MONTHLY JOHO KYOTO
1995 NOVEMBER NO.241
MONTHLY JOHO KYOTO MEDIA STATION



歴史を受け継ぎ、
技術と若さで会社の
明日をつくる
株式会社キムラ
社長/木村良樹氏に聞く




CI導入を転機として


−−今年7月、長年親しまれてきた「木村組」から社名を「キムラ」へ。企業の思いを込めてシンボルマークも一新されましたね。

“この不景気なときになぜ?”ともいわれましたが、CIの実施は社長就任(平成2年)以来の懸案でした。過去からの延長では方向性が見えない時代だからこそ、個性ある企業として存続していかなければならないと考えたからです。
創業78年になりますが、社歴が古いということはそれなりに古い体質やしがらみもある。そこで社員には、自分たちで全く新しい会社をつくるんだという気構えでCIに取り組んでほしい、と。各年代からCI委員6名を選び、皆で話し合いながら取り組みました。社名についても自由な発想でということにしていたのですが、やはりこれまでの「木村組」の看板は大事にしようということに。

−−新人の採用にも力を入れておられると聞きましたが。

土木工事関連は若者の集まりにくい3K職種(きつい・きたない・危険)といわれていますが、当社の仕事は施工管理がメインです。たとえばドイツでは、若者が喜んでこの世界で働いているそうです。一つの現場を任されたら、自分の裁量で協力会社の専門技術者と一緒に、思い描いたプランを実現するために工事を進める。やりがいがあって能力が生かせる仕事です。
工業高校などに「わが社は技術者集団で少数精鋭主義で、技術者として一人前にします」とお願いして協力をいただき、現在、社員約40名のうち30歳以下の社員が15名います。

−−技術者集団の中身は?

木村 なんといっても技術が命の会社ですから、社員の8割が技術系です。とくに若い社員には本人のためにも資格の取得を勧めており、1級土木施工管理士が10名、2級は10名います。


伝統の安全パトロール


−−業種柄、公共工事が主体になりますか。

土木の特徴でもあるのですが、90%以上が官公庁からの請負事業になります。

−−不況対策の予算がこの分野に注がれるので、実績は安定?

とんでもありません。このような時勢には民間工事の専門業者も公共工事に参入してきているので、それだけ競争が厳しくなっています。

−−本社を置く田辺町は関西学研都市の一角。“恩恵”はありますか。

楽しみにしているのですが、いまだ“学研効果”のほうは…。ビッグプロジェクトだけに大型工事が主体ですから、地元にはなかなか仕事が回ってこないのが実情です。

−−得意とする分野は? 工事も以前と比べて変わってきましたか。

それが得意というわけではありませんが、社会資本の充実ということで最近は下水道工事が多いですね。地盤が軟弱な場合にはシールド工法、シールドと呼ばれる鋼製の円筒保護枠を使ってトンネルをつくるので、大手ゼネコンとのジョイントで工事を進めています。また、舗装はほとんどアスファルトだったのですが、このごろは水はけのいいタイル状のものを使ったり、リサイクルということから廃材を再利用するケースが増えてきました。
工事は下水道、舗装、河川、橋梁、鉄道とさまざまですが、いうまでもなく安全が第一。私を含めて幹部6名で体制を組んで毎月、各現場へ安全パトロールに出向いて万全を期しています。これは当社の創業以来の伝統です。


初めに本業の革新ありき


−−これからの事業展開についてはどのように考えておられますか。

いま企業の大小を問わず、新規に何かを手がけようと模索している企業は皆無といっても過言ではないでしょう。経営多角化の時代といわれ、それも必要なことかもしれませんが、まず本業をはずさず、経営基盤を確固としたものにすることが大事だと思っています。土木事業は地域社会の発展に不可欠なものですし、代々そうした信念に基づいて今日までやってきました。当社も建築事業を手がけ始めてはいますが、本業の幹をもっと大きく、太くすることこそが次のステップである多角化を進めるためのファンダメンタルであると考えています。

−−多角化といっても何が時代にマッチしているのか、その判断が難しいところですね。

極端な例でいうと、バブル最盛期には財テクをやっていなければバカ呼ばわりされましたが、いまとなっては手を出さなくてよかったというように、先が読めない時代です。経営のスタンスとしては堅実に、しかも本業のなかで独自性を出していく。他に力を分散すると、本業までも悪くなりかねません。ここは改めて会社の役割や、仕事のスタンスを再確認する時期だと思います。

−−それを支える経営資源、なかでも人を育てるということが大きなポイントになりますね。

そのために風通しのよい社風や社内の活性化を心がけ、明日のキムラを担ってもらえる社員が育つよう教育・処遇の整備も進めています。社員の気持ちを尊重することが社業の発展にも寄与することにもなるのですから。その意味でもCIの導入はよかったと思っています。かつて私自身、同業他者で“他人の飯”を何年か経験して大変勉強になりましたが、若手社員にも入社して本当によかったといわれるような企業で常にありたいですね。


DATA

株式会社キムラ
住所
TEL
FAX
代表者
京都府綴喜郡田辺町田辺西垣内54
0774-63-5331
0774-63-5724
木村良樹