9月22日(日) 13:45〜 
体験談 「IDDMの自立をめぐって」
2.「中途失明者としての自立」
   竹岡 真奈美 さん

仲村先生からの紹介によりますと、初めてのサマーキャンプに連れてこられたとき、母親が去ると突然会場の旅館中に響きわたるような大声で泣き出したことが印象に残っているそうです。学生のときイギリス留学中に片目を失明し、結局両目を失明することになりました。現在29才で、全盲になってからは3年半が経ちます。


今回のトップセミナーのテーマである「IDDMの自立」は、私にとっては大変耳の痛い話です。それは、自分がイメージする「自立したIDDM」と、現在の自分の姿があまりにもかけ離れているからです。ですからこのような場で皆さんにお話するのはおこがましい気がするのですが、何かの参考にしてもらえれば嬉しいです。

私は小学校1年のときにIDDMになり、学生になって最初の手術のときに左目を失明、右目は何度かの手術で徐々に視力が低下し、3年半前に完全失明に至りました。現在は小学校の課外クラブの手伝いをさせてもらったり、このような 講演の依頼があれば出掛ける生活です。

私は失明してから、自殺を考えたことこそありませんでしたが、いつ死んでもいいような投げやりな生活をしていたこともありました。その私がどうして前向きに考えられるようになったのか、そのきっかけになった3つのことこについてお話しようと思います。

まず一つ目は自責の念です。

私の失明は、交通事故とは違い自分の責任以外の何物でもないので、他に責任を求めることがないようにしています。ただ、頭では判っていても、後悔しないようにするのは難しいものです。私は何かきっかけがないとマイナス思考になる一方の性格なのですが、盲学校の先生をしていた昔の知り合い(キャンプのヘルパー)から、私が入院中に「これまで君がやってきたことで無駄になったことはひとつもないんだよ。これまでの人生は、これからのためにある」と教えてもらったことが大きな励みになっています。この言葉をきっかけに随分と前向きに物事を考えられるようになりました。

二つ目がリハビリと自己覚知です。

私は失明してから、大阪のライトハウスに入所してリハビリを受けることになりました。歩行訓練や、点字の読み方、ワープロ、日常訓練など、自分のペースに合わせて納得いくまで訓練ができました。この訓練によって、自分にはできなくなってしまったと思っていたことが取り戻せたのは大変な喜びでした。と同時に、その喜びは自分に対する自信に繋がっていったのです。自分で新幹線に乗って東京や博多に行ったり、神戸の友達の所に遊びに行ったこともあります。

このように、私は訓練を通して自分自身を知ることができました。訓練を始めて最初の頃は自分自身に直面することが嫌で嫌で堪りませんでした。しかし、自分で自分のことを知ることは、私にとって挫折を知ることである、その挫折こそ自分が立ち直るきっかけとなったのです。

三つ目が、キャンプと友達の繋がりです。

私は小学1年から高校1年までキャンプに参加しましたが、それ以後は参加していませんでした。しかし、発病してからも周囲の人は以前と変わりなく、温かく接してくれました。「子供の頃にIDDMになったがキャンプに参加した経験がなく、誰にも相談できずに思春期の頃を過ごした」。そんな人を見ることがあると、自分にはたくさんの仲間がいて幸せだと思います。特に、実体験を元に説得力のあるアドバイスをしてくれる人の存在は大変有り難いものです。

さて、私のような中途失明者にとっては精神的自立が大きなポイントとなってきます。どん底からの一歩一歩が私を高めてくれました。人生とは他人に語るためにあるのではなく、自分自身のためにあるのだと考えることもできるようになりました。自分のやることに納得し、満足し、自分を肯定できることが大切なのです。そして、そうしたプロセスこそが私自身であると考えています。




*竹岡さんに質問*

Q:

私の知り合いに精神的に不安定になってしまった中途失明者がいるのですが、そうした人にはどうやって接していけばいいのでしょうか?

A:

基本的に以前と変わりなく接してあげて下さい。それが一番嬉しいはずですから。また、さかえを録音したテープを渡して聞いてもらうのもいいかも知れませんね。

主催者側 
より補足:

福岡糖尿病視覚障害者の会は糖尿病協会の特殊分会として設けられています。失明すると入ってくる情報が少なくなるので、録音した雑誌や点字の翻訳などは、失明者にとって大変有り難いものです。また、点字図書館には食品交換表の点字版や糖尿病治療の手引き点字版がありますので、参考にして下さい。また、点字への翻訳やテープへの録音などの活動は、IDDMの人だけでなく、NIDDMの人も対象にしていきたいものです。



ひとこと


中途失明者の方はどうしても目が見えていたときの世界へ拘ってしまいがちですが、竹岡さんはそれを振り切って「今現在の自分」を受け容れようと毎日努力され、少しづつですが確実に前進しておられるように感じました。





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