伝統工芸〜モダニズムの極致
 

■ 紀貫之(きのつらゆき)と高野切古今集第一種(こうやぎれこきんしゅうだいいっしゅ)

「高野切古今集」は古今和歌集の最古の写本。全20巻のうち現在残っているものはわずか9巻で、それらを筆者別に第一種〜第三種に分けて区別している。中でも、第一種は、わが国初の仮名文日記を記した紀貫之の手によるものと伝えられ、仮名の典型として最も名高い。一字一字が細長く繊細でありながら、文字の部分が浮き彫りにされ、水墨画を見ているような立体感ある構図になっている。線質や形、配置がいずれもバランス良く調和しており、古今和歌集の巻頭を飾るにふさわしい仮名の極致として追随を許さない。ちなみに、「高野切古今集」のその他の筆者はいまだはっきりとは確定されておらず、美術史の大きな謎となっている。