●脱水症状
【だっすい・しょうじょう】
(疾患名)
英:dehydration


脱水とは、体から排出される水分量が増えたり、摂取する水分量の不足によって体内の水分が減り、正常値(成人では体重の約60%、小児では体重の約80%)以下に減少した状態を指す。

 通常、体内の水分の量は一定に保たれているが、これは摂取する水分量に応じて腎臓が尿の量を調節するためである。腎臓では、糸球体で血液が濾過され、一日に約150リットルの原尿を生成する。そのうち約99%は、尿細管で再吸収され、尿として排泄されるのは1.5リットル程度となる。一日に摂取する水分量が増え、摂取する水分量が少なくなれば、濃い尿を作って尿量減らし、体内の水分が減らないように調節される。その限度を超えて、体から排出される水分量が増えたり、摂取する水分量が不足すると、体内の水分が減り、「脱水」が起こる。その主な原因としては

  
水分の摂取不足:意識障害、強度の衰弱、神経系の障害、渇中枢の感受性が低下している高齢者に多い
発汗・不感蒸泄の増加:発熱、高温下に長時間さらされると発汗や不感蒸泄が増加
消化液の喪失:大量の嘔吐、下痢により消化液中の電解質が失われる
腎疾患:腎不全、尿崩症、アジソン病など

などが挙げられるが、DMの場合、高血糖や下痢や嘔吐などを伴うシック・ディ(体調不良)の場合には、特に脱水を起こし易いので、十分な注意が必要である。

 脱水が起こると、ナトリウム電解質も一緒に失われる。脱水は

・高張性脱水 : 水分が多く失われる水欠乏性の脱水
・低張性脱水 : ナトリウムが多く失われる塩類欠乏性の脱水
・等張性脱水 : 水分とNa欠乏とがほぼ同じ割合で起こっている混合性の脱水
 
の3つに分類される。 体重の2%に相当する水分(体重60Kgの人で1.2リットル)が失われると、「強い喉の渇き、食欲減退」などの症状が現れる。さらに脱水が進むと、危険な状態となる。
 脱水症状としては、口渇・口唇の乾燥・尿量の減少・頭痛・全身倦怠感・食欲不振・めまい・嘔気・嘔吐などが挙げられるが、脱水症状が現れた場合には、脱水の程度に応じて次のような処置を行う。

軽症の場合:
体重の4%程度までの脱水で、のどの渇きを感じたり、食欲が減退する程度ならば水を飲むことで回復できる。水分の補給は、普通の水でもよいが、体液に近い濃度の電解質が含まれていた方が、速やかに身体に吸収される。ごく少量(水の分量の0.9%程度)の塩を加えた水が理想的である。大人の場合、ミネラル類を含んだスポーツドリンクも適している。飲み物は、10度前後の冷たいものを選ぶとよい。ぬるま湯やお茶などの温かい飲み物に比べ、冷たい方が吸収が速いからである。だだし、極端に冷たかったり、味の濃い飲み物はよくない。

重症の場合:
脱力感や眠気、頭痛などを起こすほど(体重の4〜6%程度)の脱水の場合には、医療機関で点滴による水分補給を受けた方が、早く回復する。それ以上の脱水の場合には、医療機関で緊急の処置を受ける必要がある。