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IDDMに関する保険診療の規則と、
その違反の実状について

以下の解説は、メーリングリストに投稿された記事(愛知・井上氏より)を元にまとめた、IDDMに関わる保険診療の問題の解説と能勢個人の見解です。文責は能勢に属します。



1.問題の概観
2.掲載内容の目的とその利用
3.IDDMの療養に関する保険診療報酬
4.どんな保険上の規則違反が見られるのか
5.規則違反(主に混合診療)が行われる背景
6.日本糖尿病協会の今後の対応の見通し
7.あなたは「保険診療の規則に沿った施し」を受けていますか?
8.保険診療の規則とその規則違反の具体例
9.規則違反の疑いがある場合の医療機関への対処
10.おわりに



1.問題の概観

 能勢が主催するメーリングリスト(ML)・“IDDMメールネット”では、1998年2月頃よりIDDMの診療における混合診療の問題について断続的に話し合いが続けられています。ここでの議論を受けて、MLのある参加者が厚生省(http://www.mhw.go.jp/index.html)の担当者(厚生省保険局医療企画法令係 03-3503-1711(内線3278))に直接掛け合った結果、全国の病院に対して混合診療の是正を勧告する通達が厚生省から出されました。この問題に関しては私・能勢も新聞社から取材を受け、毎日新聞(http://www.mainichi.co.jp/)の1998年5月25日(月) 関東版・北海道版の第14版26面に「インスリン依存型糖尿病−“命綱の器具”病院支給のはずが購入 『治療費一部返還を』広がる運動」として掲載されています。

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2.掲載内容の目的とその利用

 なお、このページに掲載された内容は、あくまで我々IDDM患者が医療機関、特に医師と相互信頼に根ざした良好な関係を築くことを目的としたものであり、トラブルや訴訟を起こすことを目的としたものではありません。しかし、規則の厳正かつ適切な運用を求めて医療機関と交渉する場合、医療機関もしくは医師との関係が悪化する可能性も十分考えられます。ここでの掲載内容を参考にして具体的に行動される場合、各自の状況と照らし合わせてよく検討された上で、ご自分の判断と責任で冷静かつ慎重に行動して下さい。よろしくお願い致します。

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3.IDDMの療養に関する保険診療報酬
*

 インスリンの自己注射(または自動注入ポンプ(=CSII))により、医療機関が患者に在宅自己注射をさせる場合の保健診療報酬(医療費)は、指導管理料といくつかの加算部分から構成されています。基本となる在宅自己注射指導管理料が950点(9500円)です。それに加え、血糖自己測定をしている場合については、その指導回数(あるいは実施回数)によって一日一回、二回、三回、四回以上に対して400点(4000円)、580点(5800円)、860点(8600円)、1140点(1万1400円)のように、段階的な定額制となっています。また、注入器(注射器)については300点(3000円)(CSIIは1000点(1万円))の加算となる定額制です。ただし、インスリン製剤(ディスポーサブルのインスリン製剤内蔵の注射器ノボレットを含む)などの薬剤は使用した分量だけ請求ができる出来高払い制になっています(この診療報酬とは、医療機関が保険基金に請求できる金額のことです。このうち保険本人は2割を、被扶養者は3割を病院に支払い、残りは保険組合が病院に支払います)。

*保険診療報酬の点数は平成11年4月に改正されています。
最新情報が調査・掲載できるまでしばらくお待ち下さい。

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4.どんな保険上の規則違反があるのか

 現状を眺めると、主に次の二つの違反形態になります。先ず一つが、保険診療として規則上病院からの支給(費用を取らずに給付すること)と定められているものを支給していなかったり、費用を患者から徴収して出しているなどの違反形態。そしてもう一つが、いわゆる「混合診療」と呼ばれている規則違反形態です。これは一つの医療給付に対し、保険給付と患者負担とを併用(混合)することです。この混合診療は保険診療の原則的違反なのです。

 具体的な規則内容と、違反のありそうなケースについては8の中で詳細に解説してありますが、上記の2つの違反形態の代表的なものを示しておきましょう。

・支給されるべきものであるにもかかわらず、実際には支給されていないことが多いもの

・混合診療

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5.保険診療の規則違反が行われる背景

 インスリンの自己注射(またはCSII)による療養の場合、インスリンの投与と血糖自己測定しか手段がありません。ですから、これらは全て保険適用の療養範囲となるよう定められています。しかし、先に述べたように自己血糖測定や注射器については段階的な定額制になっていますので、ある回数以上(ある本数以上)を支給すると、医療機関が請求できる診療報酬額を超えることがあります。その場合、医療機関にとってはその部分だけ見れば赤字になってしまいます。このような1人分ではごく僅かな赤字でも、積もれば大きくなるのは必然です。しかし、この超えた部分について、先に述べたように規則では医療機関は患者に負担を求めることはできません。最近は薬価差益も少ないことから、医療機関としては経営上の問題として、こうした診療報酬額を金額的に超えるサービス(療養行為)についてはかなり過敏になっています。その結果、ある部分の負担を患者に求める「混合診療」を行ったり、血糖測定器等の支給すべき機器類を購入させるなどの規則違反が行われているようです。
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6.日本糖尿病協会の今後の対応の見通し

 なお、7月に開かれた日本糖尿病協会の小児糖尿病対策委員会(委員長:松浦先生@北里大学)で、日糖協の機関誌「さかえ」にこの問題の解説を載せることが決議されました。この委員会では1年半ほど前からある患者側委員により、この問題についての重要性が提起され議論されていたのですが、具体的な対応策が協議されることはありませんでした。しかし、先頃の毎日新聞に掲載された記事などの影響から、協会としてもこの事態を静観できなくなり、患者の誤解や曲解を解いて正しく運用させるために解説すべし、との判断で、保険診療の正しい理解と対応についての解説が近いうちに掲載されることになっています(現在のところ、掲載時期については未定)。

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7.あなたは「保険診療の規則に沿った正しい施し」を受けていますか?

 それでは、次に具体的に検証していきます。以下の事柄をご自分の病院の場合でお考えになって下さい。

(1)病院からは自己血糖測定や自己注射の際の消毒に必要なアルコール、脱脂綿、絆創膏を全て支給してもらっていますか?

医師が必要と認めたこのような衛生材料は、病院から支給するのが保険上の規則です。もし病院から支給してもらえず、自費で買っているのであれば、その病院の規則違反です。

 

(2)自己血糖測定器は病院のものを借りるか、病院から支給されていますか?

自己注射のための自己血糖測定を行う場合は医療機関の機器を貸与または支給するのが規則です。患者に買わせているならば規則違反です。

 

(3)医師の指導による血糖測定回数分の試験紙(チップ・電極)は完全に保険内で扱われていますか?

医師からの指導にも関わらず、保険の適用範囲は一ヶ月108枚までとし、それを超えた場合(例えば一ヶ月120枚(一日4枚×30日)の場合)にその分(12枚)の金額を自己負担として患者に請求しているとしたら、これは規則違反です。この場合には120枚全て保険適用しなくてはならないのが正しい規則です。

 

 ...ここまでご覧になって「これらは全て当然だ」と思われる方は問題ありません。しかし、「あれっ?ここは自分の場合と違うぞ」と思われる方は、恐らく規則違反があります。そのような方は以下をよくお読みになり、先ずは正しい規則をご理解下さい。

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8.保険診療の規則とその規則違反の具体例

 ここでは、この保険診療の規則とその規則違反について具体的に詳しく解説します。これをご覧になる方の中には医療機関の方もいらっしゃると思いますので、ご自分の医療機関の対応がどうなっているかについて、是非一度ご確認ください。

 

I.保険診療とその基本的なルール

 私たち日本国民は全員が社会保険としての医療保険に加入しています。医療保険にはいくつかの種類(職域保険としての健康保険や地域保険である国民健康保険など)がありますが、いずれの医療保険でも保険者と保険医療機関の間の公法上の契約である「保険診療」が基本です。

 保険診療は法律(健康保険法など)で規定された範囲内で保険医療機関において(保険医が)行う診療行為で、この診療に要した費用は保険者から医療機関に支給されます。

 では、この保険診療の最も基本的なルールを次に示します。

無診察診療の禁止

診察無しでの投薬やリハビリなどはしてはならない

特殊療法などの禁止

まだ、評価の確立していない療法などは保険で請求できない

混合診療の禁止

保険診療を行いながら保険給付と同一の(重複する)内容について患者から費用を徴収してはならない。保険診療と自費診療(保険外負担)の混合は不可

研究的診療の禁止

研究的な検査などについては保険適応ではなく医療機関側の持ち出し

健康診断の禁止

純然たる健康診断は療養の給付対象ではない。全額被保険者負担

 

 保険診療での療養に要した費用(診療報酬)の医療機関からの請求は健康保険法に基づき定められた、いわゆる「点数表」(正式には「健康保険法の既定による療養に要する費用の額の算定方法」)と呼ばれる厚生省告示によって算定されます。この解説書として「医科点数表の解釈」が診療報酬改正の度に社会保険研究所から出されています。

 では、私たちに関係のあるIDDMの自己注射に関わる保険診療のルールはどのようになっているのでしょう。次はこの保険点数表の記述を元に、ルールの具体的内容を検証していきます。

II.IDDMの保険診療上の取り扱い

 IDDMは、在宅での自己インスリン注射が療養(治療)の基本です。発症後しばらくして病状が安定し、毎月一回程度の通院になると、毎日の自己血糖測定結果に基づいてインスリン注射量などの指導を医師から受ける療養は、保険診療の「在宅療養指導管理」に区分されます(もちろん初診料や入院、血液検査費用などの算定は別です)。注射指導を受けるIDDMの診療報酬は、特に「在宅自己注射指導管理料」の適用として算定されます。

 

III.在宅自己注射に関わる保険診療のルール

以下に、在宅自己注射指導管理料の算定の内容と、特に自己血糖測定をしている場合の加算点数について説明します。これから診療報酬の点数を具体的に示しますが、1点10円として金額換算して下さい。

(1)在宅自己注射指導管理料について

インスリン療養中の患者を医師が診察指導した場合、保険薬局において調剤を受けるために処方せんを交付する場合、診療報酬として先ず820点が、それ以外(院内処方など)の場合950点が算定されます。これが在宅自己注射指導管理料で、いわば技術料(あるいは基本料金)です。これは月に1回まで(かつ、1つの医療機関のみで)しか算定できません。ただし、これには重要な前提条件があり、点数表には「必要かつ十分な量の衛生材料および保険医療材料を支給した場合に算定できる」とあります。この場合の衛生材料および保険医療材料とは、注射時の消毒用アルコール、脱脂綿、ガーゼ、絆創膏などであり、これらは必要かつ十分な量が支給されることが前提なのです。当然、患者はその無料支給を要求して良いことになりますし、この支給が不十分なときは、医療機関はこの指導管理料を請求できないことになります。

(2)自己血糖測定を指導した場合の診療報酬点数加算について

自己血糖測定を指導するにあたり、血糖測定器は医療機関のものを貸し出すか、医療機関で購入し(無償で)支給することが前提です。その上で、患者に対する指導として(あるいは患者の実施した)概ねの1日の血糖測定回数を目安にした診療報酬の加算点数が決められています。1日1回以上インスリン自己注射をする患者に対し、

1日1回の血糖測定(一ヶ月で概ね20回以上測定)を指導した場合には400点
1日2回の血糖測定(一ヶ月で概ね40回以上測定)を指導した場合には580点
1日3回の血糖測定(一ヶ月で概ね60回以上測定)を指導した場合には860点
1日4回以上の血糖測定(一ヶ月で概ね80回以上測定)を指導した場合には1140点

がさらに加算されます。

これはあくまでも医療機関が請求できる診療報酬についての規定(医療機関に支給する額を定めたもの)であり、この点数が患者へ支給される試験紙(センサー、チップなど)の枚数(金額)を規定する(制限する)ものではない点が重要です。つまり、患者は医師の指導による血糖検査に必要な検査紙枚数分については全て(保険扱いとして)患者に支給されるのです。医師の指導が1日3回であれば1ヶ月分として90枚、1日4回であっても120枚は全て保険適用で支給されなくてはならないことになります(当然ですが血糖自己測定に必要な穿刺針(ランセット)も十分支給されることになります)。

(3)注入器*について

 注入器(いわゆる「注射器」のこと。詳細な規定は欄外参照のこと)の加算については、注射針も含め、使用した本数に関わらず1ヶ月の加算点数が決まっており、300点となっています。またCSII(Continuous Subcutaneous Insulin Infusion:間歇注入シリンジポンプ)については、2000年4月の診療報酬点数改訂で300点から、1000点の加算に変更されました。
 
この「注入器」には、ディスポシリンジ、ノボペン、ノボペンIII、ヒューマペン エルゴ、ペンニードル(針)、間歇注入シリンジポンプなどが含まれます(ノボレット、ヒューマカートキットなど、使い捨てタイプのインスリン注入器では、注入器加算は算定されません)。

*『注入器』とは、自己注射適応患者(性腺刺激ホルモン放出ホルモン剤及び性腺刺激ホルモンの自己注射を除く)に対するディスポーサブル注射器、自動注入ポンプ、携帯用注入器又は針無圧力注入器のことをいう。また、「間歇注入シリンジポンプ」とは、インスリン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン剤を間歇的かつ自動的に注入するシリンジポンプをいう

(4)インスリンなどの薬剤について

薬剤はそれぞれの形態や種類によって基準は異なりますが、出来高払い、つまり、患者に支給した分だけ請求できることになっています。例えば、ノボ社の製品については以下のように決まっています(1996年現在)。

ペンフィル   1カートリッジ 1046円
ノボリン
ヒトインスリン(40単位製剤) 1バイアル(10ml) 2370円
ヒトインスリン(100単位製剤) 1バイアル(10ml) 5090円
ノボレット注射器もかねていますが薬剤(インシュリン)が装填されていますので薬剤扱い
ノボレットR 一本 1893円
ノボレットN、10R、20R、30R、40R、50R 一本 3090円
グルカゴン
グルカゴン・ノボ 1バイアル(1mg) 3695円

 

IV.現在、規則違反が疑われるケース

III.の内容が保険診療のルールです。あなたも現在自分がかかっている医療機関が規則通りの保険診療を行っているかどうか照らし合わせてみて下さい。本来、支払基金に対して医療機関がどのような請求を行っているか我々は知る由もありませんし(最近では医療機関が請求する診療報酬の明細(レセプト)は、患者の要求があれば開示されるようになりました)、関心がなくても不都合はないはずです。しかし、規則違反が患者側へのしわ寄せ(払う必要のない費用を取られている)の形になっているとしたら、ことは重大です。しかもIDDMとは今のところ発症してから一生関わることになるのですから、月々のわずかな出費でも長い年月になると巨額です。

患者への直接影響の出る規則違反のケースをいくつか上げてみましょう。

(1)在宅自己注射指導管理料の算定前提について

これを請求するためには、必要十分な衛生材料の支給が前提となっています。あなたは必要な消毒用アルコールや脱脂綿はちゃんともらえていますか。これらは病院から購入したり薬局で買う必要のないものです。この費用も積もると馬鹿になりません。

(2)自己血糖測定を指導した場合の診療報酬点数加算について

i.血糖測定器

 血糖測定器は医療機関からの支給が前提であり、患者が購入させられるのはルール違反です。仮に、患者がすでに測定器を持っていたとしても、医療機関としてはメーカーから買い取ったものを貸し出すか支給しなければいけないことになっています。これが守られていないケースは意外に多いようです。しかもこの測定器は決して安価なものではなく、故障があったり、新しい機種に変わったりと、5年も10年も使用できるものでもありません。次に述べる血糖測定紙同様、この費用はかなりの額になるでしょう。

 

ii.血糖測定紙(センサー)の支給枚数

 IIIの(2)でも述べたように、このルールは患者の与えられる枚数を制限する規則ではないので、医師の指導による枚数については全て支給されることになります。ところが、1日4回(1ヶ月120回)の血糖検査を指導をしているにもかかわらず11400円(1140点)分ちょうどまでを保険扱いとし(例えば検査紙1枚が105円であれば108枚ほど)、残りの必要分(120−110=12枚)は患者の自己負担としているところがあるようです。これは最初に述べた保険診療の基本ルールである「混合診療の禁止」に該当する行為で、保険診療の原則違反です。繰り返しになりますが、血糖測定紙の支給枚数は医師の指導する分については全部もらえるのであり、ある枚数までは「保険扱い分」でそれを越える分は「自己負担分」になるようなことは全くありません。

 ただし、患者の都合で医師の指導枚数以上に入手を希望する分についてはもちろん自費購入扱いとなります。


 ここで懸念されることは、患者がこのような主張をしたときに医師の方で血糖検査の指導回数が故意に減らされることです。頻回注射法(強化インスリン法:概ね1日4回注射)が主流の現在、注射ごとの血糖検査は当然必要なことで、それによりこまめにインスリンの注射単位数を変更できることがこの方法の最大のメリットであるはずです。それを「毎回の血糖検査は患者への負担が大きい」とか、「尿糖検査で代用すべきだ」などを理由に、これまでの検査回数を減らす指導が出てくるようなことがあれば、それは全くの不合理で、完全に病院の経営的な観点からの歪曲した指導と言わざるを得ません。

 

(3)注射器の加算

 インスリン注射のための注射器と自動注入ポンプ(CSII)についても前述のように一ヶ月の加算点数が決まっているので、医師の認めた必要分の注射器も針も(何本使用しようが)患者負担の増加にはなりません。ノボペンなどの場合は、1本の注射器で何度も使えますから(もちろん針は使い捨てです)、医師の判断で1本で良いとされれば保険分としては1本しかいただけないことになります。予備として欲しいとするような患者の自己都合分については、自費での購入になり得る訳です。しかし、注射器も機械ですので壊れることもあります。壊れてから新しいモノをもらいにいくのでは遅すぎるでしょう。従って、注射器のメーカーでは医療機関に対して、最低でも2本渡しを勧めています。医師がその必要性を認めてくれれば、保険扱いで渡してくれるはずです。また、複数の種類のインスリン(例えば、ペンフィルRとペンフィルN)を使い分けている場合は、その都度いちいちカートリッジを取り替えるのは煩わしいですし、間違いの原因にもなりますので、インスリンの種類ごとにペン型注射器を持つことが望ましいでしょう。これについても、医師の判断で保険扱いにして支給してもらえても良いでしょう。最低限必要な注射器と針は保険で加算点数が決まっていますので、自費扱いにはなりません。この分についても、注射器は貸与品ではありませんので補償金などの名目で費用を取られるようなことは規則違反とみなせるでしょう。

 

以上がIDDMに関する保険診療の規則の概要と、よく見られる規則違反の例です。

それでは、このようなことがご自分の医療機関で実際に行われていることがはっきりした場合、どのように対処したらよいのでしょうか。次にその様な場合の行動例について示します。

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9.規則違反の疑いがある場合の医療機関への対処

 IDDM(インスリン依存型の糖尿病)は一生付き合っていく病気です。それだからこそ、医療機関、特に主治医と相互の信頼関係に根ざした良い関係を築いていかなくてはなりません。しかし現状では、医師と患者の関係はどうしても患者の方が弱い立場になってしまいます。そのような状況で医療機関の規則違反に対してどう対処すべきかは大変難しい問題です。

 この規則違反が、医療機関側の不勉強の結果であり(本当は不勉強自体あってはならないことですが)、かつ、意図的なものでないとすれば、良識的な医療機関の場合、改善するなり過去にさかのぼって患者へ返金することもあり得るでしょう。しかし、もしも意図的に(故意に)行っていたとしたら、これは医療機関側に対する我々の信頼を裏切る行為です。大半の患者がこのようなルールを知らないことをいいことに、患者から取ってはならない費用であると知りつつ徴収しているとすれば、まさに悪質な診療報酬の不正請求であり、不当行為です。

 それでは、ここうした規則違反の疑いが自分のかかり付けの病院や主治医などに見受けられた場合、どのように対処したら良いのでしょう。もちろん、規則違反をしているのは医療機関側で、我々はその違反による被害を直接被っているのですから、正義感にあふれ医療機関側との対立も辞さない方であれば、堂々と要求をぶつけるのもひとつの方法です。しかし、医療機関側は基本的には患者サイドからの規則違反に対する指摘についてはあまり素直には受け入れてくれないことが多いようです。それどころかこのような指摘を「迷惑」として捉え、その患者に対して別の形で(診療拒否などの排除的な)圧力を加えるような事態になれば、もはや信頼関係などあったものではありません。もし、今現在主治医との関係がうまくいっていて、何でもフランクに話せる状態であれば、やんわりと切り出しても良いかも知れません。それでも医師側があまりいい顔をせず、その後の関係がしっくりこなくなってしまうケースも多いようです。

 このような場合には行政の力を借りる方法もあります。各都道府県の県庁には、民生部の社会保険管理課など、保険診療の監督機関があります。そこには指導医療官(厚生省所轄・地方技官)と呼ばれる保険医の監視・監督(いわば保険診療の警察)を専門に行っている方がいます。ここに実状を説明し、場合によっては自分のことが医療機関に明かされないようにお願いした上で、指導をしてもらうことが出来るでしょう。この指導医療官は医療機関に対しては大変大きな権限を持っており、保険医や保険医療機関の指定取り消すこともできます。
 どのような対処をされるかはご自分でよくお考えになり、医療機関との信頼関係を考慮しつつ、慎重にやることが大切です。病院(主治医)との関係を十分考慮した上で最適な方法を選択して下さい。


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10.おわりに

 勇気を持って規則違反を指摘しても、「病院の内情に関わる事は患者が知るべきではない」とか、「現実問題として、病院は赤字になる訳には行かないのだ」などと半ば規則違反を正当化したり居直る病院や医師もいます。しかしその考えは完全に間違っています。仮にも日本は法治国家です。規則(法律)として定められている以上、正しく運用されるべきなのです。もしもこの規則が現在の医療の実情に合わなければ、規則の改正に努めるのが筋ではないでしょうか。どうしても病院側が患者に対して規則を曲げてでも請求するのであれば、「正しい規則はこうだけれども、この分は病院の都合で患者さんに払ってもらいたい。大変申し訳ないがそれでいいだろうか」と了解を取って然るべきでしょう。

 また、患者の中にも、「こんなことを知らなければトラブルもなく平和だったのに。知らされてかえって迷惑だ。知ったおかげで医者との信頼感が薄れてしまった」と思っている方もいらっしゃるでしょう。しかし、IDDMは一生付き合っていく病気だからこそ、正しい規則を知っておくべきだと考え、このページをアップさせて頂きました。

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以上につきまして忌憚のないご意見・ご批判・ご感想をお待ちしております。どんなことでも構いませんので、能勢(pandora6@mbox.kyoto-inet.or.jp)までお聞かせ下さい。

長文を最後までお読み下さりありがとうございます。



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