MONTHLY JOHO KYOTO
1995 SEPTEMBER NO.239
MONTHLY JOHO KYOTO MEDIA STATION


ACT21 委員会報告
21世紀に向けた
(財)京都産業情報センター事業計画
“(略称)ACT21 ”の策定について

21世紀を目前に控えた今、新しい課題を検討に加えて21世紀における(財)京都産業情報センターのありかたを展望し、20周年をひとつのめやすとした事業計画「21世紀に向けた京都産業情報センター事業計画“ACT21 ”」を策定しようとする、ACT21 (アクト21)委員会は、本年1月18日に立石 孝雄理事長より石田 隆一委員長((株)イシダ代表取締役)に「21世紀に向けた京都産業情報センターの指針と、その事業の在りかたについて」の諮問がおこなわれ開催され、合計4回の委員会を開催し、この程、「ACT21 委員会報告書」を作成し、平成7年8月31日(木)には、立石 孝雄理事長より荒巻 禎一京都府知事に報告がなされました。


ACT21 委員会報告書から 平成7年7月17日


第1章
計画策定の目的

(財)京都産業情報センターでは、設立15周年(平成5年12月を前にして、平成3年に「京都産業情報センター委員会」を設置し、同年10月7日、「(財)京都産業情報センター設立15周年及び20周年に向けた事業計画」を策定した。
当センターでは、この報告書に示された基本理念を着実に具体化し各種新規事業をとりおこなって設立15周年を記念するとともに、急激に変化する経済環境に的確に対応し、京都府、京都市の重要施策のひとつである地域経済活性化の一翼を担ってきた。
20周年を展望して示されたこの基本理念は現在もなお有効なものであるが、当センターの主要な事業分野である情報化分野において、マルチメディア化の急激な進展、インターネットの急速な普及などの環境変化が起こりつつあるとともに、国の施策によって、いままでのセンターの枠を超える各種の情報提供、相談指導などの新たな事業分野が加わるなど、新しい課題も生まれてきている。
ついては、21世紀を目前に控えた今、これらの新しい課題を検討に加えて、21世紀における産業情報センターのあり方を展望し、20周年をひとつの目安とした事業計画「21世紀に向けた京都産業情報センター事業計画“(略称)ACT21 ”を策定しようとするものである。


第2章
(財)京都産業情報センターの
進んできた方向とその評価

1.寄附行為 第3条(目的)〔昭和53年〕

この法人は、科学技術等に関する内外情報を機能的かつ効率的に創出・提 供することにより、京都における近代工業の経営基盤を強化し、もって中小ことを目的とする。

2.京都産業情報センター委員会報告書 第1章 総論〔平成3年〕

当センターにおいては、昭和62年5月に設立10周年を前にして、10年間の歴史、会員のニーズ及び産業界の動向を踏まえ、21世紀にむけてのセンターのビジョン「中・長期計画−21世紀に向かうセンターの新たな確立をめざして」を策定したところである。
このビジョンにおいては、21世紀に向かう潮流とそれに対応する当センターの機能を次のようにとらえている。  

1 情報化の進展…多様化する企業ニーズへの対応
2 国際化の進展…厳しい国際環境への対応
3 成熟化の進展…変化する価値観への対応

現在においてもこれらの潮流は続いており、従って、当センターに要請されている基本的機能について、当時と比べ基本的な変化はないと考えられる。
しかし、今後、これらのトレンドが全般にわたり進展の速度を増していくことは確実であり、それらの一層機敏に対応することが京都産業の発展のための必須の要件となってきている。
これらのことから、本委員会は、当センターにおいて、次の3つの機能の更 なる充実を図ることが適切と考える。
(1)最新・最先端の産業・技術情報の提供機能の充実
 -特に、提供される情報の質的向上
(2)全国企業及び地場産業を含めた京都産業における産業・技術情報の交換機能の充実
 -特に、情報交換の質的・量的拡大
(3)京都府域全体に対する産業・技術情報の提供機能の充実
 -特に、情報提供地域の拡大

3.現事業の進捗状況とその評価

(1)京都産業情報センター委員会において示された最新・最先端の産業・技術情報の提供機能の充実
 -特に、提供される情報の質的向上
(2)全国企業及び地場産業を含めた京都産業における産業・技術情報の交換機能の充実
 -特に、情報交換の質的・面的拡大
(3)京都府域全体に対する産業・技術情報の提供機能の充実
 -特に、情報提供地域の拡大
の3つの機能充実を図るよう、以下の事業を推進している。

A 地域データベースネットワーク整備事業
B 情報提供、情報創出事業
C 商店街情報化支援事業
D 小売商業支援センター事業
E 教育研修事業
F システム開発支援事業
G 会員交流事業
H 異業種交流推進事業
I エネルギー使用合理化設備導入促進事業
J 中小企業エネルギー環境対応情報提供事業
次に、事務局で各事業の評価を行ったところ次表のとおりであった。ここ数年、特に平成6年度からスタートした事業は、現時点では十分な評価を得るところまではいっていないものもあるが、今後充実していく方向及びますます充実する方向にある事業がほとんどを占めている。 このことから、情報センター委員会報告書で示された3つの機能充実を今後も追求すること。また、現在実施中の事業項目においては、事業実施方法の改善・改良が課題となっている。さらに、国庫補助事業のウェイト急増に伴う業務処理能力の強化が課題になっている。



第3章
(財)京都産業情報センターを
取り巻く現状と課題

近年の円高等を背景とした国際的な水平分業の進展や産業活動のグローバル化、産業のソフト化の流れや情報化の急速な進展は、京都産業が基幹とする機械金属・繊維など広範な産業の海外進出の動きを加速し、京都産業の構造変革や空洞化を進展させる強い圧力となりつつある。
こうした状況の中で、京都産業の情報化等を支援する(財)京都産業情報センターの果たすべき役割はますます高まっており、今後、以下の点の克服が課題としてあげられる。
(1)情報化の進展によって生み出されるマルチメディア技術の高度化の急速な進展及び府内全域に対する情報サービス網拡充に対する対応力の強化
(2)京都産業の構造変革の中で、国際化の進展に積極的に対応し、京都が世界に開かれた産業の交流拠点としての情報面からの環境整備の促進
(3)京都産業の活性化を図るため、独創的な技術やアイデアを駆使して、新たな市場や産業領域を切り開こうとするベンチャー企業の育成やニュービジネスの創出等に対する情報面からの支援



第4章
21世紀に向けた
事業展開の基本方針

1.「情報」に関する基本的な考え方

私たちは、「産業情報」を「それぞれのヒト」や「それぞれの組織」が持つ「貴重な社会資源」だと考えている。
このため、(財)京都産業情報センターは「ヒトとヒト、組織と組織を交流させる」ことにより、社会の進歩や企業の発展(事業推進と収益の向上)に不可欠な「情報資源をトレード」させようと努力している。

2.事業展開の基本方針

マルチメディア時代を迎えるにあたり、(財)京都産業情報センターは京都産業が高度情報化に迅速に対応できるよう支援する。このため、次の4点について、重点的に取り組む。
☆ マルチメディア対応を考えた京都産業の情報化の推進とグローバル化
☆ 府全域への情報提供と情報化レベルにマッチした提供手段の確立
☆ 中小企業のニーズにマッチした魅力ある情報の創出・提供・交流
☆ 産業情報資源の交換機能の充実
これらの重点課題を解決することにより、(財)京都産業情報センターは、情報面から京都産業を支援するセンターとしての地位を確立する。
また、事業の推進軸を支える京都情報産業の振興にも寄与することが可能となる。
3.事業展開の方向

(財)京都産業情報センターは、京都の情報基地として機能するとともに、その事業は次のような方向に展開する。
● 推進軸の方向--情報ネットワーク
● 情報を交流させる方向--ヒューマンネットワーク
● 情報を耕す方向--相談ネットワーク
● 情報を発信する方向--グローバルネットワーク

第5章
平成7年度
事業及び数年内に
スタート可能な主要な事業

1.情報ネットワークに関する主な事業

(1)首都圏、関西圏に立地する関係機関とのネットワークの強化
(2)KYONET、DL京都のインターネット接続
KYONET、DL京都からインターネットが利用できるよう整備を進める。
(3)KYONET、DL京都の本格的展開
京都府内全域の個人企業を対象にKYONETとDL京都の利用拡大を進める。
(4)中小企業情報検索システム(SMIRS )新規展開
中小企業庁が計画しているSMIRS のダウンサイジングと歩調を合わせて、ネットワークの新規展開を図る。
(5)企業の売ります 買います情報、新技術情報、人材情報などの交換機能の充実を図り、これらのインターネット化を目指す。
(6)FAX 通信等の充実
中小企業の情報化レベルにマッチした多様な情報ツールを充実させる。
(7)商店街POS 高度化
商店街クレジットカード一括処理システムの高度化を図る。

2.ヒューマンネットワークに関する主な事業

(1)会員交流事業の充実
   様々なタイプの会員制度を創設し、会員の拡大を図る。
(2)異業種交流の一層の発展
   商業者と製造業による異業種交流会の組織化や、プログラムを持った異業種経営    者研修(「塾」)など、異業種交流の深耕を図る。

3.相談に関する主な事業

(1)指導員体制の整備
   登録指導員制度の創設など、情報サービス、省エネルギー、生産・工場管理、商店経営、建築、税、法律など、様々な専門家を活用できる体制を整備し、巡回相談を行う。
(2)消費ニーズ、商品情報等の把握
   消費モニター制度や専門家の協力体制を整備し、消費者情報、新製品情報、海外製品情報などの情報を把握し、小売商店や製品開発企業に提供できる体制を整備する。
(3)RITE(地球環境産業技術研究機構)等、研究機関との連携模索関西文化学術研究都市などに立地する最先端の研究機関(RITE等)との研交流や共同研究などを模索し、情報交換を活発にする事業を行う。
(4)京都府内に立地する関係機関との連携強化
   京都商工会議所、京都府中小企業振興公社、京都工業会、京都府中小企業団体中央会、京都府商工会連合会、京都高度技術研究所、京都発明協会など、関係機関との連携を強化する。

4.グローバル化に関する主な事業

(1)インターネットを利用した京都企業の「広告塔」(インターネット放送局)を、京都インターネット利用研究会の活動と連携させて運営する。
(2)海外情報の交換機能の充実
   JETRO (日本貿易振興会)、ATC (アジアトレードセンター)、舞鶴港FAZ(輸入促進地域)事業推進協議会などとの連携を強化し、海外情報の交換機能を充実する。
(3)海外視察団の定期派遣
   海外視察団の派遣を定例化し、ビジネスヒントや国際化の糸口をつかむ。

5.その他事業

(1)CD-ROMを利用した京都企業の情報発信
   CD-ROMの編集委員会を組織する。
(2)映像図書館の充実
   ライブラリーについては、ビデオ、CD-ROM等映像系の資料を重点に整備する。
(3)機関誌等の充実
   内容の充実はもちろん、発行部数の拡大に取り組み、配付システムを確立する。また、パソコン通信やFAX など他のメディアとの連携も追求する。
(4)あて名データベースの整備
   情報センター自身の「顧客名簿」を整備し、機関誌、FAX 、パソコン通信などと組み合わせて、情報提供の最適化を図る。



第6章
21世紀までに
立ち上げたい事業

1.情報ネットワークに関する主な事業

(1)京都縦貫情報幹線の建設
   京都府内の情報交流を促進し、府内どこからでも世界に情報発信できるよう、京都府を縦貫する情報基盤ネットワークを建設し、インターネットなどの情報サービスを利用できる環境を整備する。
(2)高度情報通信システムの広域実験
   関西文化学術研究都市で行われている広帯域ISDNの実験を、関係機関の協力を得て、京都市域、さらに京都府北部まで拡大するなど、高度な情報通信システムの実験を行う。
2.相談に関する主な事業

(1)北部・南部支所の開設
   京都府北部・南部に立地する製造業、商業等の企業ニーズに応えるとともに、北部にあっては舞鶴港整備に伴う物流の発展等に対応した新たな情報ニーズ、南部にあっては関西文化学術研究都市との交流強化などをねらいとして、北部・南部に支所を開設する。

3.ヒューマンネットワークに関する主な事業

(1)後継者を対象にした新たな交流事業の開催
   成功した企業の専門家などの知識や経験を系統だてた交流の場を設けるなど、新たな交流事業(異業種交流事業)を開催する。

4.グローバル化に関する事業

(1)国際的産業情報の収集・提供事業の実施
   企業の海外進出及び輸出入にとどまらず、産業技術の開発分野におけるグローバルな情報ニーズに対応するため、国際的産業情報を収集・提供する。
(2)国際産業情報シンポジウムの開催
   グローバルな視点から産業情報を捉え、京都産業の今後の発展性を探る国際シンポジウムを開催する。


第7章
(財)京都産業情報センターの
事業展開のための課題

1.会員の充実強化

(1)正会員の拡大 増強 … 会員メリットの充実
(2)目的別会員制度の設置
1.インターネット利用研究会
2.DL京都、KYONET会員
3.異業種交流の質的発展 など
(3)専任人材と専門家の確保

2.マルチメディア事業の拡充にともなう施設の充実

(1)インターネットサーバーの増強
(2)回線の増設
(3)専門技術を有する人材の確保と養成

3.府下の主要地域におけるサービス及び情報拠点の創設

センターと地域特性にマッチした機能を有するサービス及び情報拠点とのネットワークの形成

(1)北部拠点
<1>環日本海地域の、経済・社会に関する情報の収集及び技術交流や提携事業等のニーズ調査の実施と情報提供
<2>北部地域活性化に関する情報発信・受信・支援事業
(2)南部拠点……関西文化学術研究都市との連携
<1>研究開発企業や新しい創造型企業への支援
<2>ビジネス・インキュベータ機能の提供
<3>センターの最新の研究・開発技術情報の収集と発信機能強化

4.事務局体制の強化

(1)長期的視野に立った幹部職員(プロパー)の確保と増員
(2)中小企業に対して効果的な技術情報コンサルタント機能を果たすための専門スタッフの確保と連携強化
(3)国庫補助事業の増加にともなう専任職員の配置


21世紀に向けた
京都産業情報センター委員会
-ACT21 委員会名簿-

委員長
副委員長
委 員
委 員
委 員
委 員
委 員
委 員
委 員
委 員
委 員
事務局
事務局
事務局
事務局
石田 隆一
波多野 進
熊田 泰彦
岡田和比古
今江  豊
中沼  壽
一廼穂光彦
樋爪  保
角田 宝一
奥田慶一郎
大槻  泰
吉田  實
田崎  央
前谷 光男
巽  健次
副理事長
理  事













(株)イシダ 代表取締役
京都学園大学経済学部教授
(株)京都銀行 常務取締役
日本電信電話(株)京都支店 支店長
(株)京都新聞社 総合メディアセンター長
中沼アートスクリーン(株) 代表取締役
一廼穂(株) 取締役
四条繁栄会商店街振興組合 理事
昭和機械(株) 専務取締役
京都府商工部産業推進課長
京都市産業観光局商工部産業振興課長
(財)京都産業情報センター事務局長
(財)京都産業情報センター特別相談員
(財)京都産業情報センター企画総務部次長
(財)京都産業情報センター企画総務部部長補佐