小児慢性特定疾患(以下小慢)による
医療費公費負担制度について


以下の解説は、メーリングリストに投稿された記事を元に、ご本人の許可を得て能勢が要約したものです。

 

制度の成り立ち
 この制度は、特定疾患(一般の指定難病)と同様に、小児期の難病や慢性的な疾患を指定して、治療研究のためと保護者の医療費の負担を軽減する目的に設立された制度です。糖尿病(IDDM、NIDDM、型不明も含む)もその対象疾患になっています。

制度の対象となる範囲
 国(厚生省)が定める制度においては、その対象は満18才未満に限られています。基本的には18才の誕生日までが有効ですが、実質的には誕生日月の月末までとなります(月単位で管理するのが通常のため)。その年齢までは保険診療での患者負担分(被扶養者なので診療報酬総額の3割)を、公費(半分を国、残りの半分を地方自治体)で負担する制度です。このため保険診療範囲で療養を行う限り、患者(保護者)の負担は1円もかからないことになります。

制度の現在の運用状況
 ここ5〜6年ほど前から、18才までではなく成人となる20才まで、あるいは大学卒業年の22才までこの年齢制限を延長してほしいとの要望が出始めてきました。国の制度を変えるのは大変であることから、各地の地方自治体が単独で19才あるいは20才まで延長しているケースがあります。この年齢延長は、都道府県あるいは政令指定都市単独の事業として行っており、その延長分の公費負担分はその地方自治体が全額負担しています。

地方自治体別の運用状況
 具体的には横浜市、京都市、大阪市、神戸市、群馬県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、川崎市などでは20才まで、また、愛知県、名古屋市などでは19才となっているようです。これ以外にも最近、延長に踏み切った所があるかも知れません。また、ここに挙げた自治体が現在もそのままかどうかは確認はしていません。これらの年齢制限延長措置は、各地の「つぼみの会」などの患者会(親の会)が行政(議会)に働きかけてようやく手に入れたもので、それら親たちの苦労には並々ならぬものがあります。

制度の適用を受ける際に必要な手続き
 この制度を利用するには、先ずそれぞれの地方自治体と契約を交わしている「委託医療機関」の診断書が必要となります。申請した保護者には「医療券」が発行され、この病気に関わる医療費(合併症の検査なども全て含む)に対する無料パスとして機能します。適用期間の更新手続きは、以前は医療機関(病院)が行っていました。しかし、2年前の地域保健法の改正に伴い、保護者自身が保健所の窓口に出向いて毎年更新する方法に変わりました(保護者の手間が増えたことになる)。更新時期については各地方自治体によって異なっており、年度末に申請するケースや、申請時から1年後あるいは誕生月末などまちまちです。

最新の状況
 以上が小慢の制度の概要です。いずれにしても年齢制限のある制度なので、これを年齢制限のない(一生涯の医療費公費負担となる)「特定疾患」に格上げしたいとの要望があります。しかし、特定疾患への認定を待っている疾患がいくつも並ぶ「順番待ち」状態で、糖尿病はその列の最後尾にも付いていないのが現状です。
 20歳以上のIDDM患者の医療費の負担感については、日本小児内分泌学会が日本糖尿病協会の協力を得て3年ほど前に大々的にアンケート調査を実施しました。その結果、特に学生においてその負担感が高く、これらの結果を基に厚生省へ小慢の年齢制限引き上げや特定疾患への認定を申し入れる動きも日本糖尿病協会の小児糖尿病対策委員会や全国IDDM連絡協議会(全国各地のIDDM患者会の全国組織)では精力的に行っています。

今後の見通しは...
 「特定疾患」の公費負担制度に対してですが、1998年年5月1日から新たに患者負担が導入されることになりました。例えば通院の場合、1ヶ月につき最高2000円を上限とする患者負担が必要となったのです。厚生省の言い分はもちろん「財政難」です。
 この動きは「小慢」に対しても矛先が向けられており、1998年の導入こそ見送られましたが、来年以降、確実に患者(保護者)負担が導入されそうな情勢です。全国の難病連組織(JPC)やIDDM連絡協議会では、すでに1997年から反対の意志を表明し、厚生省に対して陳情や署名書の提出をしています。このような状況ですから、小慢の年齢制限の拡大要求など、国としては「論外」の扱いとなっているのが現状です。



 トップページ / 各種情報のご案内 / 公費負担制度について