蛸薬師通

平安時代は四条坊門小路と呼ばれていたが、16世紀に蛸薬師堂(妙心寺)がこの地に移って以降、いつしか「蛸薬師通 」と呼ばれるようになった。妙心寺の縁起には、蛸薬師の由来について次のような逸話が伝わっている。その昔、善光という親孝行の僧侶が病気の母親のために戒めを破って蛸を買ったが、まちの人に見とがめられてしまう。危うく蛸を取り上げられそうになったとき、善光が薬師如来に祈ると、蛸の足が8巻の経典に変わって辺りを霊光で照らした。以来、京都の人たちは尊崇の念を込めて、妙心寺の本尊を蛸薬師と呼ぶようになったという。厳かな伝説が息づく、京都ならではの古道だといえるだろう。