●強化インスリン療法
【きょうか・いんすりん・りょうほう】
(治療名)
(英:Intensive Treatment)



健常者においては、インスリンは食事による血糖上昇に応じて分泌されると同時に、食事に関係なく常に分泌される(基礎分泌)ことにより、血糖値を常に60mg/dl〜160mg/dl程度に保っている。

ところが、例えば膵臓β細胞が機能しない1型DM患者においては、通常の基礎分泌も含めたインスリンの生成がほとんどできないので、インスリン注射(あるいはインスリンポンプ(インスリン持続皮下注入(CSII))を用いて健常者と同じようなインスリンの分泌動態を再現することにより、血糖値の変動パターンの正常化を図る必要がある。これを強化インスリン療法と呼ぶ。

強化インスリン療法の対象となる主なケースは次の通り。

・1型DM患者
・妊娠中あるいは妊娠を希望する患者でインスリン治療が必要な場合
・膵臓摘出手術を受けた患者

具体的には、中間型インスリン(N)あるいは超持続型インスリンを用いて基礎分泌部分を再現し、速攻型インスリン(R)または超速攻型インスリンを用いて、食後の高血糖をコントロールする。一般的には、1日4回ないし5回程度のインスリン頻回注射を行う。さらに、注射のタイミングに合わせて自己血糖測定(SMBG)を行い、そのときの血糖値に応じてインスリンの量を調節しながらより厳格なコントロールを行うことも可能である。

しかし、厳格な血糖コントロールを行うと低血糖の可能性や頻度も高くなるので、強化インスリン療法を実施する際には、低血糖に対する正確な理解と適切な対処ができるようになることも非常に重要である。

1993年のDCCT(※)の調査研究結果によって強化インスリン療法は合併症の予防・進行の抑制に対して有意に効果があることが明らかになったこともあり、現在のインスリン治療においては、強化インスリン療法は最も一般的に用いられている。

(※)DCCT(Diabetes Control and Complications Trial):1983年から1993年にかけて、アメリカおよびカナダで行われた大規模な疫学調査。1441人のインスリン依存型糖尿病患者を対象に、血糖値を正常に維持することで合併症が予防できるかどうかを調べた。その他に、強化インスリン療法の効果を調査した研究に、熊本スタディ(日本・熊本大学)とUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study、イギリス)がある。
  
参考: http://www.uemura-clinic.com/dmlecture/complication.htm
http://www.club-dm.jp/insulin/list.php?i=0303