伝統工芸〜モダニズムの極致
 

■ 尾形乾山(おがたけんざん)と春柳図(しゅんりゅうず)

琳派を大成させた尾形光琳の弟で、鳴滝に窯を構えた陶芸家として有名。書画をたしなんだのは70歳を過ぎてからといわれ、「春柳図」の署名にも「七十七歳写」とある。芽吹きはじめた柳の枝ぶりは力強く生命力にあふれ、左半分の和様の墨色がその描写を一層際立たせている。とても喜寿を迎えた老人が描いたとは思えない書画一体の傑作だ。琳派の能書家の多くが尾形光琳の影響を強く受けているのに対して、弟の乾山は独自の美的センスに基づいた書風を築いているのが面白い。陶芸や書画だけでなく、茶道、歌道、詩文などに優れた才能を発揮した乾山の面目躍如の逸品といえる。