●不正診療
【ふせい・しんりょう】
(一般名)


 医科診療報酬点数表で定められる個々の医療行為に対して、点数を過剰に算定、または点数が定義されていない項目に対して算定し、医療費を請求すること。糖尿病(高血糖症)、特に1型DMの診療の場合に不正診療が認められるケースが存在する。

 具体的には、インスリン注射を処方する際に算定される、在宅自己注射管理指導料(820点)および血糖自己測定管理指導料(1型DMの場合、測定回数に応じて400点、580点、860点、1140点の4通り)において、以下のような説明を受けた場合には、不正診療の疑いがあるので注意が必要である。

1)チップの枚数について 医療機関で処方できる血糖測定チップの枚数に「(1カ月あたり120枚まで」などの)上限がある。
2)衛生材料について 採血用穿刺針、消毒用アルコール、脱脂綿、絆創膏などの衛生材料は有償(全額自費)で購入してもらう必要がある
3)血糖測定器について 受診する医療機関を変更した場合、以前から使っていた血糖測定器を継続して使うよう指示された。
4)注入器について 継続して使っているカートリッジ交換式の注射器でも「注入器加算(300点)」は毎回算定されることになっている。

 1については、医科診療報酬点数表には、血糖自己測定管理指導料において算定した点数に応じた枚数(それぞれ、「おおむね20回」、「おおむね40回」、「おおむね60回」、「おおむね80回以上」、)が挙げられているが、これはあくまで「おおよその目安」であり、具体的な上限を定める根拠とはならない。医療機関は、「医師が必要と判断した枚数」は全て処方する責任を負っている。ただし、現実的には「医療機関として、医療機器メーカーの仕切値に応じて、採算性が見込める上限の枚数」は厳然として存在し、「これ以上処方すると、赤字になるので納得してもらいたい」との交渉を患者との間で行うことは可能である。ただしそれはあくまで「採算性」の問題により、患者に対して「了承を得る」ものであり、「治療上の必要な枚数として」や「強制」であってはならない。

 また、2については、在宅自己注射管理指導料(820点)が「必要かつ十分な量の衛生材料および保険医療材料を支給した場合に算定できる」点数であることから、インスリンを処方している場合に、患者に対してこれらの費用の自費負担を求めることは論外である。

 3についても、例え以前の医療機関から支給(または貸与)されていた血糖測定器を返納していなかったとしても、医療機関側からこれの継続使用を求めることはできず、基本的に新規に支給(または貸与)する必要がある。

 4は、在宅自己注射指導管理料の注入器加算について「注入器を使用した場合に加算」とされていたものが、「注入器を処方した場合に加算」に変更されており、カートリッジ交換式の注射器を支給(または貸与)した回の診療でしか算定できない。

 これらについては、医療機関の会計処理担当者が全て把握しておくべきことであり、確かに煩雑であることは理解できるが、医療機関としての資格を持って医療サービスを提供している以上、発覚した段階での「知らなかった」「把握していなかった」などの不可効力的説明は通用せず、「不正診療」との謗りは免れない。あくまで厳格な運用が求められる。