授業にあったソフト作り
コンピュータ教育を充実・拡大していく上で、ソフトの善し悪しは重要なポイントとなる。そのため、文部省は、今年度予算に学校現場の実際の教育活動に合った良質なソフトウェア開発事業費を計上し、民間企業の技術者、学識経験者、学校の先生などからなる開発チームを募集していたが、このほど応募の98グループの中から10グループが決定した。10グループは、1教育委員会、22企業が参加、来年3月までの開発を目指す。各グループの開発成果は公開が義務づけられ、各メーカーのノウハウと現場の先生のノウハウが交流することで、質の高いソフトが生み出されることが求められている。文部省では来年度もこの事業を継続するために概算要求している。
1教育委員会22企業が参加
先生の要望入れ開発
学習用ソフトウェア開発事業は、学校現場のニーズに合ったソフトを開発することが目的。しかも、そのソフトを使いコンピュータを道具として活用することで、学習意欲や主体的な判断力、表現力などの力を育てる教育活動を支援できるソフトの開発を眼目にしている。
学校の先生、学職経験者、民間企業、都道府県教育委員会などがグループを組んで、現場の意見を取り入れながら、今年3月までに開発する。開発委託費は、1グループあたり約2千万円。グループ内の企業は、開発されたソフトを文部省の許可を得て販売することもできる。また、研究開発終了後、6ヶ月以内に各グループはソフト開発の成果を公開することが定められている。
今回応募のあった98グループから、教育的観点、技術的観点の審査から委託が決定した10の研究開発グループには、1教育委員会、22企業が参加。公表されていないが、10グループごとに、学校の先生、学職経験者が加わり、想像力や表現力、課題解決力を育てるソフトを開発していく。
どんな内容のソフトが開発されるのか。
小学校5年社会「運輸・通信」学習ソフトの開発グループ代表者である静岡県教育委員会は、新学力間にたった教育の支援強化と現場により対応したソフト作りをねらいとしてあげながら、開発するソフトの内容について、「子供一人一人が調べてみたいと思うことに対応できるデータベースソフト。また入力したり、調べた資料を加工したり、シュミレーション機能を持ち、さらに文字、音声、動画といったマルチメディア機能を持たせることで、想像力、表現力を育ててみたい」という。同グループでは、これまで市販ソフトの洗い出しや社会科で必要となるソフトの内容について意見交換をし、この10月4日に研究開発グループ準備会を開いた。
また、東京書籍を代表とする研究開発グループの「マルチメディア地域学習支援ソフト
MY TOWN」は、生活科2年、社会科3、4年に対応した。身近な地域を絵地図にまとめる学習を支援するソフト。「絵地図の簡易作成機能を持ち、画面上の建物や公園などさまざまな絵記号のシールを貼り込むことができる。更に、マルチメディアの簡易オーサリング機能を持ち、実際の写真や動画、お話を入れ込むことができる」(同社システム開発部岩崎敏宰氏)。
友に数学関係のソフトに強いTDKと日本アイ・ビー・エムが参加しているのが「高等学校数学C対応『行列と線形計算』」ソフト。同グループでは、「まったく新しい取り組みなので、ご指導をいただく寺田先生とも連絡を取り、早速プロジェクトをスタートさせる。大学入試にもよく出るだけに真に役立つものを作る」(TDK記録メディア事業本部CAI部平盛誠氏)という。
佐藤隆・文部小中学校課課長補佐の話「予想を上回る98チームの応募があったが、調査研究協力者会議の意味を踏まえ、教育的観点、技術的観点を考慮し、『ぜひこういう教育内容を盛り込んだソフトがほしい』というものを選んだ。
この事業の目的は、学校の教育活動に合ったソフトを数多く供給すること。開発の結果、現場の先生に使いやすいソフトができれば、一般に公開し、他のメーカーの問い合わせに応じることになっている。
現場が何を求めているのか、分かってくれば成功だろう。そのためにも、この事業は数年間は続けたい。」