伝統工芸〜モダニズムの極致
 

■ 小野道風(おののとうふう)と智証大師諡号勅書(ちしょうだいししごうちょくしょ)


骨太の書体にしっかりと最後まで整った字形、それでいて内面からにじみ出るような線質の豊かさは、だれもが見惚れるような卒のない均整美をたたえている。筆者の小野道風は平安の三蹟の一人で、和様の基礎を確立した人物。「智証大師諡号勅書」は、天台座主だった円珍に、智証大師の諡号が贈られたときの勅書を道風が清書したものといわれる。道風真蹟の作品として「屏風土代」や「玉泉帖」などが残るが、この勅書は王羲之など中国の書家の影響を受けながらも、和様の始まりを感じさせる独特の魅力に満ちている。わが国のその後の書風を決定づけた貴重な墨書といえるだろう。