Vol.2


ノボペンのカラーバリエーション



し前のことになりますが、ノボペンに新しいカラーバリエーションが追加されました。(赤)と(青)です。

某有名アパレルメーカー(笑)の製品を彷彿とさせるそのビビッドなカラーリングを初めて目にしたときには、さすがの私も少々面食らった覚えがあります。

しかし、このカラーバリエーションの追加は、ノボペンの社会的位置づけを今までとは全く違うものに変えてしまう、エポックメーキングな「事件」であると私は考えます。


それでは一体このデザインのどこが「事件」なのでしょうか?

通常我々が使っているノボペンIIIは、頑丈で清潔感のあるアルミのボディとダークグレーのプラスチック部分がよくマッチし、「注射器であることを意識させないデザイン」になっていることは皆さんもよくご存じでしょう。
このスタイルは初代ノボペンの時から一貫していますが、注射に対する抵抗感を少しでも減らそうとの配慮をこのデザインから伺い知ることができます。

 一方、このデザインをIDDMとは全く関係のない一般の人の視点から見てみるとどうなるのでしょうか。もう一度ノボペンIIIをよく眺めてみましょう。ペンを模したシンプルで簡素なデザイン。色調は淡いグレーが基調。これが「目立たないデザイン」であることは明らかです。さらに言い換えると、

注射をすることに対してある種の「後ろめたさ」を持っていることを自ら認めるデザインとなっている

のです。

勿論ですがこのことは周りの人にIDDMのことを知ってもらう上ではあまりプラスにはなりません。それどころか、マイナスの作用さえ果たしてしまいます。それは、このデザインが、注射をすることが周りの人の目に触れないよう気にしていることを暗黙の裡(うち)に意味してしまうからです。

しかし、このデザインが持つ否定的意味・危うさにはノボ社も十分気が付いていたのでしょう、画期的な大転換を図りました。ノボ社はノボペンのデザインを「目立たないデザイン」から、全く正反対の「目立つデザイン」に変更したのです。

すなわち、これまでの隠すためのデザインから、「注射」と「注射していること」を見てもらうためのデザイン・主張するためのデザインへ。これは「事件」です。

人前でも臆せず注射をしているIDDMの人はかなり多いとは思いますが、やはりそんな人ばかりとは限りません。発病してから間もない人は勿論のこと、発病してから何年も経っているのに「人前では注射できない」「してない」人も中にはおられることでしょう。私もかつてはそうでした。しかし、自分の生活の一部であるインシュリンの注射を隠そうとすれば、そのことに非常にたくさんの物理的・精神的エネルギーを消耗することになります。これはエネルギーを使う方向を間違っているのではないでしょうか。こんなことではよいコントロールが望める筈もありません。我々はもっと他にエネルギーを注がねばならないことが山ほどある筈です。

人前で注射をする場合に周りの人の目が気になるのはよく判ります。特に女性の場合。しかし、それではいつまで経っても周りの人はあなたのことを理解してくれません。IDDMの社会的地位も向上しません。「IDDMの治療には注射が必要である」。これは動かしようのない事実ですし、一般の人にIDDMを理解してもらうには先ずこのことから知ってもらう必要があります。ですから、これまで「人前では注射できなかった」人、あるいは「人前では注射したことがない」人も、どうか勇気を出して人前で注射をしてみて下さい。

そしてこのときにあなたの力になってくれるのが、(赤)と(青)のカラーリングが施された新しいノボペンなのです。これを使って注射をすれば、知らない人が注意を惹かれるのは勿論、あなたを知っている人なら必ず「ねぇねぇ、そのオシャレなペンみたいなの何?」と関心を持ってくれること請け合います。そこですかず「これはね、ノボペンって言ってインシュリンの注射器なんだよ:-)」と説明を始めれば万事OK。問題なし。何も悩む必要はありません。


注射を「隠す」のではなく、注射を「見てもらう」デザイン、注射していることを「主張する」デザイン。このポップでオシャレなペンをきっかけに、あなたの身体(からだ)のことをさりげなく、そしてスマートに周りの人に主張してみては如何でしょうか。


文責:能勢 謙介 


(注) 私はノボ社の回し者ではありません(^^;)。



 トップページ  / IDDM コラム / Vol.2