1996 APRIL
NO.246
MEDIA STATION



高度情報化を
推進する技術集団として
日本コンピューターファシリティ(株)
社長/田中 義則氏に聞く




国際電話が安くなる


―近く国際通信事業に参入されるとか。どのような事業とシステムになっているのですか。

国際通信の内外格差是正及び日本の通信事業の国際化をにらみ、“もっと安く”の需要に対応しようと米国の国際通信会社と提携、京都から特殊交換機経由で米国の通信システムにアクセスし、そこから世界180カ国へ通話する新しい国際電話のシステムです。名称は「デルタコール009」。最初に「009」をつけて世界各国の番号をダイヤルすれば、デジタル交換方式でつながるのでクリアな音声で通話ができます。FAXや携帯電話、PHSでも通話でき、パソコン通信も可能です。すでに郵政省の電気通信事業法第22条の承認を得ました。

―ユーザーにとって「009」利用のメリットは?

月々の基本料金や設備費用は不要ですし、米国の国際通信会社が各国間に敷設している専用回線及び通信システムを使うので、通話料金はK社と比べて欧米主要国の相手先なら40%程度安くなります。

―米国の通信システムを京都で使う、ということですね。それで通話料金がどうして安くなるのですか。

日本からの国際電話はK社の独占状態ですが、欧米では規制緩和が進んでおり多くの電話会社がサービスや料金を競い合っています。ですから、通話料金の内外価格差を利用して米国に直接アクセスすれば、料金は安上がりですむことになるわけです。


上海進出も順調に


―海外事業といえば中国・上海に法人をつくっておられますね。

94年3月にコンピュータソフトの独資企業(外資100%)、「上海亜伸納羅信息技術有限公司」を近畿システムハウス事業協同組合加盟の14社の共同出資(20万米ドル)で設立しました。「亜伸納羅」は“あすなろ”のあて字、「信息」はソフトの意味です。ベーシックなプログラムは中国でやりコストダウンを図るのがステップの1段階目の狙いです。人件費、通信費などトータルコストは日本の40%程度といったところでしょうか。次のステップは中国の市場開拓です。

―もともと早い時期から中国を視野に入れておられたとお聞きしていますが…。

88年に訪中して市場経済化への意気込みを知り、事業構想をあたためていたところ、89年に天安門事件が起きて中断。しかし、お互いに当事者の情報交換を続け、5年余の経験を経てスタートすることができました。この間、中国から技術研修生としてソフトウェア技術者を受け入れ、事業化に備えて人材を養成しました。

―進出して2年。何か支障はありませんか。

着実に成果をあげつつあります。基本的には市場経済と統制経済の違いというか、仕事の手順などに対する認識は違いますが、現地スタッフはいずれも技術研修生だったので、そのへんの問題はありません。むしろ彼らの発想のほうがロジカルで、きめ細やかな分析力では優れているように思います。

―コンピュータシステムの需要がほぼ一巡、しかも、ここ数年は新たなシステム投資も手控えられているようですが、何か次ぎの一手は考えておられますか。

いろんなことを手がけすぎて困っているくらいなんですが(笑)、上記の国際通信事業、海外事業展開の他にニューメディア機器の開発です。(株)京都産業技術振興財団から助成金をいただき、点字をつけたコンピュータ画面を開発しました。ただ、即ビジネスの段階には至っていませんが、人間の五感に対応したメディア機器の開発は時代とともに進んでいくでしょう。テレビにしても将来、料理番組では匂いもわかる時代がやってくると思います。


理想の現実化をめざす


―社員約90名のほとんどが技術者で、会社というより技術者集団といったイメージが強いですね。

「高度情報化社会を推進する技術集団」と自称しています。営業セクションはつくっていません。事業や商品の説明や、その場でのユーザーのニーズに即応していくには技術者でないとできませんから。今春、8名も採用しましたが、いずれも技術者として育てていきます。

―また、横のつながりである京都コンピューターシステム事業協同組合の理事長も。

京都市ベンチャービジネスクラブのソフト部会を発展的に解消して3年前にスタート、現在20社で構成しています。全国的にみれば、ちょっと立ち遅れたかなと感じています。

―最後に経営モットーをお聞かせください。

情報化の「理想」を「現実化」していくことをめざす―これは当社の夢であり課題です。


DATA

日本コンピューターファシリティ(株)
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代表者
京都市下京区烏丸通仏光寺上ル
075-351-1881
075-341-1517
田中 義則

MONTHLY JOHO KYOTO