1995 DECEMBER
NO.242
MEDIA STATION


interview

建設業界の
研究開発型企業をめざす

(株)エポ
社長 椿森 信一氏に聞く

“円いものは円く切る”

―社名の「エポ」の由来からお聞かせください。

椿森-- アルファベットで「EPO」、EはEasy(より簡単に)、PはPrompt(より速やかに)、OはOriginality(独創性)の意味です。私どもの仕事は土木工学のジャンルになるのですが、路面のマンホールを取り換える際、施行に時間がかかり交通渋滞を招いています。ですから、一刻も早く交通遮断を解くということが最大の課題でした。それには工法を簡便にして、速やかに工事を進める必要がある。そして、開発するにあたってはなによりもまず独創的な発想がなくてはいけません。

―開発されたエポ工法の特長は?

椿森-- マンホールの周囲は傷みやすく、交通量の増大や車両の大型化(25t対応)どで補修工事は増える一方です。従来の工法は周囲を四角に切っていたため、補修面積が必要以上に大きくなり、コンクリートブレーカーでアスファルトを砕くときに毎度お騒がせの騒音が発生するなどの問題がありました。施工に時間がかかるのも、切断から復旧までの作業工程が別々の業者で行われていたからです。
 そこでまず、“円いものは円く切る”という発想に立ちました。円切りカッターで円形に切断すれば補修面積は小さくなると、切断後はマンホールの枠ごとアスファルトを撤去するという施工の、各工程に必要な機械および周辺機器と施工に必要な材料等を開発し、一工程で施工を完了させるためにエポ工法をシステム化しました。さらに消音ブレーカーの開発によって騒音問題も解消することができました。

―それで施行時間はどのくらい短縮できたのですか。

椿森-- 全工程を一工程にして一括して行うことにより、連続作業でも8時間はかかっていた工事が3時間以内で済むようになりました。従来の工法に比べて費用は5割増しになりますが、立ち上がり強度の高いESコンクリートを使っているのでいったん補修すると耐久性は大幅アップします。
NTTつくば技術開発センターの調査では、同一路面で従来工法なら年平均0.8回の補修工事が必要でしたが、エポ工法では0.2回で維持できるので、4倍長持ちするということになります。つまりイニシャルコストは多少かかるものの、ランニングコストは格段に安いというわけです。阪神大震災の影響調査でも、エポ工法の施行個所ではマンホールのフタまわりの損傷が少ないことが裏付けられています。

知的所有権をベースに

―こうした発想の原動力となったものは何ですか。

椿森-- 21歳のときから道路舗装の事業に携わり、マンホールが傷みやすい要因はよく承知していましたし、少しでも擬問や不合理な点があれば、それを解決するにはどうすればよいかを考えてきました。社内でも提案制度を設け、現場でおきた新たな疑問の提案や、その疑問を解決する技術をどんどん出してもらうようにしています。私自身、プラス思考の性格で、少々マイナス面があってもプラスがより大きければゴーをかけています。

―「京都ベンチャー大賞」(平成2年)をはじめ、「科学技術振興功労者賞」(3年)「中小企業庁長官奨励賞」(4年)などを受賞され、いってみれば舗装工事のベンチャー企業というわけですね。

椿森-- 取得した知的所有権は特許、実用新案等合わせてざっと100件を数えます。知的所有権は大手だから有利、中小企業だから不利ということは全くありません。唯一、対等に戦える場だと思います。ですから知的所有権戦略をベースに技術提携実施契約を結び、施工技術およびノウハウを提供することによって開発した工法を普及させるのが私どもの目的です。

―全国エポ工法協会を組織されたのもその一環ですか。

椿森-- エポ工法は平成元年に建設大臣の認定機関である(社)日本建設機械化協会の技術審査認定を受け、それを機に協会を設立しました。現在、各地の上場企業を含め約30社に加入いただいていますが、さらに入会希望も30社ほどあります。協会行事として1.総会2.営業技術連絡会議および3.下水道展出展で、新しい技術や工事の効率化、工事コストの低減化を検討したり、展示会など各種イベントに参加して工法の開発と普及を図っています。海外については韓国にも技術移転をし、ソウル市の指定工法になっています。

“時代の流れ”を読みとる

―マンホールの維持補修の市場性をどのようにみておられますか。

椿森 -- 全国のマンホールの数は上下水道やNTT、電力・ガスなどを含めると約1000万カ所にのぼります。マンホールの耐用年数を20年とすると、毎年その5%程度、50万カ所で補修が必要になってくる。単純に1カ所当たり約30万円かかるとすれば、1500億円規模の市場になります。

―ちょっと視点を変えるだけで一大市場に成長する可能性を秘めているわけですね。

椿森--建設省では平成8年度からスタートする第8次下水道整備5カ年計画で、25兆の予算をかけて現在の普及率約50%から70%をめざしています。同時に価格競争偏重の公共工事の入札制度を改め、企業の技術力を点数で評価する新しい手法を導入する予定と聞いています。これによって技術開発競争を促し、民間企業が開発した新技術を積極的にとり入れることになれば、エポ工法にとってはまさにあけぼの、時代はフォローの風が吹き始めたと意を強くしているところです。

―この景気低迷を一つの時代の終わりととらえ、ベンチャー企業待望の声も高まっていますね。

椿森--たとえ小さな企業でも専門特化した技術を開発、商品化し、独自のマーケットを創造することが、研究開発型企業たるゆえんだと思います。公共工事はこれまで役所がすべて仕様を決め、その指示どおり施行するのがいい業者とされてきました。こうした長年の慣習から受け身の体質がしみついて、民間の知恵がなかなか生かせない世界でした。でも、これから時代は確実に変わっていきますよ。


DATA

全国エポ工法協会本部  (株)エポ
住所
TEL
FAX
代表者
京都市山科区勧修寺南大日町1―1
075-573-8901
075-573-7910
椿森 信一



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