伝統工芸〜モダニズムの極致
 

■ 夢窓疎石(むそうそせき)と古徳偈(ことくのげ)

「古徳偈」とは仏徳を賛美し、その教理を述べたもの。上から下へ流れるような草書体、そして濃淡の線をうまく使い分けた伸びやかな筆致は、見る者を引き込まずにおれない魅力にあふれている。筆者の夢窓疎石は、後醍醐天皇や足利尊氏から支持を得て、臨済宗に隆盛をもたらした人物。7代の天皇から国師号を賜ったので、七朝帝師ともいわれた。天龍寺や西芳寺(苔寺)など数多くの名庭を手がけた造園家としての顔がクローズアップされるが、当代随一の能書家としても評価は高い。偈文には、学問の研鑽は木をこすり合わせて火を起こすようなものだとある。夢窓疎石が好んだ文句であろう。