伝統工芸〜モダニズムの極致
 

■ 藤原伊房(ふじわらこれふさ)と源氏物語絵巻詞書(げんじものがたりえまきことばがき)


三蹟の一人、藤原行成の孫で、行成が創始した世尊寺流(京都市上京区にあった寺)の第3代目。祖父譲りの力強い筆線の中に、見る人を引きつけるリズミカルな動きを取り入れた。「源氏物語絵巻詞書」は光源氏の最愛の妻、紫の上が病臥に伏し、やがて亡くなる場面を描写したもの。流れるように書かれた仮名文字は後半になると重ね書きされ、文字の間隔が狭くなって次第に読みづらくなる。伊房が悲しみの最期を盛り上げるために、わざと胸を詰まらせるような表現をしたといわれる。最後の一文は、「(紫の上は)明けゆく頃お亡くなりになりました」の意。伊房の名を成らしめた会心の作品といえるだろう。