京都新聞 1995年 1月25日号

時間旅行で歴史学べる
3次元的ソフト 京の中小企業が開発

 室町時代などへタイムトラベルを楽しみながら歴史学習ができる教育用パソコン・ソフトを、京都市内の中小企業が開発した。京都の地図上を移動し、歴史(時間)を自由に行き来して、年表の中から特定の歴史事件を選ぶと、音声や動画、写真などでその事件を表現するユニークなマルチメディア対応ソフト。 データ作りには、京都の社寺、能などの伝統芸能に携わる人らが協力、「本物」の歴史事象を体感できる。教育関係者から「従来の平板なソフトに比べ、より生き生きとした歴史が学べる」と期待を集めている。
 京都市南区西九条御幸田町、ソフト開発会社「アクト」(秋田公司社長)と京都市立永松記念教育センタ−の堀康廣指導主事ら研究グループで、開発した学習用ソフトは「タイムトラベル in KYOTO with GPS」。
 京都の地図上の位置を確認しながら、時間を移動し、各時代の歴史と場所を自分なりのテーマで探索する三次元的なソフトで、SF映画のようにタイムトラベルを楽しみながら歴史を学べる仕組み。これまでのソフトは、一定のシナリオに沿って展開するものが中心だったが、今回のソフトは自由に個々の歴史事象を選択でき、それに関連した人物、事件などを次々に探索できる。
 しかも、画面に映し出される歴史事象は、市内の社寺、伝統芸能関係者らの協力で可能なかぎり本物の衣装などを使って歴史を再現。音声、動画、写真などを駆使しマルチメディアに対応したソフトに仕上がった。
 秋田社長らは、昨年夏に文部省が募集した学習用コンピュータソフト開発事業に応募。約100グループの中から10グループが選ばれたが、その1グループとしてアクト社が独自に保有する工業用のソフト技術「マルチリンクシステム」を教育、学習などの分野に応用、開発にあたっていた。
 ソフト開発に協力した堀主事は「従来のソフトは一定のシナリオに沿って知識教育する仕組みだったが、今回のソフトは自分が課題を見つけながら、自由に情報の空間と時間を移動でき、しかもマルチメディア対応で歴史の流れを実感させる内容になった」と評価する。秋田社長も「伝統芸人の保持者や社寺の協力で、1200年の京都の歴史、文化を世界に発信できる内容のソフトになった」としている。ソフトは来月から実験学習で京都市内で使用される。

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