●飲酒
【いんしゅ】
(一般名)


アルコール飲料の摂取。

アルコールは栄養素としてはほとんど評価されないが、1グラムのアルコールには約7Kcalのエネルギーが含まれており、ワインやカクテルなどは、添加物などによりさらに多くのエネルギーを有している。これは同質量の糖質やたんぱく質に比べるとかなり高エネルギーであり、多量の摂取には注意が必要である。

多量の飲酒が習慣的になった結果、普段から心掛けている適正な食事療法が乱れ、多くの場合は血糖値のコントロールの乱れや体重の増加に繋がる。習慣的な飲酒をしているDM患者では、自律神経障害や末梢神経障害などの合併症が早期に進行することも報告されている。さらに、アルコール摂取は血中の中性脂肪のレベルを上げるため、高脂血症を合併している人は要注意である。

糖尿病の治療の中で不可避のプロセスとして、血糖値が下がり過ぎる“低血糖”を引き起こすことがあるが、飲酒していると、低血糖の際に肝臓から糖の糖の放出(糖新生(→))をアルコールが遅らせてしまうことも重要な問題となる(ちなみに、一般健常者においてアルコールの過剰摂取後に見られる「二日酔い」とは、低血糖(→)と脱水症状(→)に起因する体調不良である)。また、低血糖の症状は急性アルコール中毒の症状に似ているので、飲酒後に低血糖になると「泥酔」と間違えられてその発見が遅れ、さらにアルコールによって肝糖新生の遅延が重なった結果、命を落とすことすらあるので厳重な注意が必要である。

DM患者がアルコール飲料と上手に付き合うにはどのような点に注意すればいいのだろうか。飲酒が許可されるDM患者とは、一般に以下の通り。

 (1)血糖コントロールが良好
 (2)糖尿病治療薬を内服中ではない(2型DMの場合)
 (3)肥満ではない
 (4)肝機能が正常
 (5)高脂血症(特に高中性脂肪血症)を合併していない
 (6)糖尿病性神経障害(特に自律神経障害)がない
 (7)呑み始めても自分の意志で止められる

…これらの条件をすべて満たし、飲酒が悪影響を及ぼす他の病気がない場合に限り、1日150キロカロリー程度までの飲酒が認められる。具体的には、ビールでは約400ml、日本酒では約0.8合、焼酎(35度)では約0.4合、ワインでは約140ml、ウイスキーではダブルで1杯程度であり、逆に言えば、これらの条件を満たしていない人は“原則禁酒”となる。

なかなか飲酒が止められない方は、お酒の代わりに、アルコール分が1%未満の低アルコールビールを利用するなど工夫するのもひとつの方法となる。低アルーコールビールには、エネルギーを普通のビールの半分以下に抑えたものもあるので、それらを試してみる価値もあるだろう。

参考:
http://www.marubeni.co.jp/useful/shinryou/ms13.html
http://www.fujii-s.com/non_al/non_al.htm