●低血糖
【てい・けっとう】
(症状名)
英:hypoglycemia



DM患者は、IDDM・NIDDMを問わず、程度の差はあれ、血糖値を健常者と同じ状態に調整することが治療の主眼となっているが、経口血糖降下剤(→)やインスリン注射などの薬物療法(→)を行っている場合、血糖値が正常範囲を超えて下がり過ぎてしまうことがある。それを「低血糖」と呼び、通常は60mg/dl以下を指す。めまいや頭痛などを伴ったり、ひどい場合は意識を失うこと(低血糖昏睡(→))があるため注意が必要で、薬物療法の最も大きな副作用として挙げられる。

なお、一般健常者でも、低血糖を経験する場合がある。登山や自転車ロードレースなど大負荷の運動を、エネルギーを補給しないまま何時間も続けると、筋肉や肝臓に蓄積されていたエネルギーを使い果たし、手足が痺れたり、めまいがしたり、急に身体が動かなくなる。いわゆる「ハンガーノック(HUNGER KNOCK=空腹で倒れてしまう)」と呼ばれる状態がそれである。

低血糖になった際には、菓子や食事ではなく、ブトウ糖を摂取することにより、できる限り速やかに正常域まで血糖値を上げることが推奨される。もし意識を失ってしまった場合には、病院に搬送しブドウ糖の静脈注射を受けることが最も確実な回復方法であるが、家庭にグルカゴン(→)注射が常備されている場合には、それで対応することも可能である。

低血糖になった場合の自覚症状には個人差があるが、代表的な自覚症状としては、異常な空腹感・脱力感・手指の震え・発汗・動悸・視覚に異常をきたす・舌が痺れる、などがある。同一人物ではだいたい同じ症状が出るので、薬物療法を行っている人は、自分が低血糖になった際の自覚症状(の感覚)を覚えておくことが必要である。

日常的な対策としては、

  • 異常を感じたら速やかに血糖値を測定する。
  • 明らかに低血糖であることを感じ、血糖測定の余裕がない場合には、血糖を上げるための対処を先に行う。
  • 低血糖の場合はブドウ糖を摂取する。(飴や砂糖よりもブドウ糖の方が回復は圧倒的に早い。また、αグルコシターゼ阻害剤(→)を服用している人は、ブドウ糖への分解が阻害されているので、低血糖の際には、砂糖ではなく必ずブドウ糖を摂ること。)
  • いつでもどこでもブドウ糖を摂取できるよう携行しておくこと。ブドウ糖そのものは粉体であるため水分がない場合には摂取し難いので、ブドウ糖を多く含むラムネ菓子などで代用することもできる。
  • 低血糖になった場合には、低血糖からの回復後、なぜその低血糖が惹き起こされたのかその要素をよく検討し、次回から低血糖が起こらないように留意する。
  • 意識を失ったときに周囲が適切な処理をできるように、職場や学校の身近な人には具体的な対処方法を話しておいたり、糖尿病患者であることを示すカード(病院に相談すればもらえる場合がある)を携行しておくことが望ましい。

などが大切である。