MONTHLY JOHO KYOTO
ユーザーの視点に立ち 「ミックスサイジング」 をめざす 星和情報システム(株) 社長 荒木 武彦氏に聞く 自分たちの手でシステム構築 −−道路表示装置メーカーで知られる星和電機(株)のグループ会社として設立されたきっかけは? 社内における仕事の多様化や専門化に伴い、5年ほど前からオフコンを中心とした情報のプログラミングに限界を感じ始めたのです。たとえば社員100人の会社なら、入力は10人程度の要員で済みます。ところが出力する人間は100人いる。ということは、100人のニーズに応えなければならず、そのシステムをつくるには従来のオフコンでは不可能なんです。 会社側でもコストをあまりかけない情報のオープン化に乗り出すことになりました。それならメーカーにすべてを任せるのではなく、さまざまなシステムを統合し、どうすれば安くて、しかもメンテナンスしやすいか、自分たちで構築しようと今年4月に設立しました。 −−いってみれば企業内ベンチャーというわけですね。 当初から別法人という発想はなかったのですが、事業化を提案したところ、会社がそれまでオープンシステムについてアウトソーシングしていた部分を我々が別法人として一手に引き受けることになりました。そのほか京都の中小メーカーをユーザーとして情報化のコンサルティングなどを手がけています。 さまざまな利点を生かす −−システム構築のうえで他社との違いは? いわゆるマルチベンダー環境を生かして情報資源の有効利用を図る、ということです。従って、我々は特定のベンダーの商品で全部固めるということはしません。これまでは何かシステムを構築しようとすると、メーカーにお伺いを立てなければなりませんでした。それでは企業にとって大きな資源である情報が自由に加工できません。それを防ぐためにオープン化をめざしているわけですけど、特定のメーカーに依存するとまた同じことの繰り返しになってしまいます。 そこで基幹の光ファイバーはメーカーにお願いしますが、ネットワーク化は我々が自力でやる。機器やソフトについても、従来使用してきたものをムダにすることなく、適材適所に設置して有効に活用していく。それを我々の造語で「ミックスサイジング」と呼んでいます。もっとも、メーカー側からは嫌われることですけど…。 −−しかしユーザー側の立場に立てば、自分たちの自由にならないシステムというのは道具として使えませんね。 たとえばメーカーサイドでは、既存のシステムをすべて捨てて新しいシステムを構築しなさい、という。 本当に既存のシステムを捨てて、また一から新しいシステムをつくることが果たしてベストな選択なのかどうか。何千万円も投資して導入した機器をポイと捨てるわけにはいきません。ミックスサイジングというのは、従来の利点はそのまま生かして、事業規模、あるいは状況に合った形で新しいものを組み合わせて相互運用性の確保を図っていこう、というのがねらいです。 報・連・相は電子メールで −−ユーザーに対しては具体的」にどのようなことを提案しているのですか。 一つは、複数の事業所を持つ企業にはWAN(ワイド・エリア・ネットワーク)の必要性を説いています。1カ所の事業所で情報化を進めても、他の事業所との間で意思疎通が図れないと情報システムとしては“片肺”になってしまいます。複数の事業所間をWANでつなぎ、同じ情報を即時に得られる環境をつくることが大事です。そうしてこそ企業としての一体感も生まれてくるのではないでしょうか。インターネットも広い意味でのWANといえるでしょう。 もう一つはサテライトオフィスの設置、つまり在宅勤務です。これからは夜遅くまで会社にいることが評価のモノサシにはなりません。時間にとらわれず家でできる仕事は家でする、という時代が近い将来やてきます。 −−時代を先取りして各社員の自宅にはISDNが敷かれ、端末コンピュータが置かれているとか。 私も含めて6人全員の自宅に設置して、インターネットにもアクセスできるようになっています。そして毎日の業務報告や連絡、相談はすべて電子メールでやりとりしています。電話は相手の時間を拘束してしまうことになるし、時間帯にも気を遣わなくてはなりません。電子メールなら相手が出かけていようが、いつでも送ることができます。しかし、プロジェクトなどの最終打ち合わせはやはりフェース・ツー・フェースでやる、そのへんは使い分けています。 地域に貢献できる企業として −−今後のビジョンをどのように描いておられますか。 子会社として甘んじるのではなく、独立して十分やっていけるだけの企業としての力をつけないといけません。それと企業というのは自分たちだけでやっていけるものではない。地域の方々に可愛がっていただかなければなりません。 実は設立するとき、東京でスタートするか京都でやるか、随分悩みました。市場が広い東京なら京都の10倍くらい仕事が見込める。企業としては確かにラクです。けれども、星和電機は京都の地で上場企業にまで育てていただきました。こんどは培ってきたノウハウを地域に還元する番ではないか、と。地域に根ざし、情報システムを通して地元に貢献できる企業でありたいと念じています。 −−研修員を受け入れておられるのもその一環ですか。 1年間お預かりして、データベースの構築からシステムの管理手法までマスターしてもらうことにしています。裏を返せばノウハウを提供するのですから今後、派遣企業からは注文はこなくなることになるのですけど…(笑)。でも、それで企業の情報化が進んでいけば、我々としては一つの目的に達したと考えています。 DATA
|