MONTHLY JOHO KYOTO
1995 SEPTEMBER NO.239
MONTHLY JOHO KYOTO MEDIA STATION



リスクマネジメントとは
制約要因を
ミニマム化すること
(株)アール・エム・アイ
取締役研究所長 井上 喬氏に聞く




人材から人脳の時代へ


−−社名の由来からお聞かせください。

リスクマネジメント(Risk Management)・インスティチュート(Institute)の頭文字を並べるとRMI、直訳すれば危機管理研究所というわけです。平成5年6月に設立されました。

−−どういうきっかけから設立にかかわることに?

義兄が経営する重電メーカーに長年いて、そこでTOPの業務以外はあらたかやりました。在社中、人材派遣スタッフを受け入れていたのですが、京都府の異業種交流会「平成クロスの会」でその人材派遣会社の社長とたまたま出会い、親しくお付き合いさせていただいておりました。65歳になったので会社におひまを頂戴したところ、当の社長から「経営コンサルタント会社をつくるのでちょっと手伝ってくれ」と。  昔、労働力のことを人足と呼んでいました。人間の評価は足だったのです。それが足から手、つまり人手になり、いまでは人材といわれていますが、これからは「人脳」の時代になるでしょう。だからコンサルテーションビジネスが重視されるのではないかと考え、メンバーに加わりました。

−−リスクマネジメントといえば最近のはやり言葉になっていますが、その中身というか、目的は?

私どもが唱えているのは“企業にとっての「危機管理」とは、あらゆる事業活動に対する制約要因を管理しミニマム化する経営活動である”ということです。


見落としてはならない輸送・規格・情報


−−今日、企業を取り巻くリスクとはどこからどこまで?

 企業にとって、まだ記憶に生々しい阪神大震災など災害だけがリスクのすべてではありません。従来のヒト・モノ・カネといった経営資源のサイドと生(製)・販・技の両面で考える必要があります。たとえば物流の問題でも、近年、アジア諸国の経済発展で環太平洋航路の船が増え、それに伴って狭いパナマ運河を通らなくてもよくなり、大型コンテナ船が航海するようになりました。これからは接岸には最低15m以上の水深が必要ですが、それをクリアしている日本の主要港はありません。このため釜山、上海経由の輸出入が増えているといわれています。
空港についても、関西国際空港が開港したものの、経済大国として世界にようやく顔向けができる条件が整ったという段階にすぎません。韓国や香港で国際ハブ(拠点)空港の整備が着々と進んでおり、乗り継ぎの利便性を考えないと関西国際空港は、アジアの東の端にある空港ということになってしまいかねません。

−−また社会的な制約要因として、環境問題やPL(製造物責任)も問われるようになりましたね。

環境問題については国際的な流れとして「環境監査制度」があります。環境監査とは、通常の公害対策だけでなく、原料の購入から生産、販売にわたる企業活動全般について環境への影響をチェックすることをいいますが、これを推進するためISO(国際標準化機構)では国際環境規格「ISO14000」を定め、来年の発効をめざしています。このように今後、国際的枠組みのなかでビジネスを展開していくためには、こうしたハードルを乗り越えていく必要があります。

−−そして今日では情報戦争という側面も見逃せませんね。

例えば世界共通の新しいビジネスシステムといわれる「CALS◇キャルス◇」への関心が高まってきました。ところが、CALSにおける情報の電子化の部分のみ注目され本来の「知的資源の共有化」への関心が乏しいように思われます。CALSをかつて流行したしSIS(戦略情報システム)と同じくコンピュータシステムの一環としてとらえているのではないでしょうか。
 輸送問題やISOなどの規格、それに情報・通信の問題、これらの3項目は絶対見落としてははなりません。


いま経営に求められているものとは


−−セミナーなどで話をされて反応はいかがですか。既存のコンサルタント会社との違いは何でしょうか。

いまのところ経営者の方に「なんとなくわかる」とうなずいていただいている段階だと思います。コンピュータを導入してもうまくいかないのはなぜか、結局はマネジメントの問題なんです。インターネットもCALSもいってみればマネジメントのためのツールにすぎません。
たとえばPLの問題は通常、法律の説明とか保険に入りなさいという落とし込みが多いようです。もし、保険に入って問題が解決するのであれば、私どももそう勧めます。しかし、親の代からクレーム一つないのでしたら何もビックリすることはない。この際、品質管理の方法も再度チェックしておきなさい、と申し上げています。すべてマネジメントという視点から物事を見るべきです。

−−「慢性不況」といわれるいまの時代をどう見ていますか。

「ナカハ ムラタ デスカ」というCMが流れています。ブランドより中身が問題というわけです。売り上げが落ちたのは本当に景気の影響だけなのか、はたして他社にないものを持っているのかどうかが今日ほど問われている時代はありません。今、注目の「コア・コンピタス経営」とはまさにこのことです。

−−これからの企業経営のカジ取りについてアドバイスを。

相変わらずのイチロー人気ですが、野球解説者の話では、彼はストライクだけを打つ練習をしていたのではなく、どんな球でも打てる練習をし、そのなかからストライクを選んで打つようになったそうです。つまり、もう一つ外の領域まで目を広げ、社会経済の大きな流れをつかんでください。といつも申し上げています。


DATA

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井上 喬