第1回研究会(11/30)「環日本海地域の環境に関する研究会(第1回)
「製造業における環境活動―その目的と果たすべき役割―」
大瀬 潤三(鞄津製作所環境管理室長)

                            
1) 背景
有史以来人類はひたすら豊かな生活を追い求めてきた。とくに、18世紀の産業革命をきっかけ
とした科学技術の飛躍的発展は人類の希求している夢を一つ一つ現実のものとし、とりわけ医療
技術の進歩は寿命を大幅に伸ばし、大きな人口増加をもたらした。しかしながら、産業隆興と人
口増が少しずつ地球環境を蝕んでいるとは往時誰も思うべくもなかった。さらに科学技術の進歩
は軍事技術の進歩につながり、幾度となく繰り広げられた大戦、国際紛争という愚行を起こして
きた。人類はここで大きな学習をした。科学技術の平和目的的発展であり、第二次世界大戦後の
50年、世界は科学技術を礎にひたすら経済発展を目指してきた訳である。そして、この間によ
うやく地球環境の病的状況に気づくことになる。公害問題は大きな反省材料であったがそれはあ
くまで局所的であり、グローバルな地球全体の、人類の存亡に関わる問題としてはとらえてはい
なかった。その意味で1992年のリオ地球サミットは全世界的に地球環境問題提起の大きなきっか
けとなったと言えよう。ひたすら経済成長一辺倒で突き進んできた先進諸国は地球環境破壊とい
う大きな負の遺産を残し、また開発途上国も先進国と同じ歩みを辿っている現実に対してアジェ
ンダ21は「経済の持続的発展と環境保全」を謳い、地球環境保全のための世界標準創出に向け活
動を開始し、その結果1996年8月に規格化されたものがISO-14001環境マネジメントシステムであ
ることはご承知の通りである。国際標準化から4年を経過し、2000年7月末現在全世界で1万8052、
日本では同年9月末で4471のサイトが認証を取得しており、当初の製造業からサービス業、地方
自治体、小売業、大学他にそのウイングを広げているところである。確かにISO-14001は環境保
全のためのツールとして非常に有効であるが、これだけで地球環境を大きく修復できるとは思え
ない。すなわち、親会社―下請け―孫下請けのピラミッド構造によって成り立っている日本の経
済構造から、ISO-14001認証取得企業4471サイトは日本全国全ての事業所を考えるときそのスケー
ルは高が知れているし、それらの環境活動の結果としての環境負荷低減は大きな量ではなかろう。
さりとて中小・零細に全てISO-14001認証取得を義務づけるのは愚である。ここに後段で述べる
環境での新たな「役割」がクローズアップされる。
本論は、一製造業の環境マネジメントシステム導入と今日に至るまでの環境活動の経験を踏まえ、
今後とるべき環境活動、企業の役割、経営の中での環境の位置づけなどに言及する。本論により
一人でも多くの人が環境保全に関心を抱き行動を開始されることを願うものである。

2) 取組み目的
ここでは、ISO-14001を中心に据えたメーカーでの環境活動の取組み目的について実
態に即して述べる。
@ 当初の目的
昭和30年代後半に起こった公害問題を引き金として企業はそれに伴う法規制強化に
対して法遵守を目的とした環境保全の専門組織を形成し活動を展開してきた。しかし、
1996年の環境国際標準規格ISO-14001の出現は生業とする事業そのものの盛衰がか
かるという認識で企業はこぞって環境マネジメントシステム構築のための部隊を組織
し、とくにISO-14001認証取得に向けた活動が盛んとなり現在に至っている。事業の
盛衰とは、ISO-14001認証が商売上の鑑札であるとの認識、先んずることによる企業
イメージ向上、輸出、とくに欧米向け輸出には不可欠な条件といった各企業のISO-
14001認証取得の当初目的からも伺える。しかしながら、一方で景気の低迷が続く中
で環境保全に対する大きな費用負担は、ここに来て当初の目的を大きく変化させ始め
ていることに気づく。すなわち、これまではISO-14001認証取得とその継続のための
活動が企業の環境活動の大半を占めていたが、今やISO-14001を環境活動の中で一つ
の経営管理ツールとしての位置づけに変え、環境を経営に取込むことが企業の体力・
競争力強化につながることを自覚し始めたのである。
A 現在の目的
今、手元にISO-14001の日本語版であるJIS-14001がある。この規格の中に数多くあ
る「環境」の字句を「経営」に置き換えてみる。すると、これは市販の経営管理に関
するどの教本より優れていると感ずる。経済の持続的発展と環境保全の精神が行間か
ら読み取れ、経営の原則である投資・出費の回収と環境保全を併せて達成するツール
として新たな存在感を見出す。1996年に始まったISO-14001認証制度は4年が経過
しており、初期に取得した企業は3年目の更新審査を迎え、大きな飛躍が求められて
いる。重要なことは環境活動の目的を当初のものからさらに経営に融合させるための
ものに変えているかどうかである。メーカーであれば環境をキイにして自社の製品を
どう市場で伸ばすか、これは経営の基本課題である。環境負荷を少なくした環境配慮
型製品が他社製品を差別化することは疑いなく、その創出は事業拡大と環境負荷低減
の一挙両得を可能にする。さらに、環境配慮型製品の開発件数といったものをISO-
14001で言う、環境目的・目標に掲げ活動を推進し、P-D-C-Aのサイクルを回してシ
ステムとして成果を上げるようにすればISO-14001は経営の課題達成に効果的なツー
ルとして使える。また、地震、火災などによるたとえば有害化学物質の流出による環
境汚染は予め緊急事態を想定してマニュアルを整備し、教育・訓練を行い、その実行
状況を内部監査でチェックしておくことで環境汚染防止と環境リスク回避がはかられ
ることになる。このようにして見てくると、環境活動の目的を当初のISO-14001認証
取得そのものから、経営に如何に融合させたものにするかで得られるものは変ってく
る。環境で先進的な企業は一様に環境を実質的に経営に取込んで、大きな成果をあげ
ており、このことは将来のあり得べき経営の姿を暗示させるものである。

3) 環境活動の変遷
当社の環境活動に照らして見るとその内容は、環境への取組み目的の変化に合わせて
大きく変化していることが判る。初期の主たる活動は、省エネ、廃棄物削減、リサイ
クルであり、今日では、グリ―ン調達、環境配慮型製品、化学物質管理と変化してき
ている。これは世の中の趨勢を反映しており、たとえば消費者の環境に対する意識の
向上は環境に優しい製品を求め、環境に配慮しない商品の市場からの締め出しを加速
する。また、従来コスト高であったグリーン商品は消費量の上昇に連れコストが下が
る傾向にありグリーン化は今後一層拍車がかかるものと思われる。当社の環境活動で
言うグリーン調達はまさに世の中の動きを反映したもので環境配慮の事務用度品から
近い将来は自社の製品を構成する材料、部品にまで歩を進めることになる。
環境配慮型製品は今のところ家電、事務機、自動車などの業界で進んでいる。とくに
家電は家電リサイクル法、省エネ法の規制強化により製品に対してリサイクル率、消
費電力削減の具体的目標値が設定されその実現が義務づけられた。しかし環境がらみ
の法規制は家電のみならず今後は全ての業界、製品が対象となっていくであろう。従
ってメーカーは環境配慮型製品を現在は他社製品との差別化、将来は生き残りの最大
要因と位置づけ環境活動の主役に据えてきている。
ダイオキシン・環境ホルモンに代表される非意図的に生まれた有害化学物質に関わる
記事が毎日のように新聞紙上をにぎわし国民の関心が高まっている。一方、意図的に
作り出した化学物質は数十万種あると言われ、その有害性、毒性、生態系への影響に
ついての検証はようやく緒についたばかりである。いわゆるPRTR法はこれら有害化
学物質の環境への排出並びに移動量をつかみ、その削減をはかることで環境汚染防止
と人体への悪影響を排除するために施行されたものである。報告義務のある化学物質
は現在数百であるが今後増やされるであろうし、企業においては対象物質以外でも多
くの化学物質が使われており、その管理強化が環境リスク回避の点から必要である。
さらには化学物質については原価管理があいまいであり総合的な観点から原価を圧迫
している面があることは否めない。化学物質管理はその意味で有害化学物質を排除し、
使用量を削減することで環境リスク回避と経費削減をはかるものである。
従来からの活動である、省エネは全員参加型で昼間の消灯、空調の設定温度変更、高
効率電気設備への変更等だけでは今以上の削減効果はもはや望めないほど省エネルギ
ー活動が浸透した。従って技術開発動向と市場価格を見極めつつ自家発電、燃料電池
導入といったダイナミックな設備投資で売電をも視野に入れた活動を展開する必要が
ある。さらに、廃棄物削減についてはゼロ・エミッションが叫ばれており、廃棄物運
搬・処理費用とのからみでの中間処理設備導入、リサイクル技術の進歩を横睨みし、
最終埋め立て地への廃棄量を限りなくゼロに近づけることで埋め立て地の逼迫問題解
消への寄与と環境リスク回避・費用削減を狙う。

4) 直接効果と副次的効果
環境活動を推進すると、ゴミ排出量の削減、使用電力量・水道量など物理量の節減に
伴い、ゴミ運搬・処理費、電気代、水道代など貨幣価値量の節減効果が得られる。し
かし、 これら直接効果だけでは環境活動に費消した設備投資、経費を賄うことは出来
ない。考え方を変え、あるいは次への行動のための感度を良くすると思わぬ副次的効
果が得られる。当社は環境機器、環境分析計の製造・販売といった環境ビジネスが従
来から主要事業の一つであり、当然追い風に乗らなければならない。しかし、環境ビ
ジネスが急激に伸びると言われる中これら計測機器の分野の市場の伸びは知れており、
当該事業部門は厳しい市場競争を強いられている。
一方、当社環境管理部門である環境管理室に入ってくる情報、あるいは取引先との付
き合い、顧客との接触などの機会をビジネスの観点で捉えると有益な情報が交錯して
いることがよく判る。これら情報に如何に早く対応するかで十分商売につながること
がこの一年で実証されている。ここに事業部とは違った新たな環境ビジネスの胎動を
感じさせる。まさに環境活動の副次的効果の最たるものと言えるし、さらに、一般管
理部門の人間とて事業部同様ビジネスに参画し、その結果業績確保に貢献したという
体験は各自を意欲的にし従来にない外向的な姿勢を発揮するようになりこれこそ環境
を通じての人材活用、人材開発の実践と言える。これらのことは、環境が今や以前の
公害対策としての受け身の環境保全から大きく脱却し、経営の中心に据えるべき存在
に成り得ることの予兆と思えるものである。ISO-14001認証取得のみを目的として環
境活動に取組むならこれら多くの副次的効果は望めないであろう。ISO-14001を取る
、取らないは別として、受け身でなく主体的に環境に対応する姿勢を持ち、行動する
ことが企業の生き残りの術になる。多くの企業が今もってISO-14001認証取得そのも
のを目的として活動を進めているが、これは正しいとは言えない。先行企業はこれら
の企業に対して環境マネジメントシステム構築の目的を明確にさせ経営のツールとし
て貪欲に利用し効果を求める姿勢を植え付ける指導が必要である。

5) 環境経営
ecology(環境負荷の極小化)とeconomy(収益の最大化)の統合を目指す環境経営の
確立が話題になっている。ISO-14001導入時あるいは環境マネジメントシステム構築
の過程では法遵守のための設備投資が積極的に行われた。生産設備、研究開発用設備
よりも優先的に環境設備投資がなされる、というのが企業共通の今日的傾向であろう。
過去に溯って、為された環境投資を、その目的と効果について整理、分類してみた結
果いくつかの示唆的な点が浮き上がってきた。代表的なものを以下に述べてみる。
@ 法的対応
環境リスク回避を目的とし、費用が大きく、収益向上はほとんど期待できない。
騒音防止装置、代替洗浄装置、危険物貯蔵所の改造、土壌・地下水汚染調査
例:ジクロロメタンの規制強化に伴い、炭化水素系洗浄装置に変更
    ジクロロメタンは発癌性物質であり条例により規制強化される。ジクロロメタン
    の代替洗浄液を炭化水素系のものとしたため、防爆構造の洗浄設備が必要となり
    29百万円の設備投資を行なった。これの金銭的な見返りはゼロである。
A 全員参加による環境保全活動
一人一人が環境を自分の問題としてとらえ、活動を推進。固定費の中であり、大きな
収益が得られる。
省エネ活動、ゴミ分別活動、両面コピー、裏面コピーの徹底
例:ごみ分別活動
    各自にゴミ分別箱を供与、部門毎に分別ゴミ集積箱を設置し分別を徹底した結果、
    活動前に比べ約20百万円のゴミ運搬・処理費用が削減された。
B イメージアップ
イメージアップにつながる、あるいは会社PRになるが費用は大きい
他社に先駆けてISO-14001認証取得、環境報告書発行あるいは国連大学プロジェクト
の支援、寄付などによる会社のイメージアップ。
C 広告宣伝
大きな費用が発生し、効果は定性的であり収益はあいまい
環境製品、環境活動、外部団体支援、寄付など環境を前面に押し出した広告宣伝
新聞・雑誌広告、TVコマーシャル、環境関連の展示会出展
D 収益改善環境投資
意図的に環境負荷低減と収益向上の両方を目指した投資
Cd廃液無害化処理装置、化学物質管理システム、小口廃液処理装置、老朽空調機の更 
新、電力使用量モニターなど
例:Cd廃液無害化処理装置
    従来Cd廃液は特別産業廃棄物として運搬・処理に大きな費用をかけていた。こ
    の廃液の中間処理を行なう無害化処理装置を導入した結果、1年弱で投資の回収
    が可能となった。今後さらに環境負荷低減と費用の削減の目的を達成すべく、 中
    水化処理装置、自家発電装置など比較的大型の環境設備を導入することを計画し 
    ている。
E 商品創出
当社の環境設備として、新たに開発した設備・ソフトもしくは当社製品の現場設置を
さらに進めて商品化したものであり、環境負荷低減・リスク回避に加え、顧客の当社
工場見学時のPR効果、外販による営業利益の確保が見込まれる。
ごみ自動計量システム、重金属モニター、化学物質総合管理システム、環境影響評価
ソフト、排水モニターなど
例:当社の電子天秤技術を応用した試薬管理システムと他社のPRTRシステムを統
    合した化学物質総合管理システムを共同開発し社内に導入した。化学物質管理強
    化と使用量削減により環境リスク回避と収益向上がはかられ、さらに外販により
    営業利益確保が期待できるものである。
 以上、環境投資の変遷の具体例を上げ環境が経営に如何に取込まれていくか検証を
 行なったみたが、これは当初から意識的に為されてきた訳でなく3年の環境活動の
 浸透が改めて経営の中での環境の位置づけを明確にしてきたことに他ならない。

6) 活動の主役
環境保全活動は企業にせよ、自治体にせよ、その立脚する状況と取組む目的により自
ずと対象が異なってくる。企業では製造業か非製造業か、製造業でも家電、機械、化
学といった業種で活動の目的、活動内容は大きく異なるであろう。自治体では、その
土地に有する企業の形態、地理的条件等によって活動は画一的ではないであろう。こ
こでは、製造業として今後の動向を予想しつつ活動の主役は何とすべきか論ずること
とする。
1999年4月施行の「改正省エネ法」は家電業界に大きな衝撃を与えた。この法改正は、
地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量削減をはかることを目的とし、家電商品
に省エネ目標値、目標年度を定め家庭での使用時の電気エネルギー消費の削減をはか
ろうとするものである。家電メーカーにとってこの法律が過酷である理由は、それま
でも行政指導で再三にわたって省エネを迫られ、家電メーカーは都度設計変更に関わ
る大きな開発費用を余儀なくされたこと、目標値は98年秋の時点で最もエネルギー性
能が優れている製品の性能とする「トップランナー」方式で決められること、この目
標に達しない製品は公表され、場合によっては市場から排除されること、が挙げられ
る。この法改正は家電メーカーにとって生き残りを迫られたものであることは言うま
でもない。エアコン、冷蔵庫、テレビ、ビデオテープレコーダー、蛍光灯器具が対象
製品であり、例えば、冷蔵庫では、2004年を達成年度として、1997年度比63%もの
高いエネルギー削減目標が設定されている。同じように、2001年4月施行の家電リサ
イクル法は資源の有効活用を目的として4製品を対象に50%以上の再商品化率が義務
づけられる。これらは何も家電に限らず、今後さらに業種が拡大されると見る必要が
あろう。そのためには、今後の状況変化を想定して今から環境配慮型製品の創出をメ
ーカーは心掛けておくことが肝要である。
メーカーでは、社内の電気使用量、ゴミ排出量が環境負荷の最大要因としてその削減
を環境活動の中心に置いているところが大半であろう。しかしながら、資源の採掘、
生産、運搬、客先での使用、製品の廃棄というライフサイクルで考えると、製品こそ
メーカーの環境負荷最大要因であると言って過言ではない。法律強化もさることなが
ら、消費者の商品を見る目が大きく変りつつあることを認識したとき、メーカーは好
むと好まざるとに拘わらず自社の製品を環境活動の主役に据え環境にやさしい製品と
すること、そのことが将来生き残りの要件であることの自覚が必要であろう。
当社はこのような背景の中、環境活動の一つとして環境負荷低減設計指針を策定し、
環境配慮型製品の創出に取組んでいる。省エネ・省資源、分解性、素材安全性、リサ
イクル率など環境配慮の9要素につき設計基準、評価を定めて新製品開発設計に適用
を開始している。しかしながら、これら9要素全てを満足させる設計には非常な労力
と時間がかかるため年度によって強化する環境要素を決めて設計に反映させるように
している。一方、当社は計測器を中心とする環境ビジネスを主要事業の一つとしてい
る以上、環境貢献を標榜する環境製品が製品そのものの環境配慮を怠ることは許され
るものでなく、事業拡大の点からも不可欠であると考えるものである。さらに環境製
品の開発件数をも環境活動のプログラムに組み込むことで製品を主体として、環境負
荷低減と事業拡大の実効を上げるべく活動を推進しており、当初の省エネ、ゴミ分別
といった全員参加型の活動から、製品を活動の主役にすることで環境活動は未来永劫
継続・改善を期待できることになる。

7) 環境ビジネス
通産省に続いて環境庁も環境ビジネスについて2010年の事業規模の見通しを明らか
にしている。通産省の35兆円に対し、環境庁は最近になって40兆円との予測値を公
表したものであり、いずれにしても大いに期待を抱かせるものである。
循環型社会システムの構築は環境ビジネス創出に新たな刺激となりうるものとなろう。
Reduce,Reuse,Recycleの3Rの社会は今までの大量生産、大量消費、大量廃棄の社会
構造に真っ向から対抗するものである。ただ、環境ビジネスの大きさだけにとらわれ
従前の考え方から脱しきれない市場への期待は失望を招くだけのものとなる。たとえ
ば、前述の家電リサイクル法では50%以上の資源再使用が義務づけられるが、それは
加工にせよ、組立にせよ従来の仕事の50%以上は不要ということになる訳である。そ
のもとで分解、整備、手直し、再組立といった新たな仕事が生まれてくることになる。
そこで要求される商品には環境配慮は勿論、長寿命という要素が加わってくる。
また、廃棄物処理と言えば、今までは単に廃棄物を埋め立てるか、燃やすかしかなか
ったものが、リサイクルを前面に押し出したビジネスに当然変ってくる。ゴミは分別
されReuseされるものがまず取り除かれ、残りは固形化燃料、コンポストなどに姿を
変える。また、ごみ燃焼に伴う熱は回収され発電、熱源として利用される。最後に残
った残さも路盤材などに再利用されるというゼロ・エミッションを目指したリサイク
ルセンターが従来のごみ焼却場に取って代わるであろう。さらに廃液の処理について
、中小企業では従来個々の企業で少量ずつ運搬・処理依頼せざるを得ず、新規購入費
より廃液の運搬・処理費が高いという現実があった。これとて、ネットワークを構築
し地域毎、関連企業ごとにまとめることでコストメリットが生まれ従来に比べはるか
に安い運搬・処理費を実現し、さらに新たにネットワーク使用料といった情報関連の
ビジネスも生まれる可能性がある。
環境管理の仕事をしていると事業部のビジネスとは異なるビジネスの芽を発見するこ
とが多々ある。これも実は循環が基本ということかも知れない。今までの取引先がい
つのまにか顧客になる、ということによく出くわす。たとえば、ある業者が当社に排
水処理設備を設置したとする。そこには当社の計測器がつけられるが、その業者が他
社の排水設備設置に際して当社の計測器をつけるということは大いにありうるし、こ
れは従来では考えられないことである。
さらに廃棄物処理場の定期的視察を環境活動でプログラムしているが、処理場では廃
棄物処理後の化学物質分析が当然行われる。最近では依頼分析費用の高さから業者
が独自に分析室を設置、環境計量士を配して自前で法定作業を行なう、という傾向が
あり、ここにも当社の分析計のビジネスチャンスがある。まさに昨日の取引先が今日
は顧客になっている訳である。やはり環境ビジネスの基本は循環にあると言える。単
にビジネスを考えるとき、従来の固定的な客だけでし烈な受注獲得競争を行なうより
も目先を変え、より広範な付き合いを進めることで環境ビジネスは拡大する。その際、
なるべく間口を広く持っておくことが必要であり、システム品のようにいつでもプラ
イムとして全体の受注を取れる協業体制構築も不可欠となる。その結果、相乗効果が
生まれ自社も相手も潤うことになる。いずれにしても新たな環境ビジネスを予感させ
るものである。

8) 役割
確かに企業の活動が最も環境に負荷を与えるため企業は率先して負荷低減の活動を進
める必要があるが、果たして企業の環境活動だけで地球環境保全が実現できるかと言
うと、否である。企業、国、行政、市民、学校、マスコミ等々夫々の立場で環境良化
の役割があり、夫々が役割を遂行して初めて地球環境保全に一歩近づく。ここでは夫々
の立場での環境保全に対する役割について言及するが、企業の役割についてはこの項
の後段で当社が明確にしている役割に置き換えて詳述することとする。
(1) 国、行政の役割
環境関連の法律を整備し規制を強化することで企業の行き過ぎた環境破壊活動にあ
る程度の歯止めはかかるであろう。しかし、こと環境に関して規制だけで事足りると
は到底思えない。すなわち、日本の経済構造からして過度の規制は中小・零細への環
境汚染の封じ込めを招かないかの危惧を抱く。たとえば、使用禁止の化学物質があり
その代替物質が見つからないか、コスト的に釣り合いの取れない場合を想定してみよ
う。大企業はいち早く自社内から使用禁止物質を追放する、そしてその受け皿が中小
・ 零細企業ということを想像するに難くない。これでは環境保全どころか汚染要因
を封じ込めることになり本質解決を一層難しくすることになる。また、規制を強化す
ることで経済活動にブレーキをかけることになるため国は業界を通じて摩擦解消に    
腐心するが、環境に関しての実態調査、その結果を踏まえて日本のピラミッド型経済
構造を意識した対策を講ずることが必要であろう。
  次に、規制と対をなす優遇税制、補助金といったインセンテイブの構築が望まれる。
  環境改善には金がかかる、とくに今後中小・零細企業が環境活動に取組み易くするた
めには助成金、補助金が不可欠である。また新たな技術開発には相当の開発費を必要
とし、そこから生まれる新製品もコスト高になることが往々にしてある。今のように
優遇措置がないと新たな技術も事業も育たないことになる。当社の生分解性プラスチ
ックは土中で水と炭酸ガスに変化するという、石油化学系のプラスチックに無い特色
を持つものであるが、今もってコストは石油系の10倍である。この生分解性プラス
チックには税制面での優遇も補助金もなく、事業の存続が危ぶまれる。生分解性プラ
スチックに限らず、とくに環境ベンチャーの育成には国・行政のインセンテイブの構
築を求めるものである。
東京都で紙ゴミ分別が進んだ結果、古紙の在庫がオーバーする一方、ゴミ焼却場の燃
料が無くなる、という事態が起こっている。環境活動推進の過渡的状況と考えるが同
じようなことは他の自治体でも起こりうるものであり、行政と業界との連携が不可欠
である。また、京都市では、折角企業で分別活動を進めても家庭ゴミは一部を除き一
括で収集されるし、東京都はその逆で家庭ゴミが厳しく分別を要求される一方営業所
など事業所から排出されるゴミは一括して集められる、という現実問題もあり、分
別・リサイクルシステム確立のためのインフラ整備も行政の大きな役割と考える。さ
らには国民、市民の環境への関心を高める仕掛け作りと具体的な取組みの啓発は環境
先進国ドイツの例を上げるまでもなく率先垂範して行なうことも国・行政の大きな役
割である。
(2) 市民
行政マンも企業人も家に帰れば市民である。仕事場では省エネ、ゴミ分別の具体的活
動に取組んでいてもひとたび家庭に帰り市民に戻った途端便利で快適な生活を求め、
その結果環境汚染に協力することになる。ライフスタイルを変えよう、という掛け声
をよく聞くが便利な生活に慣れた人間がライフスタイルを変えることは自分自身の
経験からも至難の技と思える。オイルショックのように決定的な物不足に陥らない限
り、生活習慣は変わらない。確か、当時のテレビ放送は各局とも深夜12時をもって
打ち切っていたが衛星通信も普及しいつの間にか夜通し放送を続けている。当時と比
べ人々は一層夜型人間化しておりエネルギー消費は休むことを知らないし、インター
ネットはこの傾向を助長する。女性達は朝から湯水の如く朝シャンに湯を使い、オフ
ィスのトイレにはいまだにペーパータオルが配備されている。ひとたび町を歩けば
良質なテイッシュが山のようにたまり、若者は水筒の代りにペットボトルが必携とな
り町はペットボトルの廃棄場と化す。オイルショック以降あるいは先のCOP3以降市
民の生活がどのように環境に優しくなったか観察すると、悪くなった事柄は枚挙にい
とまが無い。NGO、一部の市民の環境活動の芽生えは見てとれるがそれが国民的規模
かと言うと否定的な答えにしかならない。理屈では理解できても行動に移れない大人
より、むしろ小学校からの環境教育の充実が重要と考えるものである。
京都は東京、大阪に比べはるかに町がきれいである。観光地ということだけでなく、
市民の生活スタイルそのものがそうさせている要素が強い。門掃き、打ち水、簾、瓦
屋根、日本家屋、浴衣、街路樹、植木等々は京都特有の気候に合わせた先人達の知恵
の結集であり、これこそ環境に優しい生活様式と言える。大都会でありながら自然と
の共存が出来ている見本であり、しかも日常的であることから環境を意識することな
く行動が先に立っている訳である。これら環境配慮の生活様式個々を取り上げ如何に
環境に配慮されているかの検証を行い京都発の情報として発信する意義は大きいと
考える。いずれにしても常に環境を意識し、生活行動を変えることを根気よく行なう
こと、そのためには国・行政はマスコミを巻き込んで間断なく情報提供する仕組みを
作ることも重要である。
(3) 学校
総合学習の時間に見られるように環境に関する教育が小学校から始まっている。また、
大学を見ると環境関連の学部が林立し学生の人気の高さを象徴している。昨年、京都
府教育委員会から府下小学校の先生が当社に派遣され環境教育を実践する機会を得
た。当人は環境に対して非常に関心が高く小学校における環境教育の必要性を抱いて
企業での実践教育に臨んだ。郡部の学校ということもあるが、必要な情報が学校現場
に伝わっていないため、地球環境汚染の今日的状況についての認識が薄く、そのため
学校現場での環境保全活動は本格的に行なわれていない。企業の活動がそのまま学校
に持ち込めるとは思えないが、少なくとも教育資料、企業の環境活動の中でゴミ分別、
省エネは大半が小学校での利用が可能であった。
また、総合学習の時間も具体的にどう取組んで良いか現場での戸惑いが見え、たとえ
ばこの時間を利用して環境実践教育に当てようとしたとき、現状を平易に説明する資
料、このままでは将来どうなるか、自分達の生活で環境に負荷を与えている要素は何
か、その排除の具体的方法など小学校単独では総合学習の時間を環境教育で有効に生
かすプログラムを作成することにはまだ距離があると言える。ここにも行政、企業と
学校との連携が必要である。肝心なことは、便利で快適な生活を求めた結果環境破壊
が始まったという事実認識、これから将来この地球で生き長らえる世代が負の遺産を
背負わないため、自分達が主役になったとき今よりもっと地球環境汚染が進んでしま
ったということが無いようにすることである。
環境に関する情報が小学校に不足していると述べたが企業とて専門家から見れば決
して正しい情報が的確に入手できてはいないと見るべきであろう。化石燃料が近い将
来枯渇することはオイルショック時国民は一様に認識できたと思う。しかし金属資源
のうち、銅、鉛、亜鉛など産業に直接影響を及ぼす金属があと数10年で底をつくと
いう金属学会の報告には大いにショックを受けた。またその対応策としての金属リサ
イクルに使用されるエネルギー量の膨大さには環境活動のメインであるリサイクル
に抱いていた希望を払拭させられる思いがした。また、日常生活において、京都では
冬の平均最低気温が上がり最早底冷えの京都とは言えない、京都市内で霧の日が全く
無くなった等々は環境悪化の証である、と言われてみて初めて納得が出来たという経
験。これら大学、研究機関、学会に蓄積された情報が何故公知とならないのか、今こ
そ専門家から国民、市民向けに情報を頻繁に発信すべきではないかと考える。これら
情報を使っての警鐘、環境保全活動の必要性の啓発を繰り返し行なう仕組み作りを大
学、研究機関、学会が行政、マスコミ、企業との連携で行なうことが必要である。
(4) NGO
今まで企業とNGOは利害の反する場面での遭遇をよく目にした。しかしながら、環境を
橋渡しとして両者の利害は一致するはずであるし、環境保全活動を市民、学校を巻き
込んで展開するためには両者の連携が不可欠である。京都府の主催する環境事業に参
画する機会を得、その場でNGOと接することが多くなった。彼等の環境知識は場合に
よっては企業人のそれを凌駕し、また学習意欲が旺盛である特徴を有している。
また、世の中の環境活動を見ると行政とNGOの連携というパターンが定着し様々な場面
でNGOの活躍を見て取れる。前述の京都府の環境事業を縁にしてNGOの当社への来訪を
得、意見交換を行なった。最も活発である企業の環境活動の情報をNGOはほとんで入手
できておらず、たとえば野鳥を見る会、環境体験学習など自然保護に関する活動に終
始せざるを得ない状況に置かれていることがよく理解できた。これらは、地球環境保
護の重要性を市民、子供たちに認識させることに大きな意義があるが、実際の保護活
動そのものの手持ちメニューが少ないことにNGOの苛立ちを見て取れた。さらに、環
境NGOのスタンスは、経済発展を前提にして行政、企業、市民、NGOが連携を行い環境
を良くしていこうというものであり、これはアジェンダ21の「経済の持続的発展と環
境保全」と軌を一つにするものである。かと言って企業が待ちの姿勢では敷居が高す
ぎてNGOは企業に来にくい。当社に対するNGOの期待は、環境製品開発で環境保護に貢
献してほしい、これからは市民が、小・中学校の生徒が環境活動を行なった後の成果
を自分達の手で計測する時代となる、そのためには専門家向け以外にも、たとえば簡
易型環境計測器の出現が望まれる、というものであり、行政とのタイアップでNGOの
発言力が今後高まることを考慮すると企業にとって非常に貴重な意見となった。企業
は今後一層情報開示を求められていくが、情報開示責任の面からもNGOと積極的に交流
を行ない、環境保護ノウハウをNGOに提供することで、NGOの広範な啓発活動、環境保
護活動を支援していくことが重要となる。
  (5)当社の役割
@ サイトの環境負荷低減
今まさに目に見える環境活動は自社のサイトの環境負荷低減のためのものが大半であ
り、これを継続的に改善することの重要性はISO-14001の趣旨からしても明らかであ
る。世の中の技術動向を注視しつつ環境負荷の極小化を追い求めることは当然である。
環境に関する活動は加速的かつ急激な進歩を遂げ様々なテーマが次々と沸き上がり、
そして先駆的企業はこれらの答えを環境活動の中で出している。このように環境活動
が活発である一方、これは一部企業に限定されており、末端までの浸透がなかなかは
かれないという現実が片方にある。さらに目先のテーマついては取組みに拍車がかか
っているが、5年先、10年先を見通した展望といった類の報告は学識者、国、行政、
市民、企業、マスコミからほとんど見られない。その理由は、環境負荷低減の技術の
先行き見通しがつけにくいこと、あまりにも直近で行なうべきことが多すぎ、将来を
見渡す余裕がないこと特に法規制対応におおわらわという現実、環境マネジメントシ
ステム導入を始めてまだ数年の創成期であり基盤作りに終始していること、などが挙
げられる。しかしながら、環境悪化に歯止めをかけこれから未来永劫環境修復をして
いかねばならない中で将来を見据えた展望策定が活動の羅針盤として必要ではなかろ
うか。当然変化の激しい状況であることから将来展望は固定的ではなく都度見直しを
行なっていくことが重要である。将来展望には、まず何を目的として環境に取組むか、
自社の持てる力、特長をどう生かすか、より広範な実効をあげるため利害関係者の触
発を活動の範囲にいれるのか、世の中の動きとズレを無くするための仕組みはどうす
るか、理想の姿はどうか等々網羅しトップから末端まで情報共有するものであること
が必要となろう。
A 技術開発
当社は科学技術をもってそれを製品化することを生業としている。それら製品には環
境に寄与するものがいくつかあり、環境計測・分析機器に代表される。これらいわゆ
る環境ビジネスが主要事業の一つであることからすれば、環境活動はどこよりも先駆
的であり、環境事業の伸長を環境活動の柱として特長づけることが大切である。ISO-
14001認証取得を起点として当社の本格的な環境活動は4年目に入った。活動そのも
のが従来から大きく飛躍することが望まれる訳であるが、主役は製品とすることは疑
いのないところである。しかしながら、大きな問題もある。製品そのものの環境負荷
低減を如何に効率的に行なうかである。長年環境ビジネスに携わりながら自身の製品
そのものの環境負荷、環境影響について疎かったことは否めない。また、当社製品に
押し並べて特徴である多品種少量は環境負荷低減に向けた設計変更につい躊躇いがち
となる。さらに家電業界と違って省エネ、家電リサイクルなど厳しい法規制にさらさ
れることがなかったことも製品の環境負荷低減活動を鈍らせてきたものと考える。し
かし世の中の趨勢と厳しい競争から環境をキイとして差別化をはかるというのは理に
叶っているのではなかろうか。今、当社製品で試薬を従来品の10分の1、分析時間を
半減といった新製品がよく目に止まる。設計者はこれらで他社製品との差別化を意図
しているが、これが結果的に環境配慮であることに気がつかない。環境というものを
キイとして考えればいずれもが、化学物質使用量の削減、省エネルギーといったまさ
に環境負荷低減、環境配慮製品であることは疑いのないところである。環境配慮設計
は製品が市場で受け入れられるか否かの必須条件でありその上に立って本来の機能を
発揮し環境保全に寄与する製品の創出が環境活動のメインとなる。企業は生業とする
ところのものが市場、市民に認知されて初めて存続できるのである。当社125年の歴
史と、科学技術の発展を製品でもって明らかにしてきた営みは125年にわたって認知
されてきた、と言うべきであろう。裏返せばそれだけの期待感を持たれているという
ことであり、環境時代の今こそ技術開発で環境保全に寄与する理念は今後一層輝きを
増し、理念の具現化に邁進することが課せられた義務と考えるものである。
B 環境活動の啓発
@サイトの環境保全、A技術開発はいずれも内部環境活動であり、環境に関する当社
の役割としてはさらに外部の活動を喚起するものも含めるべきと考える。これは内部
の環境活動の良し悪しで覇を競ったり、過度の宣伝に利用しても地球規模あるいは日
本全体からすれば環境保全の度合いが知れているからである。とくに先駆的と言われ、
あるいはそのことを自負する企業は培ったノウハウを外部へ普及し環境活動の輪を広
げることこそ使命と考えるべきである。環境報告書にせよ環境会計にせよ本来の目的
は情報開示による企業責任の全うと、読み手が環境活動を理解することで活動を外部
に波及させることにもあるはずである。しかし昨今の風潮はどこよりも如何に早く
出すか、如何に中身を盛りだくさんにするかにあり、これにマスコミが加担すると本
来の目的が失せることになってしまう。そもそも環境は地道な活動の積み上げが基本
であり、仮にトップランナーとして最先端の取組みをしている企業があればそれを外
部に普及させることが最大の役割であろう。当社は決して先頭を走っている訳ではな
いが、少なくとも環境活動の目的は社是、経営理念の具現化にあり、外部への啓発も
大きな課題であると認識している。以下具体的な取組みについて述べる。
ア)環境セミナー
国内のISO-14001認証取得サイトが4000を超え、業種も当初のメーカーから商社、
サービス、流通はては大学・自治体へと広がりを見せている。このような状況下、当
社の顧客もISO-14001認証取得願望が強く、それに呼応した顧客向けのISO-14001
認証取得セミナーは毎回盛況であり留まるところを知らない。現在、当社には環境マ
ネジメントシステムの審査員2名、審査員補1名の資格者がおり、セミナーの講師に
当てている。さらに希望される顧客に対しては個々のサイトの事情に合わせて認証取
得の支援を行い好評を得ている。また、自治体あるいは工業会主催の環境セミナーに
度々講師を派遣しセミナー参加者のその後のサポートを行なったり、これらセミナ
ーを通して形成した人脈からの紹介で当社を訪問、あるいは出張セミナーを希望され
る大学、企業も多くある。重要なことは、これら言わばコンサル的な仕事を商売とし
ていない点である。企業によっては正面切って環境ビジネスとして、たとえばISO-
14001認証取得コンサルタントの看板を掲げているところもあるが、当社の今までの
経験から、このように無償で支援を行なった顧客の内かなりの企業から注文が戴けて
いる。これは極めて日本的な発想があるのかも知れないが、いずれにしても当社も顧
客も得るものがあり、さらに環境保全の幅が広がることになり、一石二鳥にも三鳥に
もなっている。今後とも当社の培ったノウハウを駆使し顧客、取引先、行政、大学、
工業会等々を対象に環境に関するセミナーの開催、あるいは個別指導で環境活動啓発
に拍車をかけていく。
イ)利害関係者との連携
日本経済のピラミッド構造が在る限り、環境は一部大手企業だけが取組んでもその効
能は高が知れていると前述したが、かつまた環境をキイにして取引条件とする風潮が
あることは困ったものである。さらに大企業でも判らないことを中小・零細企業に求
めても何ら前向きの答は出ようがない。その意味で、親会社と取引先が環境という土
俵で研究会を組織し定例的にテーマを決めて環境に関する勉強会を行なうことは意義
深いと考える。有害化学物質の使用について、代替はあるのか、無い場合どのように
対処すべきか、グリーン調達を推進しようとする際、何がグリーン商品か、値段はど
うか等々親会社も下請けも共通の土俵で検討を行なう。そこには環境を取引条件とし
て親会社だけが環境に配慮しているという欺まんは一切許されない。流れているのは
あくまでも現場主義であり、環境で親会社が下請けに規制をかけるのでなく環境保全
のために知恵を結集する地道な活動であり、この積み重ねこそ地球環境保護につなが
るものと考える。当社はこのような考えで、島津工業会の会員企業を対象に環境勉強
会を2000年11月より開始し、当面の目標を会員企業のISO-14001認証取得とした。
地球環境保全のために従来のライフスタイルを変えようとよく耳にする。会社でゴミ
の分別、昼休みの消灯の徹底を行なっている企業人は家に帰ると市民となり便利な生
活に流される、というのが普通の姿と思う。口で言うほど便利な生活を環境保全のた
め少し後退させてライフスタイルを変えることは簡単ではない。とくに戦後のどん底
から生き延びてきた我々中・高年に限って難しい。そこで大切なことは、教育であろ
う。とくに、小・中学校での環境教育が非常に重要になってくる。文部省の総合学習
の時間などを利用してすでに幾つかの小学校で環境教育が開始されているが、これら
の場に企業で培った技術、環境保護ノウハウを活用すべきと考える。昨秋、府下小学
校教員の企業実習の機会に、当社の環境製品と小学生用に作成した環境教育資料を提
供し環境教育に供したことは記憶に新しい。今後もこのような機会をとらえ学校での
環境教育を支援していく予定である。この他、行政、顧客は勿論従業員、組合も含め
連携を強め環境活動の輪を広げていく。
ウ) 技術移転
第二次大戦後50余年、世界経済は飛躍的に発展する一方で、地球環境汚染という大き
なつけを残した。1992年の地球環境サミットのアジェンダ21の宣言「持続的経済発展
と環境保全」は今後人類がこの地球上で生き長らえていくためのメッセージと受け止
められている。いわゆる先進国は経済発展でリードするだけでなく環境保全を合わせ
て成し遂げる義務があるが、環境保全を声高に叫んで開発途上国にそれを迫る権利は
無い。繰り返し開催されるCOPでの先進国と途上国の綱引きはまさにこの点が論点と
なっている。当社は幸い、環境計測器、分析機器を製品として有しておりこれらの活
用がまさに「科学技術で社会に貢献する」という社是に叶うものと考え、1995年の操
業120年を記念して国連大学プロジェクト「東アジア地域の環境監視と分析」に資金、
分析機器の提供と技術指導を行なっている。このプロジェクトには、日本、中国、シ
ンガポール、韓国、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピンの9ケ国
の政府機関等の主要研究機関が参加している。環境問題の解決には信頼性の高い環境
データの取得が必要であり、そのためには分析機器の操作、分析手法の習得が条件と
なる。定期的に一定期間、技術者が当社の分析センターで技術習得訓練を受けた後そ
れぞれの国に帰り、環境問題のリーダーとして活躍している。また、別途環境データ
ベースを構築しインターネットで世界に発信することでプロジェクトの成果としてい
る。引き続き、アジアを中心とした開発途上国に対して技術移転を柱とする環境支援
を行なっていく。
エ) 情報開示
情報開示責任ということで環境報告書の発行、あるいは環境会計の確立が盛んである。
これらも大きく二つに分かれていると思われる。一つは環境保全に関する取組みとその 
成果を誠実に記述しているもの、もう一つはPRの具に使っているもの。当社では情報
開示の一つの手段として環境報告書の策定、環境会計の確立を行なったが、環境報告書
にせよ環境会計にせよ事前にその目的を明確にし、情報開示責任と外部への環境活動の
触発・啓発を目的とすることを全社で共有した。費用と手間を極力省いて、内容はより
具体的に、良い情報も悪い情報も、読み手が理解できるように、社員の共感を得られる
ように等々心掛けた。日常業務に没頭すると個々の環境活動についての記録は残るがそ
れらを一つの書類にまとめることができない。しかしながら、環境会計を記載した環境
報告書を作成すると、たとえば顧客に対してあるいはマスコミに対して一冊の環境報告
書で当社の環境活動と成果を体系的に説明することが可能となり、これは当初予期しな
かった成果と言える。

9) 展望
ISO-14001発効あるいは京都でのCOP3開催を契機に環境に対する関心が高まり地球環境保
全への活動が加速的に進み、わずか数年で我々を取り巻く状況は環境を抜きにしては語
れないほどになっている。しかしながら、これから先5年、10年について地球環境汚染度
と、活動の結果の環境保全度を明確に予測できる人間はいない。そうこうしている内に
も猛暑、洪水、大雨、海水温の異常など気候変動は日々の生活でも実感でき、将来の地
球環境に対して一層悲観的になってくる。しかし、本格的な環境保全活動の取組みはわ
ずか数年であり、この間のたとえばリサイクル技術、各種処理技術、代替エネルギー等々
環境に関する技術開発の進歩は良い意味で我々の環境活動に変更を余儀なくさせる。ま
た、ゴミ分別による古紙の過剰在庫と対を為すボイラー燃料不足、大手環境処理メーカ
ーでの雨水溝から高濃度ダイオキシンの検出、ゴミ処理場の逼迫に対する新設処理場の
建設申請の数の少なさ、相変わらずのゴミ不法投棄、ゴミ埋め立て地からの有害物質の
検出等々連日環境がらみの社会問題が報じられているが、いずれもが本格的活動開始に
伴うほころびと考えればこれら諸問題は淘汰されていくものであろう。このような状況
で企業は環境にどう将来を展望するかが非常に重要と考える。周囲状況は急激に変化す
るため中・長期の展望を固定的にするのは危険であり、定期的な見直しを行いつつ企業
の実状に合わせた将来展望の策定が必要である。当社では5年先、10年先を見据えた環境
の中・長期展望を策定した。大きな柱は以下の通りである。
@ 省エネルギー
自家発電設備の導入、中水化設備の導入、最適物流システムの構築
A 廃棄物削減
ゼロエミッション、廃棄物管理ネットワークシステム構築、ゴミ発生量の抑制
貯蔵PCBの無害化処理
B 製品
LCA、環境負荷低減設計の浸透、環境負荷データベース構築
C グリーン調達
事務用度品の100%グリーン調達、主要材料のグリーン調達、プラスチックの識別記号  
化、外注のグリーン調達化、鉛フリー、塩ビフリー
D 化学物質管理
化学物質総合管理システム構築、新規化学物質導入チェックシステム構築、代替フロ
ン使用全廃、特定化学物質使用全廃、外注での化学物質使用総量の削減
E 環境ビジネス
環境貢献製品の開発、環境分析計の売上倍増計画、新規環境ビジネス発掘
F 情報開示
製品の環境負荷情報の公開、環境ラベル
G 子会社・関係会社支援
ISO-14001認証取得支援、環境会計導入
H 利害関係者の環境活動支援
主要外注の環境負荷低減、ISO-14001認証取得支援、小学校の環境教育支援、利害関
係者への環境セミナー開催
I 教育・啓発
女性プロジェクトチームによる教育資料、学校教育支援システム、審査員の養成
行政・工業会等主催の環境セミナー講師
J 経営のスタイル
環境マネジメントシステムと労働安全衛生マネジメントシステムを統合、EMSを経営
のツールとした収益向上・ビジネス伸長、外部への環境保全の拡大、国内外への技術
移転など社会貢献の充実、環境経営の確立
K 環境監視
自主基準の厳格化、当社製品の環境監視設備として設置・充実、環境排出監視・制御
システム導入
L ISO-14001認証取得
主要外注の認証取得と支援、全ての製造子会社・関係会社の認証取得

10) おわりに
企業の環境活動について製造業での実践をもとに述べてきた。環境問題への関心が高
まり、環境保全への活動も急速に進んでいる一方で、果たしてこれらが底上げとなっ
ているのかという疑問が湧いてくる。国際的に見ると発展途上国、最貧国は経済発展
が最優先であり、環境に思いを馳せることすら覚束ないであろうし、国内でも景気回
復が最優先であり、かつ高度成長の再来を期待して経済活動が営まれていることは事
実である。環境に対して一生懸命なのは全地球的あるいは全国的に見たらほんの一握
りの人間かも知れない。
つい最近もCOP3で約束した2010年のCO2発生量の対90年6%削減は極めて困難になったと
の報道があった。この間に経済成長が無かったことを考えると、CO2増加は何を物語っ
ているか、環境活動が上滑りなのか、マスコミとてそこまで踏み込んではいない。また、
景気が低迷を続ける中、ゴミの排出量は益々増えゴミ処理場の逼迫問題は一向に改善さ
れていない。国がマクロ的に捉まえ国民に警鐘を鳴らすことをしないし、総選挙では景
気回復が争点になっている。オイルショック時日本国民は、企業で、市民生活でどうい
う行動を取ったかあるいは取らされたかを思い起こすべきであろう。COP3での約束は重
いし、化石燃料、金属資源の枯渇は間近に迫っている。さらに今後の環境汚染の浸透に
より食料問題が日常生活を直撃することも考慮しておかねばならない。このような状況
で今こそ各立場での役割を明確にし、その遂行に努めなければ次の世代の生命すら脅か
されることとなろう。企業では大手を中心とした先行各社は一層環境活動に拍車をかけ
環境問題解決の技術開発が求められるが、重要なことは自社で培った環境保全ノウハウ
を温存することなく広く外部に浸透させることである。もはや環境をPRの具にする時で
なく、環境をキイとして企業が大きく意識改革をはかり地球再生のリーダーシップをと
るべき時期と受け止めるものである。