●レベミル
【れべみる】
(薬剤名)


インスリン・グラルギンと同様の超持続型(超持効型)インスリンで、一般名はインスリン・デテミル。こちらも遺伝子組み換えを行った、いわゆる「アナログ・インスリン」である(ここでの「アナログ」とは、「〜に似た」の意)。

グラルギンは、ヒトインスリンA鎖にある21番目のアミノ酸を、アスパラギンからグリシンに置換し、B鎖C末端の31番目、32番目に2個のアルギニン残基を負荷することによって、皮下で等電点沈殿を起こし、持効性を持たせている。

これに対しデテミルは、ヒトインスリンのB鎖30位のスレオニンを削除し、その代りに、29位のリジンにミリスチン酸(炭素数14の直鎖脂肪酸)を繋げた構造を持つ。

これによりデテミルは、皮下への注射後2種類の結合体(レベミルの6量体同士が対結合した結合体(ダイヘキサマー)と、レベミルの6量体とアルブミンが結合した可逆結合体)を形成するが、これらの結合状態では分子が大きいため皮下から血中には移行しない。時間経過に従い、いずれかの結合体より分離したデテミルは緩徐に血中に移行、98%以上がアルブミンと再度結合して平衡状態となり、末梢組織へ移行する。末梢組織に移行したデテミルは、アルブミンよりも親和性の高いインスリン受容体と結合することにより、作用を発現する仕組みである。

2008年1月の時点では、比較サンプルの絶対数の少なさなどから、グラルギンとデテミルの作用特性に関する絶対的な有意差は認められておらず、両者はほぼ同じ機能を有すると考えてよい。しかし、今後内因性インスリンの分泌が枯渇した1型糖尿病患者を対象に、グルコースクランプなどを用いた大規模な比較研究が行われれば、両者の詳細な作用プロファイルが解明・同定され、特性に応じた使い分けが進むものと期待される。

また、デテミルのpHは中性(7.2〜7.6)で、酸性(pH3.5〜4.5)のグラルギンと違い、注射時の痛みが少ないとされている。

デテミルは、デンマークに本社を持つノボ・ノルディスクファーマ社が開発・製造・販売し、日本では、2005年12月5日に承認申請が提出され、2007年10月19日に承認取得、同12月14日より出荷が開始された。これにより、ノボ・ノルディスクファーマは、単独1社で超速効型と超持効型の2種類のアナログ・インスリン製剤を保有することになり、超速効型のみのイーライ・リリー社や、超持効型のみのサノフィ・アベンティス社に対し、市場戦略的な点での優位性を築くことに成功した。