伝統工芸〜モダニズムの極致
 

■ 近衛信尹(このえのぶただ)和歌壊紙(わかかいし)

平安時代の三筆に対して、本阿弥光悦、松花堂昭乗とともに寛永の三筆に数えられる能書家。彼らの書を写した木版刷りが書道の手本として作られ、京都の町衆の間で流行するほどの人気ぶりだった。「和歌壊紙」は信尹45歳のときの作品。濃厚な墨線で切れ目なく連綿と綴られた書体は、平安時代の書に似た力強さに満ちている。6行の和歌が懐紙の真ん中に収まるように配慮し、一字一字が個性的でありながら、全体が造形物のようなバランスを創出しているのが面白い。信尹は、寛永年間が始まる10年も前に没するが、それでも寛永の三筆の一人に数えられているのは、彼の才能がよほど優れていたからだろう。