。最近の調査をみると、京都府で情報サービス業に携わっている人は5000人。しかし東京圏内では26万人、大阪市は6万人、神戸市は8000人。府内全体で神戸市よりも少なく、情報サービスに携わる人がいかに少ないかを表している。
なかでも目立って弱いのがソフトウエア産業。府内でソフトウエア産業に携わっている人口はたったの2300人で、近畿地方全体では5万人といわれるが、府のソフトウエア従事者はその内の5%ということになる。
メーカーでは通信、また、コンピュータそのものを作っている会社も少ない。半導体やその部品、半導体の製造装置などを製造している企業は多くあり、デバイス(応用装置)は比較的強いにもかかわらず、コンピュータの総合製造メーカーは少ない。また通信関連企業も少ない。こうした傾向は京都の製造業の弱点。 産業構造が高度化していくなかで、そうしたことを踏まえて、強いところはさらに強く、通信、コンピュータ、ソフトといった情報関連産業を補強していくことが必要だ。中小企業全体が異業種交流などでネットワークを結び、グループづくりを活発に行って行動を起こしていくことが重要だろう。
一方、産業流出など都市の空洞化が叫ばれ、危機感を抱いている人が多いようだがはたしてどうか。去年の通産省の動向調査をみると、たしかに大手企業の海外生産比率は全体の17%と高まっている。しかしヨーロッパは10数%、アメリカは20数%。日本全体だとまだ8%にしか過ぎない。そう考えると、日本だけが特殊な構造でおさまるわけではなく、まだまだ海外生産比率が高まっても不思議でない。今年もさらに海外生産比率は高まるだろう。そうなった時を想定して、今から考えて準備をしていかなければいけない。例えば京都のコンテンツへのアクセスが有利なら、そのために必要な関連産業を発展させることだ。
今後、どこで生産してもいいものは、どんどん流出していくだろう。そうなればますます京都にしかできないものを作っていくことが必要であり、そうした企業のための受け皿づくりが重要になる。まずは産業構造と都市構造を同時に取り上げて産業立地対策を立てていくことが必至だ。
(続く)

※シリーズ4回で掲載する予定です


MONTHLY JOHO KYOTO