9月22日(日) 16:00〜
体験談「IDDMの自立をめぐって」
5.発表者をまじえてのディスカッション
それでは体験談の締め括り、発表者をパネラーにしてのディスカッションの模様をお伝えします。
司会:
それでは体験談を発表して頂いた5人の方々に対して、会場の皆さんから何か質問はありますか?またとない機会ですので、何か疑問や訊きたいことがあれば遠慮なく発言して下さい。 Q1:
子供が3年のときに発症して今6年ですが、IDDMや合併症についての知識があるのにどうしてそこまでコントロールを悪くすることができたのでしょうか? A1:
なかなか耳の痛い、スルドイご質問ですね(苦笑)。思春期のときなどはどれだけ気を付けていてもどうしてもコントロールが不安定になることがありますし、みんなと同じものを食べたいときもあれば、病気のことを忘れたいこともある訳です。尤も、最近では周りにいくらでもコントロールのための情報や手段がありますので、あとは自分自身の問題でしょうね。 A1:
昔は医学があまり発達していなかったので、たとえばインシュリンの種類も違い(注1)、血糖測定機(注2)もなかったので、コントロールが難しかったことが影響していますね。
(注1)
かつては即効型と遅延型の区別がなかったどころか、豚や牛のインシュリンを使っていた。バイオテクノロジーを使って、人と同じ組成のインシュリン(ヒトインシュリン)が利用されるようになったのは1988年以降のこと。 (注2)
これも血糖を測定できるような機械は存在せず、尿糖を測るぐらいが精一杯であった。
A1:
私の場合、本能のおもむくままに食べ(苦笑)、コントロールをしなかったことが原因です。悪くなった人に訊ける機会はそんなにありませんので大変いい質問ですね(苦笑)。
Q2:
どの程度の期間「本能がおもむ」いた(笑)んでしょうか? A2:
親が、子供に食べさせたがる人、子供がたくさんものを食べることをよしとする価値観を持った人だったので、その影響も大きいように思います。うーん、(こんなことを喋るくらいなら)死んでおけばよかった、と今ほど思ったことはありません(笑)。 A2:
とにかく、「低血糖→食べる→高血糖」の悪循環がいちばん悪いですね。 Q3:
いつもどんなことを考えていますか? A3:
そうですねぇ...。子供がやりたいと考えていることをできるだけ実現させてやりたいですね。 A3:
目が見えているときとできるだけ同じ生活ができるようにと考えています。 A3:
考えていることですか?...専業主婦は忙しいのであまり考えている時間はありませんね。ワイドショーも見てますけど(笑)。それ以外には、子供の指しゃぶりを見たお義母さんから「親が病気なので(子供の)身体が弱い」と言われるので、「あんたにはそんなこと言われたくない」とは思っています(笑)。「ウチの子は○○さんほど強くない」と伝わってきたが、そのことは非常にショックでしたね。 Q4:
脳死の問題はまだ社会的に承認されていないのに、どうして移植ができたのですか? A4:
膵臓と腎臓の場合は、ドナーが心臓死を向かえた段階で移植するので問題にはなりませんでした。 Q5:
病気のことを子供には話しておられますか? A5:
上の子には話しています。下の子にはまだ話していませんが、特に隠すつもりはありません。時期が来ればきちんと話します。 Q6:
福岡のキャンプにはどのような特色があるのでしょうか? A6:
やはりTG(Talking Group)が特徴ですね。
(以下南先生から)IDDMについて思っていることや悩んでいることを皆で話します。どんなことでも話せるよう、そこで話したことは他の場所には絶対に漏らさないことが条件となっています。ただ、傷の嘗め合いだけで終わってはならないので、そこから前に向かう力を得てくれればと思います。
(以下仲村先生から)このTGは、カウンセリングの手法のひとつであるエンカウンターグループ(EG)が手本となっています。ただ単に鬱積した感情を吐き出すだけではなく、グループの中にファシリテーターを入れて、ちょっと追い詰めたりしながら、いい方向に向かうように誘導しています。場合によっては、「ヘルパーは要らない」と追い出すこともありますね。
(以下溝上先生から)どの子もIDDMに対する不安を持っているけど、それは同じIDDMの子にしか判らんところがあるとです。「エンカウンター=出会う」を意味しよりますが、ここでは単に他人と出会うだけではなくて、他人との語らいを通して自分自身と出会う場所になっとるとです。これは傷の嘗め合いだけに終わる可能性もあるので、そうならんように気を付けて、「よし、僕も、私も、頑張ろう!」と思わせることができるかどうかが一番大事や思うちょります。子供に対して「儂にはお前のことが判る訳がない」と言い切れるのは「徹底的に知っているから」なんです。 Q7:
小学1年発症の娘のことについてですが、学校の給食はどうすればいいのでしょうか?あるいは学校から帰ってからのおやつの扱いについて悩むことがあります。 A7:
給食については学校の栄養士の方と相談なさって下さい。また、制限ばかりされていると子供としてはどうしてもいじきたなくなってしまうので、あまり厳しくするのも考えものです。そのようにちょっとしたことが相談できるように、専門の先生とは別に、家の近所にいる開業医にもかかるようにした方がよいと思います。