伝統工芸〜モダニズムの極致
 

■ 藤原佐理(ふじわらのすけまさ)と離洛帖(りらくじょう)


小野道風らとともに平安の三蹟と称される。その流麗で躍動感あふれる筆跡は佐蹟とも呼ばれ、草書の第一人者として評判が高かった。「離洛帖」は佐理の数少ない真筆とされる傑作の一つで、正暦2年(991)に京都を離れて太宰府に赴任する際、藤原誠信(ふじわらさねのぶ)に宛てて書き綴った手紙。その内容は、当時摂政だった藤原道隆に赴任の挨拶を忘れたので、道隆のいとこに当たる誠信を通して詫びるというもの。「大鏡」によると、この佐理という人物は有名な能書家でありながら、少しばかりだらしないところがあったようだ。詫び状が後世の目に触れられることになろうとは、彼にとってはさぞかし不本意であろう。