アルドース還元酵素阻害剤
【あるどーす・かんげんこうそ・そがいざい】
(薬剤名)
(英:Aldose Reductase Inhibitor)



DMの合併症の一つに、手足の先にしびれや痛みが生じること、すなわち神経障害が知られているが、アルドース還元酵素阻害剤は、その原因物質であるソルビトールの産生を阻害し、合併症の改善を期待する薬剤である。

ソルビトールは、「糖アルコール」と呼ばれる甘味料(食品添加物)としても知られており、健常者においては

 ブドウ糖→(アルドース還元酵素)→ソルビトール→(ソルビトール脱水素酵素)→果糖

の経路(これを「ポリオール経路」と呼ぶ)を経てブドウ糖から産生され、最終的には果糖となって体外に排出される。

ところが高血糖状態が持続すると、ソルビトール脱水素酵素の働きが追い付かず、ソルビトールが細胞内に大量に蓄積されるようになる。これにより細胞内の浸透圧が高くなり、細胞内に水分が取り込まれ、タンパク質が浮腫を起こしたり、酸欠状態あるいは栄養不足状態になり、結果として元に戻らないような損傷を受けるのである。このような状態を「ポリオール代謝異常」と呼び、神経障害をはじめとする合併症の原因の一つとされている。

手足の末梢神経や、網膜・水晶体、脳、肝臓、膵臓、赤血球、副腎には、他の細胞よりもアルドース還元酵素が大量に存在する。したがって高血糖状態が持続すると、末梢の神経や網膜が先ず障害されることになる。

これらに対しアルドース還元酵素阻害剤は、グルコースをソルビトールに変換する酵素(アルドース還元酵素)の働きを阻害し、ソルビトールの細胞内への蓄積を抑制するものである。

小野薬品工業(株)は、世界で初めてアルドース還元酵素阻害剤としてエパルレスタット(商品名「キネダック」)の開発に成功し、神経障害に有効な製剤として1992年から保険薬として認可を受け、広く一般に使用されている(市場規模300億円前後)。しかし、エパルレスタットは市販開始後から6年の間にその因果関係が否定できない重篤な肝機能障害が17例報告されたため、1998年6月に厚生労働省の医薬安全局発表による「医薬品等安全性情報 No.148」で「重大な副作用」の項にその旨が記載され、注意喚起が行われている。

それ以外に、現在開発中のアルドース還元酵素阻害剤には、フィダレスタット((株)三和化学研究所、2006年以降の認可・販売を予定)、AS-3201(大日本製薬(株)、2004年3月22日現在の詳細はこちら)があるが、ゼナレスタット(藤沢薬品工業(株))、スタチール(アストラゼネカ(株)、メルク(Merck & Co., Inc.)、万有製薬(株))やソルビニール(ファイザー)などは既に撤退している。

参考: http://www.kondo-hospital.or.jp/drug/dm.html
http://www.kaken.co.jp/release/j-Nr001207.htm
http://www.dm-net.co.jp/seminar/jiten/jiten.htm
http://homepage.mac.com/yamajinaoki/tounyou/hosoi/hosoi.html
http://hb8.seikyou.ne.jp/home/pianomed/407.htm