「香雲」は、高台寺北門前通り鷲尾町にあります。その東側数軒のところに北政所(高台院、ねね)の住居の門があり、お店の辺りがちょうどそのお住居のあったところだと、圓徳院のご住職からお聞きしました。
北政所は秀吉の没後、後陽成天皇より高台院の号を勅賜され、その後寺院の建立を決意し、徳川家康の助力もあって、ここ東山鷲ヶ峰に高台寺を建て、秀吉の冥福を祈り、自らの菩提所としました。
このお寺は高台寺蒔絵で有名です。高台寺の霊屋(おたまや)の豪華な蒔絵からこの名がおこったのでしょう。秀吉とねねの木造が安置されている霊屋の厨子の扉や須弥壇には、さまざまな植物の文様や花筏、楽器尽しなどが金粉で描かれ、桃山文化の粋を見ることが出来ます。
私が、截金の作品創作から蒔絵の漆芸作品つくりに興味を抱くようになったのは、この鷲ヶ峰にて人生の最後を静かに過ごされたねねの心に引かれたからでしょうか。
ねねの生き方は、現在放映されているNHK大河ドラマ「秀吉」でも窺えるように、どこまでも明るく、人に愛され、そして辛いことにも耐え抜いて秀吉のために尽くした生涯です。そして秀吉の没後はなんの未練もなく、ここ高台寺に移り、蒔絵に囲まれて静かな余生を送られました。
本書『雲の彼方に』には、私がここ数年間、ほとんど毎日お店が終わったあと、夜おそくまで創作いたしました蒔絵作品の一部を掲載いたしました。だんだんと漆芸のおもしろさ、難しさが多少なりともわかりかけてきたところです。
将来、いつかの日、ねねと同様、俗的な仕事を一切捨てて、静かに漆芸の世界で生きていくことが出来ればと願っております。
平成八年十月吉日

飾棚「雅楽の響」 薬籠「なすと蟻」 香合「松籟」
床机「柏葉濃く」 短冊「知者の鳥」 壁飾り「豆ふくらむ」
筥膳「松並木」 水差し「早春譜」 水差し「アイビー」
手あぶり「春浅し」 手あぶり「かきつばた」 丸机「山辺の藤」
たらい「水うるむ」 手箱「みょうがの花」 手箱「春の訪れ」
お盆「唐草ぼたん」 お盆「熊笹」 お盆「五月晴」
お盆「からすうり」 お盆「仲間同士」 銘々皿「祇園」
銘々皿「四季の香り」 菓子鉢「富貴」 菓子鉢「水の流れに」



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