
北東アジア国際アカデミックフォーラム釜山会議(平成12年度)要旨
「日韓パートナーシップの途 」
恩田 久雄(ロシア極東国立総合大学函館校 教授)
1.「21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ」
1998年、金大中大統領訪日によりこの日韓共同宣言に、日本は<痛切な反省と心からのおわび>を
明記して署名した。
大統領はまた「和合する人類、平和な世界の建設に寄与していく韓国は東邦の礼儀の国と呼ばれて
来た」と言われた。(2001年韓国訪問の年 宣布文 2998.9.26)
共同宣言、宣布文ともに未来志向のパートナーシップを礼をもって築かれる決意の宣明であると日
本人は理解している。
2.「礼は往来を尊ぶ」
大統領の言葉から、私は「礼は往来を尊ぶ」を連想し、さらに「朝鮮通信使」の往来を想起した。
日韓両国で今なお盛大な例祭が行われている「朝鮮通信使」について、韓国文化観光部「2001年韓
国訪問の年推進委員会資料」は次の通り述べる−「通信使の通信は今日のような電気、通信といった
通信ではなく、「信じる心で相互交通する」という意味であった。韓国から日本に向かった通信使を
日本では「朝鮮通信使」と呼び、その後、通信使の訪日は1607年から1811年まで総12回に及んだ。・・・
通信使は両国民の平和的関係を維持させた公式的な外交使節団であると同時に、先進文化の伝播と交
流の文化使節団でもあった。・・・」
3.儒教の理念(仁義礼智信)と韓国
礼、信、ともに儒教の重要な理念として現在の韓国に強い影響力を持っている。「・・・西洋文化の
急速な流入と波及にもかかわらず、現在の韓国社会では、政治・経済・社会など、あらゆる分野にお
いて伝統的な儒教の理念と価値観が残っており、その影響力は未だに大きい。・・・経済発展に対する
儒教の役割に関して論議し・・・その伝統と理念を理解せねばならない。・・・韓国の経済発展の初期状況
の中から高い貯蓄が可能であった原因は、儒教の「節用精神」から探すことができ、学問重視の儒教
の伝統的習慣からあらわれる高い進学率、家族主義から出発した社会共同体精神に基づく平等な所得
分配・・・などは韓国の伝統文化である儒教でなければ説明しきれない。・・・一方、朝鮮朝の儒教は、人
間の本性を追求し行動規範として「礼学」が発展した。・・・韓国経済発展に直・間接的に影響を与えて
きた儒教が、韓国の先進国化に肯定的役割を果たすためには、次のような選択に迫られよう。すなわ
ち、韓国の儒教は「闘異端論」に基づく閉鎖的儒教から脱皮して新しい変化に適応しながら韓国社会
を牽引する新しい儒教として「温故而知新」の儒教へと着替えるか、さもなければ、韓国の伝統的儒
教を前近代的な遺物として歴史の舞台から一掃し、韓国社会を西洋的個人主義と合理性の理念や価値
観にゆだねるのか、のどちらかを選択しなければならない状況に直面している。」
(「韓国の経済発展と儒教理念」金昌男(東亜大学)・朱星煥(建国大学):環日本海研究第6号・2000年)
ここで現代中国でも文革時代の批孔運動はあったが、企業経営の理念に原始儒教の祖・孔子の教え
を積極的に生かそうとしていることにも触れておきたい。(中国国際文化書院主催・中国科学院ほか
後援「中日企業文化と社会経済発展に関する国際シンポジウム、1995.10.18−21、北京)
4.儒教の理念が希薄化した日本
韓国で変容を求められながらも生き続ける儒教の理念は、日本においては希薄化し、完全に韓国に
兄事している実情にある。
その遠因は、朝鮮史とそれに係わってきた日本についての理解度と客観的知識が低いことに求めら
れよう。日本の歴史教育の再反省が必要である。
5.北朝鮮における儒教理念の行方?
北朝鮮は、同じ朝鮮民族の朝鮮人が身に着けより良い方向に行かそうとしている儒教の理念を完全
に放棄したかの如くである。
日本人拉致疑惑、北朝鮮工作船事件、債務不履行などに「知らぬ」で押し通し、 国際的信頼度を
大きく損いながら「信」も「礼」に弁えない態度を続けている。それに対する評価は、添付のCountry
Risk Ratings of Korea,North korea, Russia and Chinaに照らしても明らかである。
6.韓国の太陽政策とコリアン・ネットワークに期待する日本
唯我独尊の「ウリシク(われわれ式)社会主義」と「強盛大国」をスローガンとする金正日総書記
の北朝鮮。そこと国交回復を図ろうとしている日本人は内心に大きな戸惑いを感じている。願わくば
韓国の太陽政策とコリアン・ネットワークにより、北朝鮮を温かく包容して人間の心、さらに望むら
くは、儒教の仁義礼智信を重んじる人達へと改心させて欲しいものである。
7.日韓パートナーシップの途
望ましい日韓双方がグローバルに発展し続けるためのパートナーシップはどの様なものか。この小
報告は、両国の社会各層で率直活発な意見が交わされることを願い、その刺激になればと思い行った。