●ミトコンドリア糖尿病、ミトコンドリア遺伝子異常による糖尿病、MIDD
【みとこんどりあとうにょうびょう】
(疾患名)
(英:Diabetes Mellitus associated with a mutation of mitochondrial DNA、maternally inherited diabetes and deahness(MIDD))



ミトコンドリアの機能異常による疾患のひとつに糖尿病(高血糖症)がある。

人体にエネルギーを供給しているミトコンドリアの突然変異(tRNALeu(UUR)遺伝子にあたる3243番目の塩基の点変異(A→G、以下3243変異))がある場合、インスリン分泌に障害を生じ、糖尿病(高血糖症)になる(なお、同変異は健常人においても加齢に従って後天的に蓄積する(体細胞変異)ことが知られており、糖尿病罹病期間に比例して体細胞変異の蓄積の上昇を認めることから、糖尿病(高血糖症)が細胞レベルでの加齢を促進している可能性が示唆される)

ミトコンドリアは母系で遺伝するので、約半数で母親に糖尿病(高血糖症)を認め、また同胞に糖尿病(高血糖症)を認めることも少なくない。発症初期にはNIDDMと診断されることもあるが、次第にインスリン分泌能が低下し、SPIDDM(→)と診断される場合もある。しかし、抗GAD抗体(→)やICA(膵島細胞抗体)(→)が陽性であることは少ない。インスリン分泌能の指標である尿中CPRは低い値を示すが、完全に枯渇することは少ない。また、ミトコンドリア異常は、他の臓器や組織などにも及ぶので、難聴や心筋症、神経障害、尿細管障害などさまざまな合併症を伴うことが多い。ただし脳や筋肉の障害はまれである。難聴は約60%に認められるが、自覚的には軽度のものが多い。
NIDDM、SPIDDM、IDDMと、多彩な病型を取り得る。
母系遺伝である。
比較的若年発症である場合が多い。
膵β細胞の機能異常/β細胞量減少を認める。
インスリン分泌の進行性低下に伴い、糖尿病(高血糖症)が進行する場合が多い。
感音性難聴を認める場合が多い。
日本人糖尿病(高血糖症)の約1%に認められる。

注釈:
ミトコンドリアの突然変異による疾患には、エネルギーを供給する役割を担うものであることから脳と筋肉に障害の出現することが多い。

参考:
「糖尿病治療事典」 第1版第1刷1996年2月15日 株式会社医学書院発行
繁田幸男 杉山悟 影山茂 編 6500円(税別)
ISBN4-260-13639-9 C3547 P6695E


参考:
糖尿病患者におけるミトコンドリアDNA体細胞変異蓄積の検討
○野見山 崇1、田中 逸1、服部 信孝2、三橋 直美1、荻原 健1、西牧 貴代美3、
永坂 恵子3、太田 成男3、河盛 隆造1(1順天堂大学内科学代謝内分泌学講座 2神経学講座 3日本医科大学老人病研究所生化学部門)
http://www.nms.ac.jp/nms/jmito/1st-meeting/11_20.htm