MONTHLY JOHO KYOTO
1995 NOVEMBER NO.241
MONTHLY JOHO KYOTO MEDIA STATION



拡大し多様化する展示会
その狙いと成果は?
景気に先行き不安が依然強く、消費ムードは暗い。その一方で、見本市・展示会の市場規模が拡大してきている。昨今はたんなる製品紹介にとどまらず、セミナーなどとの併催による情報交流の場ともなり、企業と顧客を結ぶ双方向コミュニケーションとしての価値認識も広まりつつあるようだ。
先頃、2年に1度の自動車業界のビッグイベント、「東京モーターショー」が千葉市の幕張メッセで開かれ、13日間の期間中に152万人の入場者でにぎわった。今回は未来カーなど夢のある出品が少なく、入場者は前回の93年に比べ1日当たり3500人減少したが、販売面では需要に直結する新型車の展示に力点を置いたこともあって、モーターショー効果が出たという。今年7月以降、前年同月比1%以下の低い伸びで推移していた新車販売台が、10月はショー開催の前ぶれから6%増、11月以降も好調が見込まれている。
旧聞に属するが、89年にその幕張メッセがオープンしたとき、東京・晴海の国際見本市会場の使用率が下がると見る向きも少なくなかった。しかしフタを開けて見ると、幕張に会場を移した展示会の代わりに他の展示会が入ってきて、晴海の使用率は以前と変わらず、盆や正月を除けばほぼ満杯状態が続いている。


マス媒体に並ぶ販促ツールに

景気の足踏み状態が続くなかで、かつてほど見本市・展示会の派手な開催が目立たなくなった。ところが現実にはさまざまなところで販促イベントが催され、日常化した販売の方法になってきている。通産省調査では、広告業界が取り扱った「SP(セールスプロモーション)・PRを含む催事企画」の92年の売上高は広告業全体の13.8%にあたる9388億円。その3年前、バブル最盛期の89年に比べ23.8%増でその間、新聞・テレビなどマスコミ媒体関連の売上高がそれほど伸びなかったことを考えると突出ぶりが目立つ。催事企画は、広告会社にとってもマス媒体に並ぶ重要な収益源になりつつあるといえる。 もともと商談を中心に始まった展示会は、昔から日本に定着していた。例えば老舗の呉服業界。全体で2兆円市場といわれるが、「売り上げのうち大手で3分の1、中小なら半分程度は展示会で売り上げている」(在阪の販売コンサルタント)。販促予算が売上高の4〜5%、そのうち約半数が展示会費用に充てられているという。
質がよくて安いモノをつくれば必ず売れるという、企業の確信が揺らぎ始めている。「価格破壊」で物価の低下が広がり、いくら商品に差があっても、30%以上の価格差があれば競合商品に負けるともいわれる。今日、ヒット商品の条件は「高・低・差」−つまり質が高く、価格は低く、しかも何か新しい機能を加えた差別化された商品しか受けないのだそうだ。
しかし、そもそも商品価値とは、買い手にとって値打ちがあるものとしてとらえられて初めて真価を発揮するのであり、値打ちが伝えられない商品は買い手の選択肢に残れない。その値打ちを伝える効果的なツールとして欠かせないのが販促イベントである。


展示会のメリットを知る

見本市・展示会の開催は、売り手企業にとっても、買い手企業(もしくは消費者)にとっても、また業界全体からみてもメリットは大きい。
売り手企業は、全国各位の企業を営業に回らなくても会場に出展して買い手企業が集まってくるのを持てば、労せずして多数の企業と商談でき、買い手企業の反応からニーズを知ることができる。一方の買い手企業は、展示会場に行さえすれば各企業の製品を見比べることができ、簡単に比較購買することができる。そして見本市などの公共展に多くの売り手企業が出展すると、企業同士がお互いに刺激し合うので、業界全体のレベルを高めることにもつながる。
また、こうしたイベントを通して顧客との交流、ネットワークづくりとしての効果も見逃せない。来場者とのダイレクトなコミュニケーションは、新聞・テレビなど一方向型メディアにない特徴だ。
それでは、伸び続けている見本市・展示会の市場規模はどれぐらいだろうか。一口に展示会といっても、内容・形態や規模もさまざまだ。(社)日本イベント産業振興協会の試算によると、いわゆる公共展に限定しただけでも主催者事業費と出展者費用の総額は年間約5800億円。このなかには家具、中古車の展示即売会や、各企業が独自で実施している単独展示会(プライベートショー)、一部の小規模の開催例は含まれていない。
出品された製品を分野別にみると、消費材が生産材を大きく上回っており、消費財分野では、ファッション、スポーツ・レジャー用品を扱う「趣味・レジャー」関連製品、生産材分野では「エネルギー・環境保全機器」「OA・コンピュータ」関連機器が上位を占めている。


PR型から交流型へ

展示施設についても、民活法などの後押しによって年々充実してきている。93年春、関西文化学術研究都市の中心部、精華・西木津地区に都市全体の核となる研究交流施設「けいはんなプラザ」がオープン、住友グループから施設内にイベントスペース「住友ホール」が寄贈された。メインホール、イベントホール(2室)、会議室(7室)から構成され、開業2年目の94年度の利用件数は1340件。学研都市のコア施設だけに学術会議や研究会がさすがに多いが、展示会利用も109件を数え、交通の便のハンデを考えるとそこそこの使用率といえる。
一般の展示会との違いは「最先端のマルチメディア技術の成果をアピールしたテレコムフェアや、学会の開催とドッキングした医療機器展など情報交流の場にもなっていることが多い」(岡本圭二・(株)けいはんなリエゾンオフィサー室課長)という。
近年、見本市など公共展示会は企業のイメージPRの場となっているケースが目立つが、けいはんなプラザのように情報交流の機能を併せ持ったものも増えている。たとえば、日本の公共展がどちらかといえば横並びで、他社との競合を意識しているのに対し、米国では最新の機器展示を見て回る一方で、セミナー・シンポジウムなどにも参加し、夜はパーティーを開いて人的交流を図る。いってみれば、業界の親睦会の延長線上にあるわけで、お互いの“手の内”を見せ合うことで共通のビジネスチャンスを探すことを目的にしているのが特徴とされている。
こうしたニーズは日本でも高まるものとみられ、今後増えていくかもしれない。


結局は顧客管理力が決め手

「本来、日本人はお祭り好き。展示会をはじめとするイベントを現代の祭りと考えれば、やり方次第で無限の可能性がある」(大手広告代理店プロデューサー)という。販促と宣伝のためのイベントはあたかも時代の主役になるかのようだが、これに携わる関係者が心しておかなければならないのは、「展示会はあくまで手段であり、主役は顧客である」ということだ。最近は、イベントのためのイベントも少なくなく、たとえイベントが盛況であっても、宣伝が有名になっても、肝心の製品が売れなければ何の意味もない。 かつては展示会そのものの魅力で集客力があり、一定の売り上げが即決で確保できたが、いまではその後の十分な詰め、アフターフォローによって正否が決まる、といった形に変わりつつある。展示会を生かすも潰すも、結局は顧客管理の力というわけだ。
一度出展したら、なかなかやめられないのが展示会だといわれる。(社)日本イベント産業振興協会の調査では、展示会の1件当たりの事業費は500〜1000万円が最も多く全体の26%、次いで1500万円以上が22%を占めている。予算を組む前に、出展費用に見合った効果をどう生み出すか丹念に検討する必要があろう。


販促イベントを成功させるために

  1. 来場しそうな顧客を予測する
  2. そのうえで出展テーマ(開催テーマ)を設定し、PR活動を強化する
  3. 来場者への配布資料を整備する
  4. 望ましい顧客の集客に注力する(説明者を教育訓練し、効果的な実演を企画する)
  5. 集客のためのイベントを企画する(従来の垂れ幕、模擬店といった派手なものから、最近はモニタリングなど体験を通じた実務的なものへ)
  6. 会場での反応からフォローすべき顧客を特定化する
  7. 毎日、1日の活動が終わった後、担当者が集まって検討し、翌日の対策を立てる


京阪神の主な展示・イベント施設(ホテルを除く)

京都
国立京都国際会館(京都市左京区)
京都府総合見本市会館(京都市伏見区)<パルスプラザ>
京都市勧業館(京都市左京区)
京都産業会館(京都市下京区)
けいはんなプラザ(京都府相楽郡精華町)

大阪
インテックス大阪(大阪市住之江区)
アジア太平洋トレードセンター(同)<ATC>
マイドームおおさか(大阪市中央区)
大阪マーチャンダイズ・マート(同)<OMM>
国際見本市会館(同)
大阪会館本館ホール(同)
大阪国際貿易センター(大阪市北区)
新大阪センイシティー(大阪市淀川区)

神戸
神戸国際展示場(神戸市中央区)
神戸ポートアイランドホール(同)<ワールド記念ホール>
産業貿易展示館(同)<サンボーホール>

見本市・展示会の出展分野(%)
先端技術・工業全般6.7
機械10.2
機器17.4
OA8.1
総合・観光・物産8.3
住関連13.0 
食関連5.1
自動車関連4.9
趣味・レジャー26.3
生産財42.4
消費財57.6

(社)日本イベント産業振興協会『イベント白書'93』


単独展示会(プライベートショー)の開催場所(%)
専門展示場24.3
多目的ホール16.5
ホテル34.8
その他(社内、取引先、屋外広場など)24.4

日本プロジェクト産業協議会のアンケート調査