西陣用語

あいくち(合い口)
  上下、左右の両端をつなげた模様。越数を算出したり地紋作成の際にも利用。
あいもん(合紋)
  たれ紋から主紋、主紋から腹紋に入れる紋。三通や六通などに使用。
あがる(上る)
  千切に巻いた一定量の”たて”を織りかえる。
あぜ(畦)
  経糸(たて)配列順序を乱さぬため、一筋ずつ交互に上下させて組むこと。
  経糸を1、2・1、2の順に組む組織。畦織り。
あぜおり(畦織)
  織物の三原組織の一つ。平織り。経糸を一筋ずつ上下して緯糸を打ち込む織物組織。
あぜがみ(畦紙)
  紋紙の場合の紋針の畦に彫る、または機場にて経糸の畦紙は棒刀畦に彫る
  経糸のつなぎに使用する。
あぜとりがみ(畦取紙)
  経継ぎの時に棒刀畦紙にて畦口をだす紋紙。
あぜる(畦る)
  紋織物において経緯糸の密度が過大であるか、またはあまりに細かく文様
  を表に出そうとするために緯糸が当初の予定どうり打ち込めない現象をいう。あぜり。
あたる(当る)
  図案、紋図などを画く際の概略の下書き。あたり。
あみあな(編穴)
  紋紙連結のために使用する紋紙に開けられた穴。
あみいと(編糸)
  紋紙を編むのに使用する糸、通常は錦糸を使用。
あみや(編屋)
  彫屋(紋彫業者)から依頼された紋紙を編む業者。
あや(綾)
  平織り、朱子織と共に組織の分類の総称する名であり織面に経糸または緯
  糸により綾目が斜めになって連なって現れる斜文組織。
あやめだつ(綾目立つ)
  織物が斜めにくせがでるさま。
あらし(嵐)
  模様図案の松の小枝。
あらふぐせ(粗伏)
  縫取織物用装置の名称。主として絵緯糸(えぬき)を固定するために供す
  る”ふぐせ”の粗目のもの。”あら”ともいう。
あわせ(合せ)
  糸を二本以上引き揃えること。糸を二本以上引き揃えわずかに撚りをかけたもの。
あん(餡)
  ”ふくらし”織の効果を大にするため組織の中空部に織り込む芯糸。
いしょうず(意匠図)
  古来からの和図と、ジャカードと一緒にヨーロッパから入った洋図とがある。
いじる
  箱いじり、紋紙に彫った時、ひとながれいじっている状態。
いとかぜ(糸風)
  静電気の帯電により繊維が相反発し、あたかも微風で糸が乱れているような現象をいう。
いとそうこう(糸綜絖)
  金属を使用せず絹糸、錦糸などに”めがらす”をつけて作製した綜絖ワイ
  ヤーの普及とともにすたれたが、金属摩擦による汚れ防止のため時として
  糸綜絖を使うことがある。
いとばつり(糸羽釣)
  ジャカード機の堅糸(たつばり)一本に対し、綜絖の通糸(つうじ)一本
  を吊込む紋織方式。曲線がなめらかで繊細な紋織物ができるが
  ”ジャカード”の針数の関係で、経緯密度の緻密な大柄をあらわすには不向きである。
いりこみ(入り込)
  暈の一種。かみこみ。
いれじゃく(入尺)
  織上げ後の収縮を予想して、余分に長く織っておく縮みしろ。
いろほん(色本)
  糸や織物の染色見本。
うく(浮く)
  経糸又は緯糸の一部が組織せず遊びの状態にあること。
うつしぼり(写彫)
  紋図によらずに、既存の紋紙を母体として同じ紋紙を作ること。
うらうち(裏打) 
  裏に回った糸や箔を止める組織。うらとじと同じ。
うらかた(裏方)
  織機の織前(おりまえ)位置に向かって左側。
うらとじ(裏綴)
  裏に回った糸の浮きを組織にて止める。縫取織物において、絵緯(えぬき)
  の不要部分が織物の裏に遊びとなるのを地組織に影響しないように織付け
  ること。うらうちと同じ。
うわだて(上経)
  他重組織の織物の地経(じだて)よりも上側に装置する紋経。
うわつ(上つ)
  畦組した経糸の上側に位置するもの。
うわどう(上胴)
  紋織物の地紋等以外の主たる文様を描出する絵緯糸。
えびすこう(夷講)
  10月20日を中心に、その前後数日間の特価売り出し。発祥は江戸の商家で
  毎年1月10日と10月20日に商売繁盛を祈願する恵比寿祭の費用にあてるため
  講を設けたのが始まり。その後商売繁盛祈願が鷲神社の酉の祭(11月酉の
  日)に移行し、売出しは誓文払と合体した。今日では地方により夷講と
  誓文払が同義に扱われ呼称も二様であるが、京都では夷講の呼称を踏襲し
  ている。
えぬき(絵緯糸)
  紋織物の文様を織り出す緯糸(ぬき)。
エレピア
  てほりのピアノマシンに、紋紙に替わってフロッピーによる読み取り装置
  をつけたもの。エレクトロピアノマシンの略。 
おいかけ(追かけ)
  織物を織る時の杼の順の名称。逆は戻し。
おく(奥)
  帯の末端に近い部分。
おくり(送り)
  連続模様のつなぎ部分。紋の返し。
おくむじ(奥無地)
  帯の腹紋から果紋まで織れている無地をいう。
おとし(落し)
  残糸などを再使用するために脱色し、残留色の影響の出ない範囲で新色に
  染めること。
おどる
  機の上下の烈しい紋上げの様。
おなか
  腹紋のこと。
おへこう(御経講)
  織物工。織手。室町時代、大舎人町に集まっていた31軒の機業家はすべて
  日蓮宗信者で、御経講なるものを結成し幕府の保護のもと他宗派の者の開
  業を許さなかった。即ち本来信仰のための団体名であったが、講中の団結
  固く、それぞれ宮廷御用の工芸家であることに誇りをもち、いつしか信教
  団体名が機業家集団の名称となり、やがては機業家自体を意味するように
  なった。応仁の乱の戦乱で大舎人町も潰滅したが、復興後もこの伝統は
  受け継がれて明治維新時信仰の自由がうたわれるまで続き、その後機業家
  の意味から徐々に織物職人の代名詞となった。
おもい(重い)
  機織に際して開口経糸数が極めて多いこと。縫取織物の豪華な文様の形容。
  絵緯糸(えぬき)が多色でなくてもその総越(こし)数が極めて多いこと。
おもぎかい(主機械)
  手機(てばた)ではジャカードで文様を織り出すものと地組織を織るため
  小口のものと2台架装し、踏木を使い分けて作業することが多く、文様用
  のジャカードを”おもきかい”と称する。
おやあな(親穴)
  シリンダーの親いぼにはめて紋紙を送る穴。
おやいぼ(親疣)
  紋紙を順序よく送るためにジャカードのシリンダーに植えつけた突起。
カードレス
  紋紙のない織機。
かえし(返し)
  紋紙の初越より末端までその一回転を”一返し(1リピート)”という。
かえり(返り)
  名古屋帯の部分名称。”おりかえし”。前無地。連続模様の連接部。”お
  くり”。
かけ(掛)
  金糸の太さを表示する単位。芯糸が100デニールのものを一掛けと呼んだが
  最近は120デニールのレーヨンを芯糸に使用したものを一掛けとし、250デ
  ニールのものを二掛け半といっている。
かけばつり(掛羽釣、掛把釣)
  紋意匠図の作図技法の1つ。細い斜線を方眼紙上に描くのに、升目の辺に
  接して階段状に画く”はつり”法 ”すてばつり”よりもやや太い表現に用いる。
かける(欠ける)
  紋が欠けるなどという。
かたよんちょうしょっき(片四丁織機)
  片側にだけ杼箱があり杼は往復する。
かなそうこう(金綜絖)
  金属製の”そうこう”。糸綜絖の対。
かね(曲)
  尺の一種。曲の一尺は30.3。紋業などはこれを使用。
かね(な)け(金ヶ)
  織物に使用する金箔金糸など。使用していないとき”金ヶなし”という。
かま(加間)
  紋織物の一巾間における完全模様一つを一釜という。織物の全巾に同一模
  様があれば二釜である。
かみこみ
  ぼかしの一種。
がらとじ(柄綴)
  縫取織物の絵緯(えぬき)を簡単なそ線模様に固定すること。刺繍のよう
  な量感を生み能衣装調の文様に多様される。
からみ(搦)
  紋織物で文様の表面に浮く絵緯を細かい糸で粗く押さえる。それに使用す
  る糸。
からむ(絡む)
  織物の裏の糸の状態。
かりかま(仮釜、仮加間)
  帯地などの縫取織物の文様織り出しの一技法。二加間の綜絖にて一加間模
  様を織り出す方法で、二加間の一方を縫い取らず、紋紙一回転の後、今後
  は他の一方を縫い取らぬよう、さきと逆の操作をすれば表に出る模様は
  やや小柄ながら、二加間風の紋丈(もんたけ)長大な文様を得られるので
  ある。
かるい(軽い)
  製織時に開口のため引きが少ないこと。紋織物の絵緯の総越数が少ないも
  の。あるいは紋織物の配色が淡彩なもの。
カンカン彫り
   60口400口600口1枚ずつの紋直しに使用、タガネ1本で1穴ずつ彫る。
きめつけ(極め付け)
  天地左右の返りのついている地紋。
きめつけのず(極付の図)
  竹べらで線を引いた方眼紙に増絵の図案を転写する。
きりかえ(切替)
  紋織物において、ある文様の絵緯の色を杼順を変更することなく途中で
  多色に変えること。
きわ(際)
  紋際、耳際、ド際など。
きんし(金糸)
  漆(うるし)や膠(にかわ)などで金箔を和紙に貼り付け糸状に切った平
  金糸と糸を芯に、金箔や平金糸を巻きつけた撚糸。
ぎんし(銀糸)
  金箔のかわりに銀箔を使用したもの。
くう(食う)
  一般に織物は、織り上げ寸法から算出した糸量よりも幾分多く材料を要す
  る。その見かけ上の超過消費をいう。
くくり
  意匠図で柄のふちくぐりの線。
くじら(鯨)
  和裁用に用いた尺度で、鯨尺1尺は曲尺1尺2寸5分。
くち(口)
  織機の経糸開口部。ジャカード機の針数表示。ただし口数表示は必ずしも
  厳密でなく、400口は正確に440本、600口は664本、900口は964本、1300口
  は1300本、1800口は1800本である。
くちすう(口数)
  口のこと。
くみかえ(組み替え)
  紋紙の順番を変更する場合紋紙の組み替えをいう。
けいがみ(罫紙)
  紋意匠紙。織物の緯密度とジャカード機の針数に合わせて所定の倍率に罫
  引きしたもので、これに図案をうつしとったものを紋図という。
けいきん(経錦)
  経糸に複数の経糸を用い文様を織り出した錦。2色以上の経糸をまとめて
  1組とし、それぞれ経糸1本のように扱い整形する。たてにしき。
けん(牽)
  織機に仕掛けた経糸の緊張力。
けんかた(牽方)
  織機の織前位置に面して右側をいう。手機(てばた)において、巻取およ
  び経糸の緊張度をつかさどる”けんぼう”が右側に位置していたところか
  らこの称がある。
けんぼうし(絹紡糸)
  絹糸紡績の略。  
こし(越し)
  緯糸の打ち込みをいう。
こしばく(越し箔)
  駒箔の平箔。
こまか
  ”こまかふぐせ”の略。”ふぐせ”の密なもの。縫取織物において”えぬ
  き”を搦むために役立たせる装置で、粗密の別があり、箔を搦む時には
  ”こまか”を使用する。
こます
  ”こみ”と同じ。経緯の密度をこます。
こうかん(交換)
  杼の動き。杼箱の動き。
こうさばた(交差機)
  松葉2本交差=1の紋針で1.3の糸上げ、2の紋針で2.4の糸上げ、
  3本交差=1の紋針で1.3.5の糸上げ、2の紋針で2.4.6の
  糸上げ、のできる絖。
さいしき(彩色)
  意匠紙に色をぬることをいう。
さかあみ(逆編)
  紋紙を通常とは逆の順番に並べて編みつなぐこと。
さかもん(逆紋)
  絵羽など正紋に対し逆紋。
さし
  織物の縦方向に発生する線状の難の意味。経糸の染色ムラによるもののほ
  か経糸の緊張不揃によるもの(あるきざし)、綜絖次第の影響によるもの
  (ながれざし)などという。
さし(尺)
  ものさし。
さしこ(刺子)
  綿布を重ね合わせて一面に一針抜きに塗った物で刺子織は刺子のように平
  織の上に色の異なる経と緯を浮かせて織ったもの。
さらさ(更紗)
  五彩で人物、鳥獣、花卉(かき)など種々の模様を染出した布。
じ(地)
  無地場。
じあい(地合い)
  織物の基盤をなす組織。また織物の風合い地風。
シージーエス(CGS)
  昭和58年西陣織工業組合ガ中心となり作った紋紙データーフォーマット
  規格。コンピューター・グラフィック・システムの略。
じうめ(地埋)
  染織製品の模様以外の部分を埋めきってしまう色。バックとなる模様の
  輪郭内部埋める場合にもいう。
じがみ(地紙)
  一連の紋紙のうち地組織をつくるための紙。
じきん(地金)
  地緯(じぬき)に金糸を使用した織物。
しけんもん(試験紋)
  織物の組織や模様をみる試験製織用の製紋。
しじしょ(指示書)
  紋図の彫り方を指示する伝票。
しずみ
  経糸を組織的に出し色をしずめる。同色の荒い伏せで色の変化をさせる。
  (てりしずみ)
じそしき(地組織)
  紋織物の基盤をなす組織。
しで
  紋紙を編屋に出すとき紋紙を縛る帯状の紙。
しとみ
  機織の際、切断した経糸の端末などが、他の経糸の開口に干渉して、開口
  不完全の部分を生じた状態。
じぬき(地緯)
  紋織物の地組織を組成する緯糸。
じねうち(地値打)
  製織に要した資材と労力の点以上の評価した織物で見かけの価値。商品と
  して流通するための価値とは別。
じばく(地箔)
  地組織に箔を織り、地緯を裏綴にする。
しみこみ(浸込)
  2色以上の”えぬき”を必要に応じて同じ個所に織り込んで、暈しを表現
  する紋織物の技法。
しめぬき
  地組織や胴緯あるいは不安定なとき固定するときにつかう緯糸で表面には
  出さない。
しも(下)
  織機の”ちぎり”を装置する部位方向。
ジャカード
  ジャカードマシンの略。1804年仏人ジャカールの発明した紋織機械。シリ
  ンダーにより紋紙を横針に押しつけ、その穿口部に対応する堅針を引き上
  げる。これに吊り下げた綜絖により経糸が開口する。針数により400口、
  600口、900口、1200口、1300口、1800口などがあるが呼称口数より余分の
  針を有する。我国に導入されたのは明治6年西陣の佐倉常七、井上伊兵衛、
  吉田忠七ら派仏学生の手による。
ジャガタラ
  ジャカード機のシリンダーの通称。
じゃばら(蛇腹)
  金銀糸の一種。普通の金銀糸は芯糸にすき間なく箔を巻きつけるのに対し、
  撚糸が粗く芯糸が見える程度に箔を巻きつけたもの。
しゃもん(斜紋)
  経糸又は緯糸が斜めに続いて斜紋線をつくる組織。
じゆうこうかん(自由交換)
  平行以外の杼の動き。
しゅす(朱子)
  とじ。5本以上の組織点。
しゅすおり(朱子織)
  織物組織の一種。5本以上の組織。斜文織と違って組織点が連続してない
  ため表面には経緯いずれか一方のみが現われ平滑で光沢がある。
しゅもく(撞木)
  丁字型をした織物の展示用具の一種。ジャカード機のシリンダーを正しい
  姿勢に安定させるための逆丁字型部品。
しょうえ(正絵)
  織物用図案。
しょっき(織機)
  経糸と緯糸を交差させて平面を作り出す装置。手織機、力織機など別がある。
すいっちょう(素一丁)
  単丁杼の織物。
すくい(抄い)
  手織技法の一つで、経糸の下に図案を置き、それに従って小杼で経糸をす
  くって緯糸を越す。
すじがみ(筋紙)
  界切とたれ紋の間、たれ紋と織出の間に入れる越の紋紙。
すてばつり(括把釣)
  紋意匠図への作図技法の一つ。意匠図に表現する際の最も細い”はつり”。
すどうし(素通し)
  紋織物の搦経糸などを地組織用の綜絖に通さず、単に前機のみを通すこと。
  あるいは経糸を”ふるえ”などを通さず直接”おさ”に刺すこと。
すなご(砂子)
  意匠技法の暈し(ぼかし)の一種。砂をまいたようにぼかしたもの。
すみうち(墨打)
  ジャカード機の横針にシリンダーが正対してるかどうか調べるため横針に
  墨などをつけ紋紙に当ててみること。
すむじ(素無地)
  単なる無地織物をいう。
せいもんばらい(誓文払)
  江戸時代京都の商人遊女などが、商売の駆け引きに使った過去一年間のう
  その罪を祓い神罰の許しを願う陰暦10月20日の行事。この日、呉服屋は安
  売りをするのが例となっている。
ぜんつう(全通)
  帯地の表面の全長にわたって模様をつけたもの。
そうぼり(総彫)
  紋紙に、ジャカード機の針全部に対応する穴を彫り込むこと。
そこぼり(底彫)
  紋彫において胴緯(どうぬき)の下を胴緯で彫る。金糸の下を箔で彫る
  など。
そめや(染屋)
  糸染業者。
たがね
  紋紙に穴を開ける棒状の刃物。紋彫用はピアノマシンについている。
たけ(丈)
  織物の長さ。
たたかい
  紋織物表現に於いてその緯糸が地又は先行の緯糸の伏せの出を替えてすき
  間に出るようにする意匠技法。
たち(断・裁)
  広巾織機に小巾二巾〜三巾を仕掛け、製織しながらあるいは織り上げ後に
  これを小巾に裁断する織物。
たち(立)
  意匠図用紙の罫数表示。
たつばり(竪針)
  たてばり。ジャカード機の主要部分。紋紙の穿口点を横針を経て垂直運動
  とし、綜絖の通糸を介して経糸を上下させ、杼道を作る役をなす。
たてつぎ(経繁)
  経糸を織り終えて新しい経を仕掛けたとき、新旧の経糸を一本づつ連結す
  る作業。
たてにしき(経錦)
  経糸に複数の色糸を用い文様を織り出した錦織り。
たるめぬき(弛め緯)
  経糸の密度が粗く、緯糸が密なおりもの(綴織など)を織る際に、強く
  ケンをかけた経糸に対して逆に充分ゆるめて密に織り込んだ緯糸。織巾の
  縮みを防ぐ技法としても行われる。
ちゅうやしゅすおり(昼夜繻子織)
  表朱子と裏朱子を市松模様に配置したもの。
ちょう(丁)
  杼の数を数える単位。(1丁)
つきだし(突出し)
  ”たるめぬき”を織るための技法。緯糸を通したあと筬打ちの直前に、緯
  糸を前方へ突き出し緯糸の緊張に余裕を与えてやる方法。だし。
つく
  意匠図に彩色の後はつりを入れること。
つくりもん(造り物)
  織物関係の器物資材を用いて、演劇や昔話の一場面あるいは時宜に応じた
  事象などを模して組立て、これを展覧して西陣織の宣伝に供した催し。笹
  屋町通の千本通と知恵光院通の間の、機業家有志が自家の表の間を開放し
  て毎年8月23日の地蔵盆の日に公開した。明治初期に疫病の流行で多数の
  罹病致死者がでたとき地蔵供養のため始めたのが起源と言われ、太平洋戦
  争で中断したが昭和25年復活し同45年まで続いたものの資材の高騰と技術
  後継者不足で現在は行われていない。しかし、このような伝承催物を惜し
  む声は大きく再復活の気運もみられるようである。
つりかえる(吊り変える)
  棒刀や伏せ等の順番を吊り変える。
でおち(出落)
  紋織物において、ある色の文様の上端と別色の文様の下端が相接するか
  または同列に位置し、製織時に一色が終わるとすぐ次の越より別色がはじ
  まる場合にいう。
てごしび(手越杼)
  小杼のこと。
てり(照)
  紋様の表現。金銀糸箔などの輝きの強いもの。”しずみ”の対。
てん(天)
  紋様の上、地の対。
どう(胴)
  織物の全巾に時緯とは別の色糸を織り込み、その一部で紋様を表す方式の
  紋織物で、その柄緯糸が総通しに満たないもの。
  この場合地緯糸との割合により半胴とか三分銅とかいう。また縫取織物の
  絵緯(えぬき)をも”どう”と称することがある。
どうくち(同口)
  前後の紋が同じ杼口に上がること。地と同口、胴が同口などという。
どうぬき(胴緯)
  縫取りの絵緯のこと。
とおり(通)
  紋の一返しのこと。
とじ
  織物の絵緯糸の押え。またその方法。ジャカード機の紋針でとじを細工す
  るものを針とじといい、朱子とじ、柄とじなど称するものがある。
とびひらい(飛拾い)
  綜絖制作の方式。通糸(つうじ)を目板(めいた)に通す順を、棒刀の順
  によらず飛び出して拾う鵬。2枚トビ、3枚トビその他がある。経糸の
  摩擦を避け”ながれざし”を防ぐなどの効果がある。
とめがら(止柄)
  織物問屋が織屋に対し、ある特定の柄の織物の販売について自店以外に
  取引しないように指定する柄。
とも(共)
  同一の意。経緯絵緯とも同系色で統一すること。
とら(虎)
  畦織りなどで、経緯密度や繊度あるいはテンション等が不適のために織物
  表面に生じるまだら。
とりこみ(取込み)
  紋織物において、ある文様に使用した”えぬき”をその模様とほぼ同列に
  位置する他の部分にも同時に使用すること。
どろえのぐ(泥絵の具)
  絵の具の一種。泥のようにねって使う絵の具。
どんつく
  組織により規定のよこが打ち込めない様。”あぜり”と同じ。
どんでん
  まっさかさまにひっくり返すこと。腹紋などに反転覆する場合もどんでん
  するという。
なかむろ(中双)
  経糸を素入(すいり)と羽二重を交互に配列すること。経密度が均一でな
  いから織物の組織により斜線が強く現われるが、三枚斜文(錦地)では
  不工合が出ない。また畦織物中双にすると緯糸一越しごとに素入部と羽二
  重部が段状に現われるので、この場合は経糸配列を1・2・1・2とする
  。即ち中双である。
ながれ(流れ)
  意匠法の柄の配置。
ながれさし(流れ刺し)
  綜絖の拾い方が目板の奥行に対して順配列であると、一配列ごとに織物の
  縦方向に線条を生ずることがある。その難の称。多くの場合、畝条(うね
  じょう)の凹凸を伴って美観を害するため、綜絖は通常流れ拾いを避け、
  飛び拾いを常用する。
なぎなたび(長刀杼)
  長刀の刃部の形状をした手織用の杼。
におい(匂)
  花の芯。
にじゅうあげ(二重上げ)
  胴が二色重なって織り上がる。(白赤でトキ)
にじゅうおりもの(二重織物)
  重ね織の一種で二重組織を用いた一重織物。経緯二重織は表裏経糸緯糸共
  に別糸を用い完全に一重織物を上下二枚重ね合わせて同時に作ったもの。
にまいぼり(二枚彫)
  紋彫の場合、一度に二枚ずつ彫ること。
ぬいわけ(縫分け)
  手織の縫取織物に於いて、ほぼ同列に位置する二つ以上の文様を同一の紋 
  紙に彫り込み、同時に二ケ所以上の縫取杼口が作られる場合に、それぞれ
  別色で縫い取ること。
ぬき(緯)
  織物の緯糸。
ぬれぬき(濡緯)
  水に浸して織る緯糸。生糸など比較的固い糸を緯糸として織込む場合、水
  分を含ませると適度の柔軟性と合糸の集束性が増し、織物の風合いも良く
  なるものである。
ねぶる(嘗る)
  図案の縁辺に沿って部分的に細かくふちどる。
ぬいとり(縫取)
  絵緯を織物全巾でなく文様部分のみに織込む紋織物。
のりかかり(乗掛り)
  紋織物に於いて、ある文様の上端部分と別色文様の下端部分がほぼ同列に
  位置しそれぞれの部分が”でおち”でなく相重なってあること。
ばいこし(倍越)
  縫取織物に於いて、地緯一越に対して絵緯を二越(場合により三越)織込
  む技法。押えは通常針綴じの朱子目で、美しく量感ある文様となる。伏せ
  もある。
はおり(半織)
  往昔、織屋は”よんま”の日以外は午後九時頃までよなべをするのが普通
  であったが、秋冬には十時頃まで夜業が延長されよんまの日と差が大きく
  なるのでよんま晩のうち十日と晦日だけは平日と同じ九時頃に終業して半
  織と称した。
はこいじり(箱いじり)
  紋彫り作業で、紋図の枡目を見誤り、正しい位置より一流ずれた位置に彫
  り込んだ状態。
はつり(羽釣・把釣)
  ジャカード機の竪針1本に対し、2本以上の通糸(つうじ)を吊り込む場 
  合の称。通糸の数により2本把釣とか5本把釣とか呼ぶ。把釣が大であれ
  ば比較的小口のジャカード機で割合に大きい一釜模様を織ることが出来る
  が、反面繊細さには欠けることになる。紋図にジャカード機の針の上げ方
  を正確にしめすよう、意匠紙の枡目に指示彩色する作業。
はめこみ(嵌込)
  紋織物に於いて、文様の内部に別色の絵緯で細かい模様を抽出しようとす 
  るとき、二重彫などの便技法によらず、正確に意匠図の通りに各絵緯部分
  を彫り込むこと。
はり(針)
  ジャカードやトビーに用いる縦針、横針。
はりあぜ(針畦)
  紋針を畦に使用、綴織は針畦の倍越。
はりつかい(針使い)
  織物組織の使用に使う棒刀、伏せその他綜絖使い。指示書。
はりとじ(針綴じ)
  紋織物の絵緯を押える経緯をジャカード機の紋針によって上下する技法。
はんこし(半越)
  地に対して縫取りが半分奇数か偶数かどちらか。
ばんさん
  ヴァンサンジー・ジャカードの略。
はんず(半図)
  左右対称の文様を紋意匠図に画く際、その半部のみを仕上げ、残り半部と
  兼用するもの。
ぱんちぼり(パンチ彫り)
  写彫のこと。
ピア
  ピアノ型紋紙穿孔機。紋織物製織のためにジャカード機に装着する紋紙に、
  紋図に従って穴をあける機械。
ひきばく(引箔)
  織物の巾よりやや長めに細く裁断した箔を”へら”の一端の切込部に掛け
  て、経糸開口部に引き込む技術。またその織物、またはその箔。箔が裏返
  ることなく織込まれるのが特長で、昔はすべて手作業であったが近頃は
  半自動のものもある。
ひっかかる(引っ掛かる)
  織物の裏糸がひっかかる。色糸と別糸がからむ状態。
ひっこし(引越し)
  一つの経糸を織り終えて、次の経糸と”たてつぎ”すると、織巾いっぱい
  に多数の結節が出来るので、これを糸のまま巻き取ったものをいう。結節
  ばかりでなく、何等かの理由で、経糸の全幅にわたってある丈を糸のまま
  巻き取った場合も称する。
ひとかえし(一返し)
  紋紙を1から終わりまで織った処が一返し。1本織るのに何偏か織る。
ひとつぼり(一つ彫)
  紋紙の彫落ちの場合に直す道具。駅の切符切りの様なもの。
ひばこ(杼箱)
  レースの両端にあってシャットルの収まる箱状のもの。
ひわり(杼割)
  織物の意匠図を描くとき経緯の密度等の割合により方眼の広狭を算出する。
ふぐせ
  ”ふせ”と同じ。
べたぼり(べた彫)
  紋彫の地紋など一面に彫ること。
べつがらみ(別搦)
  地経に対して別に荒く整経した経糸を使用する総搦、半搦など。
へら(箆)
  箱箆。竹を細く平らにけずり、その一端に引箔を引っ掛けるための切込み
  を設ける。機織の際これを経糸開口部に通し、鉤部に箔を掛けて引き抜く
  引箔用具。
ぽちかす
  紋紙からでるかす。豆かす。
ぼて
  竹を薄く裂いて箱型に編み、これに和紙を張って渋を塗布した収納運搬用
  具。軽量で取り扱いに便利なため、西陣で製品の整理運搬に用いられた。
ほらろ
  絽織の一種。三越ほらろ、五越、七越など。
ほりや(彫屋)
  紋彫業者。
まえきかい(前機械)
  紋織物の地組織だけを織るための小型ジャカード機。文様を作る主ジャカ
  ード機よりも手前に架装し、棒刀のみを吊り通糸は吊り込まない。
 (主に60の機械)
まがい(紛)
  本金に対するまがい金、つまり金色に着色した銀のことでこれを材料に
  造られた箔や金糸類をいう。
ましえ(増絵)
  意匠図の別称。
まめかす(豆かす)
  紋紙に穴を空けたときに出る豆のような紙のくず。ぽちかす。
まわしこうかん(回し交換)
  自由交換の一種。
メートル
  意匠図における色数のめやすになるもの。
もどしこうかん(戻し交換)
  杼の順のこと。地から順番に123456165432など。
ものなおし(物直し)
  織物の種類を交換するために綜絖の前機(まえばた)などを交換したり、
  あるいは別の綜絖に掛け替える作業。
もんあみ(紋編)
  紋紙を錦糸などで編む。
もんがみ(紋紙)
  ジャカード機のシリンダーの一面と等しい大きさのカードで、一枚を緯糸
  一越に充当するよう意匠図の指示道りに穿孔しこれをつなぎ合わせてジャ
  カード機に掛けて紋織物製職に使用する。
もんきず(紋きず)
  織物が織り上がって紋がまちがっているさま。
もんぐし(紋串)
  紋紙をジャカード機に掛けるに際し、順序よく紙流し上に整理するため、
  紙数20〜30枚ごとにその編目に挿入する鉄線。
もんぐせ(紋癖)
  紋織物の文様配列不適や紋図の作図不具合などで、織り上がり品に視覚的
  な錯誤を生じキズがあるごとく見える現象。
もんくち(紋口)
  紋紙の製作に必要なジャカード機の紋針数。普通400口は440本あるが、棒
  刀伏せに使うので紋口400、384などという模様に使用する針数。
モンシー
  テープで紋紙を連結したもの。
もんず(紋図)
  紋織物の図案を所定の意匠紙に写しとったもの。8罫、10罫、12罫が
  ある。
もんなおし(紋直し)
  紋きずがある場合それを直すこと。
もんぼり(紋彫)
  紋図に従って紋紙に穿孔する作業。
もんや(紋屋)
  紋織物の図案を紋意匠図に作図する業者。
もんようとじ(紋様綴じ)
  "がらとじ”と同じ。
やっこ(奴)
  ごく少量の紋紙をジャカード機に掛けるときの重り。通常シリンダーと
  ほぼ同形の角材で、これを輪状につないだ紋紙の内側に入れ、紙流し上に
  置き紋紙の送りにつれて回転させる。
ようず(洋図)
  紋意匠図の方式の一つ。紋針1本、緯一越に用紙の枡目1個を充当し、枡
  目8個ずつをもって太線で囲う。12個もある。
よこ(横)
  緯糸を織り込むこと、またその密度。打ち込みと同じ。
よろけ
  縞模様の一種。縞が直線でなくよろめいているもの。
よんま(宵間)
  5日目ごとの早しまいのこと。その昔、西陣の起業家では夕食後に夜業を
  するのが普通であったが、毎月1の日と5の日は仕事を早く切り上げ食膳
  に魚がついた。
らでん(螺鈿)
  貝殻の真珠色の光を放つ部分を薄く切ったもの。
らでんはく(螺鈿箔)
  らでんを引箔の上にはったもの。これを用いて織ったものをらでん織りと
  いう。
りきしょっき(力織機)
  経糸緯糸を電力により稼働する織機。
りょうよんちょうひしょっき(両4丁杼織機)
   両側面に4個ずつの杼箱を備え、組織に応じて杼箱運動する織機。他に両
  6丁、両8丁、両10丁、両12丁がある。
りんぱ(琳派)
  尾崎光琳の流れを汲む画家グループ。またその画風による図案。
レピア
  先端に糸をつまむ部分を保有し、主軸に連動して往復運動する緯入れの棒
  状部品。
レピアしょっき(レピア織機)
  レピアを用いて緯入れする織機。槍のような細い棒や板で織機の外側に
  向いた大きなパッケージから緯糸を引き出し杼口内に横たえる杼織機の一
  つ。
ろくろ(轆轤)
  無地織物の開口装置。織機上部に左右に渡した軸木でその前後両側に綜絖
  を吊り、一方を踏み下ろすと他方が巻き上げられ両口開口を得るものであ
  る。
わず(和図)
  紋意匠図の様式の一つ。ジャカード機の紋針2本と緯2越に意匠図の枡目
  1個を充当し、縦横10個すなわち経緯20本ずつを太線で囲う。洋図の対。
わたる(渡る)
  糸が渡ること。
わらう(笑う)
  織物の経緯密度が粗く、引っ張る擦るなどの力を加えた場合、織目に隙間
  を生じること。
わりつけもん(割付紋)
  1個または数個の単位文様の配置を全体の釣り合いを勘案して割り付ける
  文様構成法。有織(ゆうそく)文などの左右対称形の文様。
われ(割)
  組織上の欠陥。

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