●光凝固
【ひかり・ぎょうこ】
(一般名)
(英:Honeymoon Stage)


 光凝固(ひかりぎょうこ)療法とは、網膜症の発症によって眼底に拡がった、脆くて破れやすい新生血管網を、レーザー光によって凝固させることでその安定化を図る治療法である。レーザー光のような集光性にすぐれかつ高い熱量の光線を、瞳孔を通して眼底に向けて射出すると、眼底では網膜の外側にある網膜色素上皮で吸収されて熱に変わり、色素上皮の上にある網膜にこの熱が波及し凝固が起こる現象を利用している。

 網膜症に対する治療法には、浮腫(むくみ)や新生血管などが生じている部位だけ部分的に凝固する方法と、網膜中央付近の黄斑部(視神経が眼球の外に接続する部分)を除いた広い範囲の網膜を凝固する方法とがある。現在は主として、広い範囲の網膜を凝固する方法が行われている。増殖網膜症の場合は、毛細血管が閉塞して酸素不足になった網膜を凝固することによって悪影響を防げると考えられている。普通、4〜5回に分けて広い範囲の網膜を凝固する。

 光凝固療法は、外来通院で治療でき、点眼麻酔だけで安全に実施できる。部分的に焼く場合と、眼底全体を焼く場合とで異なるが、一回につき数十から数百個の凝固が行われる。1個の凝固は直径0.2〜0.5mm、照射時間は0.1〜0.5秒が平均的で、ちょうど写真のフラッシュを焚かれたのと同じようなものとなる。治療実施の際、眩しくはあるが、酷い痛みなどはあまりないとされている。

 レーザー治療は、早期であれば80%に有効で、時期が遅くなると有効率は50〜60%に低下する。この治療は主として網膜症の侵展を防ぐための「予防的治療」なので、レーザーを受けたとしても視力が改善されることはなく、むしろ若干視力が低下することも多い。しかし、将来の安定した視力を確保するためには最も大切な治療となる。

 もちろんであるが、例え血糖コントロールの状態がよかったとしても1年に1回は、状態が悪ければ数ヶ月に1回は眼底検査を受け、網膜症の進行、特に血管閉塞の状態を調べておきたい。手遅れにならなければ、網膜症の侵展を阻止し、失明への移行も防げるので、注意深い対応が推奨される。