伝統工芸〜モダニズムの極致
 

■ 後水尾天皇宸翰(ごみずのおてんのうしんかん)

後水尾天皇は能筆家として知られた後陽成天皇の第三子。父親譲りの才能の片鱗が随所に見られる宸翰である。どこから文が始まっているのか、一見しただけでは分かりにくいが、これは雁行式といわれるもので、雁が群をなして夕空を飛びゆくようにまとまりがあって全体的にすっきりとした印象である。後水尾天皇自らが筆をとって勅命を記したもので、年賀に際してどこかの寺に宛てて書かれた手紙らしい。当時は、強力な徳川幕府が成立して朝廷の権限が大幅に制限された時代でもあった。修学院離宮を建てるなど風流古雅を愛した後水尾天皇だが、勅命とは名ばかりの宸翰の端々にその悔しさがにじみ出るようである。